「去年は海に行ったよね」
宮永さん…いや、今は咲さんと呼んでいて。咲さんはそう言った。
「そうですね…もうあれから一年なんですね」
今、私は自分の部屋に咲さんと2人きりで。
「また行きたいね」
「そうですね…でも今年は」
「?」
私はとある本を、雑誌の山の中から引っ張り出す。
「ランドに…行きませんか?」
「…!行きたい!!」
私が引っ張り出した本は、そこについて特集されているもので。
「一泊二日…で?」
「はい。貯金箱もだいぶ貯まったみたいですし」
貯金箱というのは、去年の旅行以来に2人で始めた旅行用資金を貯める為のものだった。
余ったお金を、少しずつだけど…2人で毎月入れていった。
「開けてみよっか…和ちゃん」
「…ドキドキしちゃいます」
さぁ、一年分がいかほどだったのか。
貯金箱は、お菓子のクッキーが入っていた缶を代用したものだった。パカッと蓋を開けると、お札が露わになった。
「…行けるかな、これで」
「…数えてみない分には何とも」
「…はやく数えてよ和ちゃん」
「わ、私がですか?」
「私は怖くて数えられないよぅ」
「…わ、わかりました」
いよいよ数えてみる。千円札、たまに一万円札。
ドキドキしながら数える私。不安そうに見守るあなた。
「…ぎりぎり」
「行けるの?」
「はい」
「や、やったね!和ちゃん」
「はい…!」
本当に喜んでくれるあなた。
私だって無論嬉しい。
「じゃあ…計画たてよっか、和ちゃん」
「はい…咲さん」
机上に飾られた去年の時の写真が一瞬光った気がした。
私と咲さんの夏はこれから始まる。
最終更新:2010年08月14日 16:52