「雨、降りそうだね…」
いきなり天気は下り坂。
夕立の季節はもうすぐ終わるのに、今日はどうしてなのか、曇りだしたのはついさっきで。
「いきなりですね…」
「室内部だから雨なんて関係ないじぇ!」
「…雨だけならいいのですが…」
雨だけにしてください。頼みますから。
「のどちゃん雷を恐れて」
「いません」
いません。い、い…いないんだから。
そんなこんなしているうちに部長がやってきた。
「みんな揃ってるわね。雨、降り出したわ」
「あ、部長」
「雷も来そうだじぇ♪」
なぜ優希はそんなに雷にこだわるのですか!
あまりみっともない姿は見せたくない。
特に…隣で、私と話してくれていた、愛らしい彼女には。
「雷はやだよね…」
「宮永さんは雷、嫌いですか?」
「うん。小さいころからずーっとだよ…原村さんは?」
「わ…私は…」
さっきまで意地でも嫌いとは言いたくなかったのに、彼女の前では本音になってしまうのは…なぜなのだろうか。
「き…嫌いです」
ゴロゴロゴロゴロ
……。ついに空は、嫌な音を発し始めた。
「あ、停電になったりしてね~」
「……!!!」
部長の言った一言は私を追い詰める。
「…いやぁ…」
思わず震えだしてしまう。
怖い。
たまらなく、怖い…。
ふと気がつくと。
隣には、私の手を握った彼女がいた。
「、み、宮永さ…」
「大丈夫。大丈夫だよ」
大丈夫…大丈夫なんだ。
なぜか納得してしまう私がいた。
そして…顔が赤くなるのに気付く。
今彼女が私の手を握っているという事実に恥ずかしさと、また安心を感じた。
宮永さんがいると、安心だった。
たったそれだけなのに、安心だった。
(傍観者側)
「あーら…」
「邪魔しちゃ悪いのぅ」
「でも部活が始まらないわよ?」
「…犬、ブレーカー落として来い!」
「落としてどうする気だ」
「…怖がらせるんだじぇ!」
「そんな。可哀想だろ」
手をつないで、俯いた2人が、いた。
そこまでの距離は、どうしようもなく遠かった。
だから…なんだというんだじぇ。
中学までの仲良しさんがなんだか遠くにいるようで。
「ほらー、イチャイチャしてないで部活始めるわよ」
「「あ…」」
赤面する2人。
そんな2人を見て、また私はタコスを食べるのだった。
少し、寂しかった。
…なんて。私らしくないじぇ。
イチャイチャ…かぁ。恥ずかしいな。
でも…原村さんとなら、別にいいかな、なんて。
馬鹿みたいだね。
「…宮永さん」
「…?なぁに?」
「…まだ、手…離さないでくれませんか?」
え…?
「…か、か…雷が…まだ…くるかも…しれないからぁ…あの…」
…可愛いなぁ、原村さんは。
「うん、いいよ。ずっと握ってるよ」
雷が止んでも…離したくない。
「…ありがとうございます」
「…ありがとう、原村さん」
「み、宮永さんがなんでお礼を…」
だって…原村さんと手を繋いでると、幸せなんだ。
だから…お礼。
「あのさ、部活始めたいんだけど?…あんたたち、個人戦勝てなかったらお仕置きよ?」
あ…。
「…ごめんなさい」
「…ごめんなさい…」
部長に怒られてしまった。本気ではなく、ニヤニヤしながら部長は言った。
「…へへ♪」
「…ふふ♪」
私たちは目があって、どうしてか笑ってしまった。
最終更新:2010年04月22日 12:59