「あのさ、クリスマスは和ちゃんの家に泊まってもいいかな?
せっかく学校も休みだし、あ、朝まで一緒に居られたら嬉しいかなって…//////」
部活の帰り道を並んで歩いている途中、手を握ってから勇気を振り絞ってそう尋ねた。
本当は恥ずかしくてたまらなかったんだけれど、
でも和ちゃんのことを考えたら、言わないわけにはいかなかった。
今までにないくらい胸がドキドキして、インターハイの予選の時よりずっと緊張しているのがわかる。
最後の和了り牌を積もる時でさえそんな風にならなかったのに手が震えてしまった。
(きっと和ちゃんにも伝わっちゃってるよね……)
でも、返事がなくて繋いだ手が段々落ち着かなくなる。
息が届くくらい近くにいる和ちゃんを見ることが出来なくて代わりに俯いていたら、
夕日に背中を照らされてすぐ目の前に私達の影が伸びているのが見えた。
それは手の部分が繋がって一つになっていて、
(きっと通じあっているよね)
もう一度勇気を出して一歩踏み込んでみようって、そう思うことが出来た。
ゆっくり深呼吸しながら気持ちを落ち着かせて、
「駄目かな?」
隣を歩く和ちゃんを見つめる。
そしたら魔法みたいに桜色の髪がなびいて目があった。
その瞬間、時が止まっちゃったのかと思うくらい、世界が和ちゃんに満たされた。
「いいですよ。お父さんもお母さんもいないので、朝まで咲さんと二人きりでいられます……//////」
「う、うん」
頷いて和ちゃんを見詰めていたら、
(大好き…)
嬉しさと愛おしさで胸が熱くなった。
どうやってそれを伝えようか考えて、とっさにキスをする。
和ちゃんの柔らかい温もりが唇を通して伝わって来て、暫くそれに身を任せてから顔を離した時
「じゃあ、クリスマスに。約束ですよ?」
綺麗な顔に笑みが咲くのが見えた。
「うん(続きはクリスマスにね)」
心の中で呟いて、今日のキスの続きに思いを巡らせる。
途端に落ち着かなくなるのを感じながら、やがて差し掛かった岐路で和ちゃんに手を振った。
「お邪魔します」
「どうぞ」
迎えたクリスマスイヴの夕方。
和ちゃんの家の玄関で挨拶を交わしただけなのに、もう胸がドキドキした。
靴を脱げばそこには私達だけしかいなくて、邪魔する人なんて誰もいないんだ。
そう思うと、次の一歩がとても重く感じられた。
(でも、初めてを和ちゃんにあげたいから)
敷居をまたいで、二人だけのクリスマスを始める。
「おいしいよ」
「良かったです。咲さんのために一生懸命作ったから、そう言って貰えて嬉しいです」
「あ、ありがとう//////」
チキンもサラダも、それからスープも、どれもみんな美味しかった。
それが全部私のための手作りだなんて、信じられないくらい。
デザートのショートケーキを食べている途中でほっぺたに生クリームがついているのが見えて、
「ついてるよ」
と声をかけたんだけど、和ちゃんがふき取ろうとしたのは逆側だった。
代わりに指で掬い取ってあげてから、自分のしたことに気付いて恥ずかしくなる。
ごまかすためにはにかんでいたら
「そ、そろそろお風呂に入りませんか?」
「うん」
「良ければ……その、一緒に」
それどころではなくなってしまった。
でも、ちゃんと心を決めて来たから断る理由なんてなくて、和ちゃんに向ってしっかりと頷いた。
それから二人で脱衣所に入って、背中を向けて服に手をかける。
一枚、また一枚と身につけていた物を脱いでいくのにつれて、胸の鼓動が大きくなっていく。
間もなく着ているものが何もなくなって、振り返って和ちゃんを顔を合わせた時
一生の思い出という言葉が改めて頭を過ぎった。
最終更新:2010年04月24日 19:11