「………」
「………」
見詰め合う宮永咲と原村和の間に、もう言葉はない。
それでも、すぐ目の前で息をつめている相手の顔を見れば、自分と同じ気持ちでいることがすぐわかるのだった。
宮永咲のまつ毛が震えているのは、大好きな原村和がすぐ近くにいる嬉しさのため。
原村和の頬が赤くなっているのは、大好きな宮永咲がすぐ近くにいる恥ずかしさのため。
それと同様に
宮永咲の頬が赤くなっているのは、大好きな原村和がすぐ近くにいる恥ずかしさのため。
原村和のまつ毛が震えているのは、大好きな宮永咲がすぐ近くにいて嬉しさのため。
二人はまるで合わせ鏡のようだった。
寸分違わず、嬉しさと恥ずかしさの入り混じった顔をしていた。
宮永咲も、原村和も、向かい合う少女のそんな様子を見つめながら、
相手も自分と同じように『大好き』に思ってくれているのだと気付いたのだろう。
どちらからともなく手を伸ばすと、その手をしっかりと繋ぎあった。
そうやって二人が一つ布団の中で気持ちを通じ合わせている最中、
いつの間にか起きていた竹井久と染谷まこは
『思ったよりゴールするのが早かったわね』
『それはそうとこれだけ濃い空気を醸し出されちゃあ、気になって眠れんわ』
『確かにその通りね』
等と年上らしい余裕を持って目配せし合っていた。
一方、片岡優希は相変わらず夢の中。
「タコタコタコス 美味しいタコス いけてるタコスはアミーゴタコス Zzzz」
百合アニメ「エ○カザド」の挿入歌を口ずさんでいた。
そして一人だけ別部屋に布団を敷いた須賀京太郎はというと、夜空を見上げて流れ星を数えていた。
それから数ヶ月の時が流れた。
日付は3月14日。
言わずと知れたホワイトデー。
時刻は午前七時半。
宮永咲は自宅の洗面台で鏡に向いながら、しきりに見た目を気にしていた。
同じ頃、原村和はお弁当として持っていくために火にかけていた卵焼きを焦がしながら、
しかしそのことにすら気付かずぼんやりとしていた。
二人共、何かを気にしている様子だが、その理由については少々言葉を尽くさなくて歯いけない。というわけで
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/ \ /\ キリッ
. / (ー) (ー)\
/ ⌒(__人__)⌒ \
| |r┬-| | < 説明しよう
\ `ー'´ / <
ノ \
/´ ヽ
| l \
ヽ -一''"~~``'ー--、 -一'ー-、.
ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) ) (⌒_(⌒)⌒)⌒))
あの晩、合宿所の布団の中で友達から恋人へと踏み出した二人は、
それから暫く経った2月14のバレンタインデーにチョコを送りあっていたのである。
それは勿論、気持ちの限りを尽くした本命チョコ。
となれば、今日のホワイトデーでお互いその気持ちに応えなくてはいけないのが渡世の義理。
しかし、そこはなんと言っても天然で知れた宮永咲と、高校生になるまでラーメンを食べたことがなかった(?)程、
世間離れしたお嬢様の原村和のことである。
お互いチョコを渡されたことなどどこへやら。
自分が渡した本命チョコに相手がどう答えてくれるのか。
そればかりが気になってここ数日眠れない夜が続いている。
そうして向かえたホワイトデー。
雲一つない春の朝
ほころび始めた桃の香(か)が
甘い匂いを振りまく中
それに似合わぬデスレース
どちらも告白待ち侘びて
果たしてその先どうなるか
咲と和の明日はどっちだ!!
立て! 立つんだジョー!!
こうしてホワイトデーを迎えるまでにも、勿論様々なことがあった。
咲がバレンタインチョコを上手く作れず10回も作り直しただとか、
結局その11回目のチョコも失敗作だったとか、
一口食べて
(美味しくないです…)
と思った和だったが、
(でも、嬉しいです)
そんな思いに自然と笑顔になって
「美味しいです」
と言ったりだとか、etc
まあ、色々とあったにはあったのだ。
しかし、もうホワイトデーである。
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/ i f ,.r='"-‐'つ____ こまけぇこたぁいいんだよ!!
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,イ「ト、 ,!,!| |r┬-| |
/ iトヾヽ_/ィ"\ `ー'´ /
~続く~
最終更新:2010年04月28日 15:40