日曜日。
全国行きを決めてからというもの、久の企画した強豪校との練習試合ラッシュによって多忙を極めていた麻雀部には久々の休みだった。
和は咲に会えないのを残念に思ったが、咲も疲れているだろうし、自身も疲労がかつてないほどたまっていたので、のんびりと過ごすことにした。
少し朝寝坊をした和は、ラフな服に着替え適当に朝ごはんを食べる。
特に何をするでもなく、ぼーっとしたりTVを見たりしていた。
(…暇です…咲さんに会いたいなあ…)
そのような思考を巡らすうちにうとうとと眠ってしまった。
和が起きると時計は正午であることを告げた。
(そういえば、お腹空きました)
和は冷蔵庫にある有り合わせの物で手際良く昼ごはんを作った。
「…ちょっと作りすぎましたね」
テーブルには一人では食べきれそうのない量の皿が並んだ。
一人での食事は、皿の量も手伝って寂しく感じられた。
結局、食べきることはできずラップをかけ保存することにした。
午後になると、やはりぐうたらするのは性に合わないのか、気づけば宿題や自摸切りの特訓など、結局いつもと変わらない時間を過ごしていた。
時計が午後3時を告げたと同時に、誰かが和の家へ来た。
ピンポーン
「?誰でしょう。」
パタパタと玄関まで小走りで行き、ゆっくりと扉を開けた。
「さ、咲さんっ?!」
「えへへ、こんにちは~」
「こんにちは…って、どうしたんですか?」
「いや~久々の休みで落ちつかなくて…あと和ちゃんに会いたいなあと思って」
「!!
い、いきなり言うなんて…ず、ずるいです…」
和は顔を真っ赤にして目をそらし言った。
「?なにが?和ちゃん」
(…無自覚なんですね…)
「と、とにかく上がってください。私も暇してたんです。」
「お邪魔しま~す!
あ、さっきそこのツ●ヤでDVD借りてきたから一緒に見ようよ!」
「いいですね。では私の部屋へ行っててください。お茶を持っていきます。」
「わかったよ、和ちゃん!」
(突然宮永さんが訪ねてくるなんて願いが天に届いたんでしょうか…)
(いや、そんなオカルトありえません)
(でも…嬉しいですね)
和は2人分の紅茶を盆に乗せ階段を上った。
「咲さん、どうぞ。」
「ん、ありがとう!すごく美味しいね!」
「あ、ありがとうございます…」
「ん?和ちゃん顔赤い…熱?」
そう言うと咲は和のおでこと自分のおでこをくっつけた。
「さ、咲さんっ?!」
「熱はないみたいだね!よかった~」
(これも無自覚ですか…)
「早く観よ~…和ちゃん?」
「えっ、ええ!!では観るとしましょうか…」
咲が借りて来たのはコテコテの恋愛ものだった。
それも洋画だったため、そういった方面の描写が濃厚だった。
(き…気まずいです…)
(うわ~…何で無駄にき、キスするの…)
咲も和も顔を赤らめながらも画面から目をそらさなかった。
ラブシーンを繰り返し目にするうち、和は咲を意識せざるを得なくなってきた。
(だ…駄目です!咲さんに嫌われてしまいます!)
和が自分と必死に戦っていると、咲が口を開いた。
「ねえ和ちゃん…キス…しよっか」
(?!?!)
「え、宮永さん?!」
「嫌、かな?」
和同様顔を真っ赤にした咲を見て、今度は無自覚ではないことがわかった。
「で、でも咲さん!その…こういったものに影響されてするのはやめたほうが…」
「私、和ちゃん好きだよ」
「!!!」
(ちょ、ちょっとタイムください…)
「み、水飲んできます!!」
いっぱいいっぱいの和は自室を出た。
キッチンへ行き、グラスに水を注いで一気に飲み干した。
「ふう…」
(咲さん…本当にいいのでしょうか。私もできることなら…)
落ち着きを取り戻し思考が回転しはじめたとき、お腹に妙な圧迫感を感じた。
「いつまで飲んでるの…?和…」
咲が後ろから和を抱きしめていた。
「ささささ咲さん!!!!!!」
(さ…咲さんがついに和って…)
和の思考は再び停止した。
「早く…部屋戻ろ…?」
「…はい…」
部屋に入るやいなや、咲は和を抱きしめ唇を重ねた。
そのあと、咲は和の耳に口をつけて囁いた。
「愛してるよ…」
「~~!!!」
(心臓がもちません…)
「また…無自覚に」
「???」
「…私も愛してます」
おしまい
最終更新:2010年04月23日 15:37