5-822氏 無題

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パラレルSSです。
スレ住人さんの

244 :名無しさん:2010/04/27(火) 12:39:52 ID:lBr0S16sO
ちょっと思ったんだけどさ、咲ってちっちゃい頃からお父さんと2人で暮らしてたっぽいのに
よく口悪くなんなかったよね。何気すごくない?
あんま気にしちゃいけないことかもだけどw

という書き込みを元にした、やさぐれ咲ちゃんSSとなっています。
オリジナルとは設定が異なるので注意が必要です。




お母さんとお姉ちゃんが家を出てから、ずっとお父さんと二人で暮らしていた。
二人暮らしではあるけど、お父さんは仕事であまり家にいなかった。
だから私は一人でいることが多かった。
そう、私はいつも一人だった。

お父さんは優しい。
はっきりとそう言える。
けれど、一緒にいる時間が短くて、愛情を注がれたという記憶はあまりない。

――私が時折もどかしい気持ちになるのは、そのためなんじゃないかと思う――

私は、優しくされた経験が少ないから、人に優しくするやり方がわからな。
今日も

「もう一回私と麻雀を打ってくれませんか?」

と、言ってくれた初対面の女の子を

「私は麻雀好きじゃないから」

なんて、つっけんどんに跳ね除けてしまった。

本当は、私と麻雀したいと言ってくれたことが嬉しかった。
私もまた麻雀を打ちたいって、そう思っていた。
それなのに、そっぽを向いてしまったんだ。
………どうやってそれを表現すればいいのかわからなかったから。


あの子には優しくあげたかったのだけれど、そのやり方がわからなくて、結局背を向けて歩き出してしまった。
その瞬間から今に至るまで、私はずっともどかしい思いに包まれている。

なんだかいつもの雀荘に寄る気になれなくて、気休めに鞄に忍ばせておいた煙草を取り出し、火をつける。
白い煙を燻らせながら、どうしてこれほどまでにもどかしいのか考えて、少しだけ納得がいった。
それは、麻雀をするのが初めて楽しいと思えたからなんだと。

お父さんを心配させたくて、もっと私に構って欲しくて、物心ついた時から色々な無茶をやってきた。
煙草を吸ったのもそう。
雀荘に出入りするようになったのもそう。
夜に出歩くようになったのもそう。
全部、叱って欲しくてやったこと。
どんなきっかけでもいいから、構って欲しくて色々と無茶をしたのだけれど、
お父さんはその度に悲しそうに笑うだけだった。
そしていつも最後に

「ごめんな、咲。お父さんがこんなんだから」

そう謝るのが常だった。

(違うんだよ、お父さん)
(私はただ叱って欲しくてやってるだけなんだよ)
(だからそんな顔で許したりしないでよ)
(ちゃんと私を叱ってよ)

そう叫びたい気持ちを形に出来ない私にとって、煙草も、雀荘も通いも、夜遊びも、全てが虚しいお遊びになった。
本当に欲しいのは煙草や雀荘で得られる一時のスリルなんかじゃなかった。
お父さんの言葉だった。

だから、麻雀なんていつもつまらなかったのに、今日のあの女の子との対局は面白かった。
もう一度打ちたいって、そう思えたんだ。

(なんでだろう?)

考えたけど、結局答えは見付からなくて、私は短くなった煙草を揉み消した。
このまま夜の街に出かけて、かりそめの刺激に身を浸せばそんなことも忘れてしまうだろうって、
ぼんやりとそう思って顔を上げた。
夕日が丁度高層ビル群の向こうに消えていくところだった。


最終更新:2010年08月09日 07:03
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