3-787氏 無題

学校はお昼休みになり、この時間は麻雀部のメンバーで昼御飯を食べる事になっています。

「タコスタコス~!やっぱりタコスが一番だじぇ!」
「優希は本当にタコスが好きじゃのぅ」
「和は今日も手作りなの?」
「はい、沢山作って来たので皆さんもどうぞ」
「じゃあ、頂こうかしら」
「咲さん?咲さんも良かったら、どうぞ」

皆が和のお弁当を咀嚼していると、遠慮そう言って、咲にお弁当を勧めた。

「え!あ…うん、ありがとう」

と、中々お弁当には手を出そうとはしない、何時もなら食べてくれるのに…。

「どうしたの?咲、さっきから自分のお弁当も食べていないみたいだし」
「ほほう、もしや…ダイエットですかい?旦那」
「ううん、ダイエットじゃないよ。ただ、ちょっと食欲がなくて…」
「どこか具合が悪いのですか?」

先程からあまり元気がない様子に気が付いていただけに食欲がない、どこか具合が悪いのだろうかと心配になって和は聞く。

「ん…でも、大して事ないよ、本当に!ごめんね、折角の和ちゃんのお弁当が食べれなくて…」

と、本当に申し訳なさそうにシュンとなる。

「いえ、仕方ないですよ。でも無理はしないでくださいね?」

どうしたんでしょう、咲さん…。
部活には出ていたもののやはり本調子ではない様子で風邪とかではないみたいですが…。
終わった後、心配な私は聞いてみることにしました。

「昼間も調子が良くないように見えたので…どうしたんですか?」
「え、そうかな?」

見るからに挙動不審でバレバレである。
それでもまだ隠そうとする、これは何かあるに違いない。

「…私にも言えない事なのですか?咲さんにとって私はそんなに頼りない存在ですか?」
「そんな事ない、ない…よ」
「なら、話してくれますね?」

観念した咲はやっと本当の事を話す気になったようで、こくりと小さく頷いた。

「実は」

和はじっと黙って聞いている。

「歯が、痛くて…」
「……歯…、ですか?」
「うん、昨日の夕飯食べた後からずっと痛くて…」

それで、お弁当が食べられなかったのですか…思ったより深刻ではない答えで和は安心した。
いえ、左顎を手に添えている事から相当痛いのかもしれません。

「口、開けてくれませんか?」
「え?で、でも…」
「見ないと分かりませんし、悪いようなら歯医者さんに看てもらわないといけませんから」

そうして咲はおずおずと口を開けた。

「もう少し、大きく開けてください」

和は咲の口を開けさせると、左の奥歯…これは…。

「歯茎が腫れているみたいですが…これは親知らずですね」
「親知らず?」
「はい、大人になったら生えてくる歯ですが今では未成年でも生える人も多いらしいですよ、ちょっと待っててください、確か救急箱の中に…」

和は棚から救急箱を持って、箱を開けると薬を取り出した。

「痛み止めと腫れ止め、ありました。薬、飲めますよね?」
「え…、うん」

すると和は水を入れたコップを持ってきて、そのまま咲に渡さずに薬を自分で飲むと水を口に含んだ。

「は、原村さっ!ん!?んんぅ…!」

顎をグイッと上げると口を塞ぐと、先ほど含んだ薬を口移しして送った。

「ん…」

ゴクンッと飲み込んだのを確認し、

「よかった、飲み込んでくれて、飲めましたか?」

咲は顔を真っ赤に手を唇を押さえ、コクコクと頷いた。

「少し、強引だったかもしれませんね、薬を飲んでもまだ痛むようでしたらお医者さんに行かなきゃダメですからね?」

そして満足げに救急箱をしまい、どこか勝ち誇ったように微笑む和であった。

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最終更新:2010年04月23日 19:36
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