木が赤や黄の葉をたくさん纏って、絶景とまでは言えないけれど。
地元はなかなかの紅葉だった。
「みてみて、ちいさい葉っぱまで赤々としてる」
「わぁ…きれいですね」
落ち葉を拾って私にみせる咲は楽しそうで。
学校帰り、少しだけ寄り道。
青空の下、赤と黄色がそこにはあった。
「あれ?」
ふと目を離した隙に…咲を見失った和。
まさかはぐれたのか、いやまさか……不安になって、あたりを見回すもいない。
「…咲さん…?」
不安になった。
そんな…どうしよう。
などと、心配性な和はついつい嫌な方に考えを傾ける。
「のーどかちゃん」
いきなり、和の肩に後ろから腕を回される。
「さ、咲さん…」
「あっちの方が綺麗だよ…行ってみよう?」
「………」
返事がない。
「…どうしたの?」
「……なんでもないです」
明らかにムスッとして、あからさまに距離を置く和にオロオロする咲。
はたして何をしてしまったか、全くわからない。
そんな咲をみて、少し可哀想に思うもまだ許してあげない。
(…私を不安にさせたのですから…
あなたもちょっとだけ不安になって下さいね?)
「…私、なんかしちゃった?」
「…紅葉、きれいですね」
「え?…ねぇ、怒ってる?」
「そろそろ、帰りますか?」
「…和ちゃん…なんで…」
目を潤ませて上目遣いする咲。
流石にもう可哀想だったから、手を引いてぎゅっと抱き締める。
いきなり抱き締められて驚く咲。
「……和ちゃん…」
「…冷たくしてごめんなさい…」
「ぐすっ、嫌われちゃったかと思ったよ…」
「…私があなたを嫌いになる時なんて永遠に来ませんよ?」
それだけは断言できる。絶対にこの気持ちは変わらない…。
「…じゃあなんで…いきなり怒ったの?」
「…私を置いて先に行って不安にさせたから…」
「…だから私を不安にさせる作戦?」
「…はい」
今度は咲が少し怒ったのか、ふてくされたような表情になる。
「…私、本当に嫌われちゃったのかと思ったんだよ?」
「…ご、ごめんなさい…やりすぎました」
「…もう…許してあげない」
「えぇ…そんな…!この通りです…ね?」
立場が急に逆転して、和がオロオロし出す。
「…じゃあ、こうしたら許してあげる」
「なんですか!?」
耳元に咲が唇を近付ける。
甘い吐息がかかって、少し震える和。
和にしか聞こえないくらい小さい声で呟く。
「…キス、して」
顔を真っ赤に染める和。
咲も咲で、言い出したくせにもじもじしている。
「……ごめんなさい…咲…」
「……和、ちゃん…」
どちらともなく唇を近付けて、どちらともなく目を閉じて。
仲直りのキスを交わした。
最終更新:2010年04月24日 00:17