――それは、とある朝の昇降口。
「それじゃ原村さんっ!また部活でね!」
「ええ♪」
タタッと小走りで去る宮永さん・・・ああ、かわいい!
今日もまた部活がすごく楽しみになりました。
・・・それにしても、
見えてるのか見えてないのかわからないあのスカートの中身は一体どうなっているのでしょうか。
まるでオカルト・・・ってあら?
(宮永さんの鞄からなにか落ちましたね・・・)
宮永さんは気付かずに行ってしまいましたし、
今から声をかけようにも・・・あ、教室に入ってしまいました。
ここは私が拾っておきましょう。
落し物に近付くと、それが紙だということがわかりました。
(何かのプリントかと思えば・・・ルーズリーフ?)
ぺらっ。
二つ折りにされていたそれを、何の気なしに開いてしまったのが失敗でした。
『急にこんなことしちゃってゴメン。
でも、どうしても伝えておきたかったんだ。
君への想いを。
私がどんなに君の事を・・・好きかっていうことを!』
(・・・・・え?)
『君は私のこと・・・なんとも思ってないかもしれないけど
私は君のことが大好きで、ずっとずっと想ってて・・・・・』
(こ、ここ、これはもしかして・・・!!)
『私以外のこと仲良くしてるのみるとすごくイライラして・・・泣きたくなったりして・・・!
・・・ごめん、ホント急にこんなこと。迷惑だよね。ごめんなさい。
でも、もしよかったら私のことを・・・・・・
私を、君の彼女にしてくれないかな・・・?』
ガガ―――――ン!!!!
(や、やっぱり・・・どこからどう見てもラブレター・・・ですよね!?
み、宮永さんにこんな相手がいたなんて・・・!!)
「そっ・・・そんなこと信じませんっ!!!」
それこそオカルトじみてますっ!!
これは・・・じっくりと話を聞く必要があるようですね・・・・・
――時と舞台は移り、麻雀部の部室。
ガラッ
「あ!原村さん!今日は早いんだね♪私が一番乗りだと思っt」
「宮永さんっ!!」
「ふぇっ?!ふぁっ、はい!!」
「これはいったいどうゆうことですかっ!!」(ばっ)
「え!?あ、それは・・・」
「私は認めませんよ!!こんな、こんなラブレターなんてっ」
「それどこで拾っ・・・って え?ら、らぶれたー!?」
「忘れてしまったんですか!?今まで貴女が私にしてきたイロんなことをっ!
所かまわず私に飛びついてきた貴女はどこへ行ってしまったんd」
「ちょっ原村さん!?原村さん落ち着いて!!違うから!
それラブレターじゃないからっ!」
「だいたい相手は誰n」
「は・ら・む・ら・さんってば!落ち着いてよ~!」(ぱしっ)
「ふぇっ!?あっす、すみません!?
・・・あっ」
宮永さんが・・・私の手を・・・っ!
「ふう・・・やっと止まってくれた・・・
(原村さんてたまにこーいうことあるよね、なぜか手を握ると止まるけど)」
「あ、あああの、えっと・・・?」
「ああ、だからね?あれはラブレターなんかじゃなくて
ただのセリフの一部なの」
「え?せ、セリフですか?」
「そう!こないだ私たち、染谷先輩のお店のお手伝いに行ったときに
・・・め、メイドのかっこして・・・あとなんか色んなセリフ練習させられたでしょ?」
「ああ、属性・・・」
「うん、それそれ!・・・でね?
私、原村さんみたいに上手にできなかったから、染谷先輩に
『咲には慣れが必要じゃな☆』って課題出されちゃって・・・えへへ」
て、照れ笑いの宮永さん・・・!!
「『まずはこのセリフを覚えんさい★』って言われたから、
とりあえず書いて覚えようと思って書いてみただけなんだよ!」
「な、なるほど。そうゆうことだったんですか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・よかった」(ぼそり)
「え?」
「あっいえ!なんでも!」
「?? それならいいんだけど」
そう、穏やかに笑いながらスッと手を離す宮永さん。
少し、いや正直言ってかなり名残惜しかったですが、
ラブレターの件が私の誤解だったんです。今はそれでよしとしましょう。
ここは気を取り直して。
「みなさんが来るまでお茶でも淹れてましょうか」
「私も手伝うよ♪・・・あ!そうだ!」
「? どうしました?」
「あの、原村さん・・・ちょっとお願いがあるんだけど」
「お願い?なんでしょう?」
「う、うん!あのぅ・・・
よかったら、さっきのセリフの練習相手になってもらえないかなあ?って」
・・・。
・・・っええぇ!!?
つ、つまりそれは・・・
「れ、練習相手というと・・・(まさか・・・!?)」
「うん・・・。いくらセリフを覚えても、それをうまく言えなきゃ意味ないでしょ?
だ、だから原村さんにお客さん役になってもらって・・・・・・ダメ?」
「だっダメだなんてそんな!とんでもないです!!」
ということは宮永さんからあのセリフを直に聞けるというわけですね!?
セリフはすべて記憶済みです!!
「私でよければお手伝いさせていただきますっ」
「ホント?ありがとうっ♪」
「い、いえ・・・お安い御用ですから・・・!!
・・・宮永さんから・・・宮永さんから、愛の告白・・・・・!!」
「え?何?どうしたの原村さん?」
――かくして、和のためのメイドレベルアップ2が始まったのであった。
最終更新:2010年04月23日 15:40