5-379氏 無題

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(話題になるって、そ、そうなの?)
(で、でもでも、やっぱり着替えた方がいいよ)

言葉が沢山湧き上がって頭がパンクしそうになっていたら、不意に下校を促す校内放送が流れて来ました。
その瞬間

「ふぇっ!?」

なんて、素っ頓狂な声を上げたのは、和ちゃんが私の手を掴んで歩き出したから。

「の、和ちゃんっ」

考える先に口が動いたけど、

「早く帰ろう、咲」

って、和ちゃんに言われて、もう何も言えなくなっちゃいました。
後はもう顔を伏せて、手を引かれるままついていくことしか出来なくて、、、

「くまの子見ていたかくれんぼ おしりを出した子 一等賞」

スピーカーから流れる音楽をどこか遠くに聞きながら、繋いだ手の感触にドキドキしっぱなし。

歩きながら、会話は何となく繋がらなくて

(何かしゃべってよ、和ちゃん)
(私からは何て言ったらいいかわからないよ)

いつもと違う和ちゃんを前にちょっぴり落ち着かない気分。
後ろで纏めたポニーテールが足を踏み出す度にぴょんぴょん刎ねるのを見ながら、

(黒い学ランに包まれた後姿はやっぱり男の子とは違ってほっそりしてる)
(普段は隠れてるけど、うなじが白くて可愛いな)

なんて、どうでもいいことばっかり次から次へと浮かんできます。
そしたら突然、和ちゃんが立ち止まって

「咲はさ、今好きな人とかいるの?」

思ってもみなかったことを口にしたんです。

(え? えっと…えぇ!?)
(どどどどどど、どうして急にそんなこと言うの?)
(困るよ、和ちゃん)

頭の中にさっきよりも沢山の言葉が湧き上がりました。
その言葉の渦に飲み込まれて、自分でもどうしていいかわからない位、とにかく困っちゃったんです。
夕焼けに赤く染まる視界の真ん中で和ちゃんが振り向くのがわかりました。

(駄目駄目駄目)
(どんな顔したらいいかわからないよ)

心の中で必死にSTOPボタン押してるのに、和ちゃんは止まりません。
気持ちの整理がつかないまま目が合ったら、

( ? )

和ちゃんは笑っていました。

「俺なんかどう?」

って、悪戯っぽく笑いながら言うのが聞こえて、からかわれたんだってわかりました。
その瞬間、ほっとすると同時になんだか寂しい気持ちになったんです。
自分でもどうしてかわからないんですが、

(もし、和ちゃんが好きだよって言ったら、なんて答えたかな)

って、心のどこかで期待してたみたい。
その気持ちの正体がわからないでいたら、

「咲のこと、好きだよ」

って、いきなりそんなことを言われました。

(それって、どういう意味?)

聞こうと思って、でも聞けなかったのは、和ちゃんがもう笑っていなかったから。
まっすぐな視線に射抜かれたみたいに、動けなりました。
ポニーテールに纏めた凛々しい顔が近付いて来ても、どうすることも出来なくて……
目を瞑ってしまいました。

視界を真っ暗にして、じっと何かが起こるのを待ちました。
でも、何も起こらなかったんです。
そっと目を開けたら、和ちゃんはまた笑っていて、

「髪にゴミがついてたよ」

なんて…。

(え? えっと…えぇ!?)
(どどどどどど、どうして急にそんなこと言うの?)
(困るよ、和ちゃん)

(駄目駄目駄目)
(どんな顔したらいいかわからないよ)

(もし、和ちゃんが好きだよって言ったら、なんて答えたかな)

(それって、どういう意味?)

膨らんでいた色々な言葉が一気に弾けたみたいに、頭が真っ白になりました。
そしたら、和ちゃんの顔がその空白に滑り込むみたいに近付いてきて、キスをされたんです。

「本気だよ?」

って、また頭が一杯になっちゃうような言葉を添えて……。
ドキドキして、ドキドキして、ドキドキして…。
顎に手を添えられて、ちょっぴり強引に引き寄せられて、二度目のキスが近付いてくるのがわかっても、
今度は目を閉じることも出来ませんでした。
最終更新:2010年04月26日 20:54
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