3-703氏 無題

※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「輝け!部活少女!!」

「今日の輝け部活少女は清澄高校の宮永咲さん。
 ボーイッシュな髪型が良く似合う中性的な一年生です。
 麻雀部に所属する宮永さんは今年のインターハイに
 団体戦、個人戦の両方で出場する予定の実力者で、
 正に花実揃った部活少女なんです」
「ど、どうも。宮永咲です」


「咲さん」
自宅のテレビに向い、画面上の彼女を見つめながら、
私はその名前をそっと呟きました。
きちんとした機材を使って撮影されたためか、普段宮永さんが纏っている
まだ咲き誇る前の蕾のような可憐な雰囲気は、少しも損なわれていません。
いつも私に接してくれる姿そのままに、
少し自身の無さそうな様子を画面の上に再現しています。

「もう少し自信をもってもいいのに、宮永さん」

学校を離れてしまうともう会えない彼女を、こうして
テレビでも見られるというのは嬉しいことではあるのですが、
少し心配にもなります。

(人気が出てしまいそう)

この放送を機に色々な人が宮永さんに寄って来て、もしその中に
彼女の心を射止めてしまうような男の子がいたら………
そう思うと、嫌でも気分が塞ぎます。

案の定、私の心配は現実のものとなりました。
次の日一緒に登校した時早速、一人の男子が宮永さんに手紙を渡したのです。

「良ければこの手紙を読んで返事を下さい」

だなんて…。下らない嫉妬だとはわかるのですが、私は当然面白くありません。

「え!? えーと、あの、はい」

おどおどしながらその男の子に頷いている宮永さんを置いて下駄箱へと向います。
それに気付いた彼女が、すぐに
「あ、待ってよ。原村さん」
声を掛けつつ追いかけて来ましたが、振り向かずにそのまま足を進めます。

「ど、どうかしたの? 急に行っちゃうなんて」
「何でもありません」

そう言うと、彼女は途端におどおどして、子犬のように頭を垂れながら
私について来ます。普段は守ってあげたいと思うその姿が、心を逆立てました。
(もう、わからないんですか?)

「教員室に用事があるので、ここで失礼します」
「あ、うん」

『原村さぁん』
そんな声が聞こえて来そうな様子の宮永さんを置いて、歩き出します。
少し酷いかとも思いましたが、私は首を振ってその思いを打ち消しました。
(私はあなたが好きなんですよ? 宮永さん)

その後も宮永さんの人気が衰えることはなく、終には
部室に見学に来る人まで現れました。その中には女子生徒の姿も……。
部長はそれを見て、何かを思いついたようで

「咲。文化祭に向けて特訓するわよ」
と言ったきり、本当に次の日から二人は部活に出なくなりました。

(一体何をしているんでしょう?)

文化祭での麻雀部の出し物は、染谷先輩の御実家を真似た「麻雀メイド喫茶」。
須賀君以外の女子部員は全員メイド服を着て給仕する予定……
だったのですが…………………

「咲ちゃん格好いいじぇえ!」
当日やって来た宮永さんは、Yシャツにスラックスを履いた男装姿。加えて
「ありがとう、優希」
「!?………じぇえ………//////」
なんて、言葉遣いまですっかりホストのそれになっています。

「特訓ってのは、これだったんか?」
「そうよ。しっかり麻雀部をアピールしないとね」

私は思わず睨みましたが、そんなものどこ吹く風というように、
部長は一向に気にするそぶりを見せません。

(もし女性からもラブレターが来たらどうするんですか!!)
今にも溢れ出しそうな苛立ちを必死に我慢していると
「今日も和は可愛いね」
耳元で甘い言葉を囁かれました。振り向くと宮永さんが
私の髪を一房手に取り、そこに口付けをするではありませんか。

「な、何をしているんですか!?」
「どうしたの? 大きな声なんか出して?」
「そんなことされたら誰でも大きな声をだします!!」
「そうかな? 和は結構恥ずかしがりやなんだね」
「わ、私は怒っているんですよ!!」
「ふふ、怒った顔も可愛いよ」
「し、し、知りません!!」

腹立たしいやら、嬉しいやら、恥ずかしいやら。
私は自分でもよくわからなくなって、宮永さんに背を向けました。
(もう!!…………………馬鹿……)




(あれ、原村さん……)

怒って行ってしまった彼女の背中を見つめながら、
私は少し期待が外れた空虚感のようなものを感じた。

「きっと和も喜ぶわよ。もうメロメロになるくらい」

そう聞いたから、恥ずかしくてもやる気になったのに…
(話が違うじゃないですか、部長)

何が何やらわからなくて気持ちが落ち込んだけど、
それに浸る間もなく文化祭が始まった。
「麻雀メイド喫茶」は結構な盛況で、私はテーブルに詰めたり、
ボーイとして人の足りない麻雀卓に入ったりと大忙し。
合間合間で原村さんと目が合ったのだけれど、彼女はすぐさま
目を反らしてしまうから、その度に落ち込んだ。
休憩時間に一度控え室で鉢合わせしたのだけれど、私が何か言う前に
彼女が出て行くのを目の当たりにした時は、本当に悲しくなった。
最終更新:2010年04月23日 19:25
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。