ある日の放課後の部室。
私と咲さんは読書をしていました。
私たち二人以外の部員が揃って遅れているからです。
麻雀卓に向かい合わせに座り、
私はハードカバーの推理小説、咲さんは…文庫本でしょうか?
物語も中盤に差し掛ると、衝撃の展開が待っていました。
序盤から探偵さんのサポートをしていた人物が犠牲になってしまったのです。
今までの展開を思い返しながらページをめくろうとしたその時、
「そこで助手さんが死んじゃうとは予想外だよね」
え?
その声に顔を上げると、咲さんがこちらを見ながら少し悲しい顔をしていました。
どうして?
この角度では本の中身までは見えないはず。
「なぜ、わかったんですか?」
咲さんの目が真っ直ぐ私を捉える。
心拍数が上がる。
まるで心の中を見透かされているかのような感じ。
では、私のこの想いも…?
「うーんとね」
「…」
「和ちゃんのことなら何でもわかっちゃうから、かな?」
「…っ!」
これは…覚悟を決めるしか無いようです。
わかっています。
女の子同士でそんなこと、普通では無いことは。
でも、もう自分の気持ちに嘘はつけない…っ!
「咲さん、私は」
「なんちゃって。びっくりした?」
え?
ぺろりと舌を出す咲さん。
そんな仕草が可愛くて…じゃなくて
「あの、どういう…」
「その本、私も読んだから。
和ちゃんが悲しそうな顔してたし、本もちょうど半分くらいだったからもしかしたらって思って」
そうでした。
忘れていましたが、咲さんは文学少女なのでした…
はああああぁぁぁぁ………
安心したような、疲れたような…
告白しようとしていた私の気持ちは急速に力を失い、
むしろ告白しなくてよかったのではないかという後ろ向きな気持ちが大きくなってしまいました…
いや、ダメだ。
咲さん相手に回りくどい真似は通用しない。
真正面から直球をぶつけないと気持ちは伝わらない。
だから気持ちを強く持て。
いつか来る、その日のために。
最終更新:2010年04月23日 17:50