今日は清澄高校の文化祭です。
部長が色々な企画を実施したこともあり、沢山の他校生が清澄に訪れ、中学の文化祭とは比べ物にならないほど盛り上がっていました。
私はというと、宮永さんと一緒に出店を回ったり、軽音部の演奏を見たりしました。
こういったことは夏祭り以来ですごくはしゃいでしまいました。
一通り回り宮永さんとぶらぶら歩いていると、知らない2人組に話しかけられました。
「あれー可愛い子いるー」
「あ、俺見たことある。原村和じゃね?」
「ああ!この前テレビに出てた!」
「やっぱ生だと一層可愛いーねー」
「ねえ、案内してくんない?」
「あの…困ります…」
「いーじゃんいーじゃん!」
「ほらいこ!」
私は2人の男子校生に腕を掴まれた。
「あの!原村さん嫌がってますけど…」
「ああ?んだてめー」
「…あ、こいつも麻雀部じゃね?」
「放してあげてください…」
「あのねえ、和ちゃんは僕らといいことするからすっこんでくれる?」
「嫌です。放してください…」
宮永さんは決してひかなかった。
不謹慎だけどちょっと嬉しい。
「じゃあさ、俺らと麻雀で勝負しよ。君らが勝ったら和ちゃんは返してあげる。俺らが勝ったら…邪魔すんなよ」
「宮永さんっ!こんな勝負…」
「わかりました。私が勝ったら原村さんを解放してください」
私が制する前に宮永さんは勝負を受けていた。
私たち4人は麻雀部の部室へ行った。
「お!ベッドあんじゃん」
2人は下品な笑みを浮かべた。
「早く卓についてください」
宮永さん…なんか、怖いです。
こんな宮永さん初めて見ます。
正直、私は宮永さんなら大丈夫だと思った。
あの魔物、天江さんにも素晴らしい逆転劇を見せた宮永さんが負けるはずない、と。
しかし東一局。
「ロン!満貫!」
宮永さんが振り込んだ…
いや、それより…テンパってたんですか…?
捨て牌からはまったくそのような気配はしなかった。
偶然でしょうか…
東四局
「ポン!」
「チー!」
まさか…
「ロン!親っぱね!」
またしても振り込む宮永さん。
ニヤニヤする2人組。
やはり…やけに鳴くと思いました…
この2人コンビ打ちです…
異常な手の進み具合からみて、おそらく、卓下で牌の交換もしているかもしれません…
どうしよう…
コンビ打ち相手にスピードで勝てるはずなく、オーラスを迎える頃には大差がついていた。
どうしよう、どうしよう。
このままでは負けてしまう。
そしたら私は…
初めては宮永さんがよかった。
ううん、宮永さん以外は考えられない。
嫌…宮永さん…
今にも泣きそうな私の手を宮永さんがそっと握った。
「宮永さん…」
「…大丈夫。私が…原村さんを守るから。」
宮永さんの真っすぐな目を見て、出かけた涙をこらえ、なんとか気持ちを落ち着けた。
オーラス
「へへ…余裕だな」
「約束は守ってもらうよ?」
この2人…逃げ切るつもりでしょうか…
切る牌は安牌ばかり…
このままでは…
「原村さん、大丈夫だよ。」
宮永さん…
数巡後
「これで流局だ!」
そう言って乱暴に牌を捨てたそのとき……
「ロン。国士無双」
「私もロンです…字一色」
「な…ダブロンだと…」
「しかも…役満…」
2人が信じられないといった顔をしている間に部長がきて、その2人組の処理をしてくれた。
びっくりしていたが、「よくやったわ」と誉めてくれた。
「はあ~何とか勝ったよ~。2人で役満あがるなんてすごいね!原村さん!」
ふにゃ~と雀卓に突っ伏す。
あ、いつもの宮永さんに戻ってる。
「何回も…駄目かと思いました…」
今更、涙が溢れてくる。
「原村さん…」
そっと涙を吹いた手はそのまま私の頬へあてられた。
「原村さんを守れて、よかったよ。原村さんのこと…誰にも汚されたくなくて…」
「宮永さん…!私もっ…宮永さん以外…考えられなくてっ…」
嗚咽まじりに、だけどはっきりと伝えた
「宮永さんのことが…好き…です」
「私もだよ、原村さん」
散らかった雀卓の奥で、部屋に差す夕日がつくる2つの影が重なった。
最終更新:2010年04月23日 11:24