彼女は突然に言った。
「原村さん、指相撲しようよ」
なぜいきなり指相撲なのかわからなかった。
「え…指相撲ですか?」
「うん…今日、京ちゃんに負けたんだ。原村さんは強いのかなって」
理由はわかりました。
私でよければ、いつだって相手をいたしますよ。あまり強くはないですが…。
「いいですよ…はい♪」
「ありがとう」
「あ…!」
そうか…指相撲って、手を繋ぐのか…。
顔が熱くなるのがわかった。
彼女は私の指を、彼女のそれで強すぎず弱すぎず…握る。
「…宮永さんって…須賀君と仲がいいんですね。指相撲、するなんて…」
ふと湧いた疑念。
「うん、仲良い方だよ」
…それは。
手を繋ぐくらい、仲がいいんじゃないのですか…?
「…手、…」
「…?」
「手を繋ぐのにですか!?」
思わず言ってしまった。
「え…」
宮永さんは沈思黙考。
なぜ、とでも言いたげな様子。
「…ごめんなさ…」
謝ろうと思った。
何かが違ったから。
こんなんじゃ駄目だと思ったから。
「違うよ?原村さん」
…それは遮られた。
「確かに京ちゃんとは仲がいいけど…本当に、それだけだよ…」
…それは…。
「不安にさせて、ごめんね…」
何を馬鹿な勘違いをしたのだろう。
だって…私たちは…。
「…私こそ…ごめんなさい。勝手に勘違い、しちゃいました…」
しばらく、手を繋いだままだった。
「…原村さんとしか、そういうのはしないようにするよ」
手を繋いだまま、彼女は言う。
「…それは…違います」
「?」
「私は…あなたを拘束したくて…あんなことを言ったのではありません」
そう。別にあなたを束縛したいのではない。あなたが、もしかして…下らない疑心暗鬼だったけど、須賀君とそういう仲だったら怖かった。
ただそれだけだったから。
「だから…今まで通り、須賀君とも接してあげてください」
せっかく仲がいいのだから。
「…原村さんは優しいね」
…そんなことは。
「そんなこと、ないです…」
現に、さっき疑った。
「ううん。優しいよ。ありがとう…」
彼女はまた微笑む。
私はまた、あなたに…浚われてゆく。
「1、2、3、4、5…!」
「あぅ~!また負けた…!原村さん強いよぉ…」
「そ、そんなことは…」
「勝負ごとだと厳しいね…原村さん」
「…お互い、手加減しちゃ…いけないと思いますから。あなたが麻雀、手加減しないのと同じです」
「…!そうだね…。うん!もう一回!」
最終更新:2010年04月22日 12:54