3-146 大学生



学校を卒業して、和ちゃんと一緒に暮らすようになった。

同じ大学に行った私たちは、やっぱり麻雀部に入っていた。

「今日、どこかに食べに行きませんか?」

「うん、いいよ。」

いつも一緒。
それが当たり前だった。

「なに食べますか?」

「うーんと…パスタとか?」

「わかりました。そうしましょう」

そうして着いた、小さなレストラン。

禁煙かつ2人席に座って、注文した。

大学生になった和ちゃんは、より一層美しくなった。
髪を縛らなくなっていて、それがまた大人の女性にさせていた。
まわりの人が、彼女を振り返る。

…私だけのものなのに。

なんて、我が儘も言ってみたくなっちゃう。

「…悔しいなぁ」

「え?」

「ううん、何でもない…」

今日あった出来事とか、友達のこととかを喋る。

静かに時が流れた。

注文した料理が届いて、一緒に食べた。
交換こしたりして、美味しかった。

店を後にして、帰路につく。

「…ねぇ、和ちゃん…聞いて?」

「はい…」

前々から、思っていたことを言った。

念願の大学に入れて。
好きな人と一緒に過ごせて。
友達がたくさんできて。
好きな麻雀も続けられて。

何一つ陰りのない日常だった。

なのに…あの頃を思い出すと何でこんなに悲しいのだろう。

高校生だった時のことを思い出すと、なぜか、あの頃の方がよかったな…だなんて。

思ってしまったりするんだ。

「…おかしいね…私、我が儘なのかな…」

あの頃。高校生だった時。
みんなで全国目指していた時。

「…咲さん…寂しいですか…」

「…うん…」

なんでなんだろう。理由がわからないけれど、寂しい。

すると和ちゃんは…私を抱きしめた。

「…泣いて、いいんですよ…」

「…和ちゃん…」

和ちゃんの胸で、泣いた。
帰路、人がいないからといって、道で。

「…ぐすっ…和ちゃん…慰めて…」

「………はい…」

それから、家に向かった。

夜通し、慰めてもらった。

朝がきた。

「おはよう、和ちゃん」

「…ん…咲…さん…おはよございますぅ…」

「…昨日はありがとうね」

「私こそ…もう、寂しさはないですか」

「…昨日ほどじゃなくなったよ。ありがとう…大好きだよ、和ちゃん」

「…!」

朝から顔真っ赤になるあなた。

「もぅ…不意打ちは反則です!」

「あはは…朝ご飯、食べよっか」

「…はい」

大丈夫。もう涙は出ない。



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最終更新:2010年04月23日 15:01
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