6-166氏 無題

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きっかけは優希の言葉でした。

「およ、私のタコスが無くなってるじぇ」

テーブルに置いておいた彼女のタコスが、いつの間にか無くなってしまったみたいなんです。

「悪い悪い、ファンからの差し入れだと思ってつい」

すぐに、部屋に遊びに来ていた龍門淵の井上さんが勘違いして食べてしまったとわかったのですが、優希にはショックだった模様。

「おのれノッポ! 一回だけならいざ知らず、これで二回目だじょ!」

しきりと井上さんに文句を言っています。
タコス好きの優希のことですから、余程楽しみにしていたのでしょう。
だからと言って、いくら嘆いたところでタコスが返ってくる筈もありません。
優希には残念ですが、

「もう一度起こらないように、対策を講じるしかないわね」

部長の言う通り、運が悪かったと諦めるしかないでしょう。
だから優希

「私がタコスを買って来ますから、機嫌を直して下さい、ね?」

というわけで、相部屋になっている私達清澄高校と風越女子の皆さんで、
今後こうした間違いが起こらないように色々と話し合った結果

『自分で買ってきたお菓子、飲み物には名前を書いておく』

というルールを設けることになりました。


自分のものに名前を書いておくというのは、単純ですが効果的な手段です。
私も早速買っておいたお茶のペットボトルに自分の名前を書いたのですが、
その時マコ先輩と宮永さんの会話が聞こえてきました。

「そういえば、先輩から借りているこのロングスカートにも名前が書いてありますよね」
「そりゃあ、私のじゃけえ」
「こうやって名前が書いてあると、私が先輩のものになっちゃったみたいですね」
「流石に考え過ぎじゃ。咲は相変わらず文学少女じゃのう」

二人のそんなやり取りを聞いて、ドキッとしたのは何故でしょう?

確かに宮永さんのスカートにはマコ先輩の名前が書いてあって、あたかもそれは
宮永さんがマコ先輩の所有物であるかのよう。
別にそう見えるだけで、そのこと自体に意味なんて無いとは私もわかるのですが、
何故だか無性に心がざわつくのが感じられます。

(宮永さんは誰のもの?)
(私は………)

二人の言葉を聞いてから、私は少し変になってしまったみたい。
宮永さんのことばかりが頭に浮かびます。
時間を置いても胸の高鳴りはおさまる気配はありません。
御飯を食べている最中も、次の試合に向けてミーティングをしている最中も、
頭の中は宮永さんのことで一杯。
それで、私はとうとう宮永さんがお風呂に行っている間に、彼女の制服を手に取ってしまったんです。
そこには勿論、宮永咲という名前が書いてあり、微かに彼女の匂いが…。

(私は……宮永さんの……)

彼女の制服を抱きしめて恐る恐る腕を通すと、胸元がきついものの何とか着ることが出来て、
その瞬間、『宮永咲』と書かれた制服を身に着けた自分が、あたかも宮永さんのものになったみたいに感じられました。

(私は…宮永さんのもの)

すぐに制服を脱いでもとの場所に戻し、何食わぬ顔でお風呂から戻ってきた彼女に話かけながら、

(私はあなたのもの)

先ほど纏った制服の感触を思い出して、心の中で呟きました。
そんなことがあったなんて露ほども知らない宮永さんは、お風呂上りの火照りに頬を赤らめています。

私の気持ちを知らない彼女は、いつものように私と目があった瞬間微笑んで……

(私はそんな宮永さんのもの)

私も打ち明けられぬ想いを胸に秘めたまま、いつものように微笑み返しました。
最終更新:2010年08月14日 17:00
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