それは帰路のこと。
今日の宮永さんの鞄は重そうだった。
「中に何が入ってるんですか?」
「今日、たくさん本借りちゃったんだ…欲張っちゃったよ」
流石は文学少女。
でも見ただけで重そう。
「重くないんですか?」
「うん…重いよ」
宮永さんの細い腕では辛そうだ。
…そうだ。
「…一緒に、持ちましょう?」
「え?……悪いよ」
「何言ってるんですか…私とあなたの仲…じゃないですか…」
言ってて少し恥ずかしかった。
「じゃあ…恋人の原村さんに…お願いするよ」
「…はい!」
宮永さんの鞄の取っ手を、2人で持った。
「重いですね…何借りたんですか?」
「うーんと…小説とか、詩集とか…」
「素晴らしいですね…」
活字離れの昨今、本好きの彼女。
私も見習わないと。
「…でも借りすぎたよ」
「ご利用は計画的に、ですね」
「それって…借金だよぅ!」
「くすくす…冗談ですよ♪」
ちょっとからかってしまった。
「もう…あ、美容の本も借りたよ」
「なんのですか?」
「…原村さんみたいに胸が大きくなる方法…」
「な…!?」
なんて本を借りるのですか…!
「…嘘だよ♪そんな本、学校の図書館にないし…♪」
「…もう…人が気にしてることを…」
「でも…原村さんにこのままじゃ釣り合わないからなぁ…」
「…そんなことないです!私にとってあなたは…自慢の恋人です…!」
だから…そんな考えは間違ってます…!
「ちょっと…原村さん、恥ずかしいよ……道の真ん中で…」
「あ…」
田んぼで農作業してる叔母さんがニヤニヤしながらこっちを一瞥した。
「…い、田舎ですから!」
「…言い訳になってないよ」
「あぅ……もう、帰りましょう」
「…うん」
あなたと再び、歩き出す。
「…さっきは、ありがと」
「…?なんですか?」
「…自慢の…恋人って言ってくれて…」
「…本当ですもん」
「…本も持ってくれるし…」
「宮永さんの腕が可哀想ですから…」
「…ありがとうね…大好きだよ」
さらっと言うものだから…顔がきっと真っ赤っか。
「あ…わ、私も大好き…です」
しばらく、無言で歩いた。
ドキドキが止まらなかった。
「…ねぇ、今…間接的に握手してるね」
「…握手?」
鞄の取っ手越しに…繋がってる?
「…本当ですね…」
「間接握手…?」
「ですね…♪」
何があっても、繋がってる。
きっと、そうなんだ。
「…私、離しませんよ…間接握手」
「…私だって」
…また、宮永さんがたくさん本を借りればいいな。
最終更新:2010年04月23日 14:57