2-847 「無題」



「こんにちはー」
あれ、まだ誰も来てなかったんだ。
誰もいない部室を見回すと、ベッドの上のエトペンが目に入った。
「和ちゃん、来てたんだ。
 エトペン置いてどこ行ったんだろ」
ベッドの布団に手を触れると、まだ温かかった。
さっきまでいたのかな・・・。
「エトペンはいいね。いつも和ちゃんと一緒にいられて。」
頭を撫でながら、エトペンに話しかける。
「和ちゃん・・・。」
私は気がついたら愛おしい人の名前を呟いていた。
ベッドに身を投げてエトペンを抱きしめる。
エトペンに顔を埋めると和ちゃんの匂いがして嬉しくなった。

和ちゃんの匂いがするエトペンを抱きしめていると、和ちゃんを抱きしめてるような気がするよ・・・。
和ちゃんの匂いが微かに残ったベッドに包まれてると、和ちゃんに抱きしめられてるような気がするよ・・・。

「和ちゃん・・・。」
目を閉じて愛おしい人を思い浮かべる。

綺麗で、スタイルが良く、意思が強く、いつも凛としてかっこいい和ちゃん。
いつも私が弱音を吐くと叱ってくれる和ちゃん。
いつも私が困ってる時に手を差し伸べてくれる和ちゃん。
いつも傍で優しい笑顔を向けてくれる和ちゃん。

気になりだしたのはいつからだろう。
気がついたら、白い綺麗な手に触れたいと思っていた。

もっと深く和ちゃんに触れたいと思ってしまう。
もっと深く和ちゃんと繋がりたいと思ってしまう。
私のその想いが和ちゃんの思い描くものと違っていたとしても、望んでしまう。
      • 和ちゃんも私と同じ気持ちだと嬉しいな。

「ん・・・。」
目を開けると、部室の中が薄暗くなっていた。
あのまま寝ちゃったんだ・・・。
ボーっとした頭の中、柔らかくて温かいものを指に感じる。
「目が覚めましたか?」
優しい声が聞こえる。
横になったまま、視線を声がした方に向けると和ちゃんが私を見て優しく微笑んでいた。
「和ちゃん・・・。」
手元に目を向ける。
柔らかくて温かいと思ったものは、和ちゃんの指だった。
「よく眠っていたので、起こしたらいけないと思って。」
そう言いながら、和ちゃんは私の指から手を離した。
私が繋がれた手をじっと見ていたから変に思ったのだろうか・・・。
ちょっと残念。
「エトペンの寝心地は良かったですか?」
和ちゃんが笑顔のまま、私の腕の中にいるエトペンを指差す。
「・・・うん。良かったよ。」
まるで和ちゃんを抱きしめながら眠っているみたいで・・・。
その言葉を飲み込み、笑顔で答えた。



最終更新:2010年04月22日 13:05
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