咲と和は高校での成績が評価され、麻雀の推薦で共に某有名大学に入学した。
大学に入って数ヶ月。
二人は新しい生活も落ち着き、同棲をするようになった。
そし大変な中にも楽しい日々を送っていた。
某日。
台所に包丁の音がリズム良く響く。
そのリズムを遮るようにドアが開かれた。
ガチャ
「ただいま~和ちゃん」
「おかえりなさい咲さん。バイト、お疲れ様です。」
「ずっと立ちっぱなしだから足が棒みたいだよ~」
「それは大変でしたね…。あ、お風呂できてるのでお先にどうぞ。」
「本当?!ありがとう~!
………」
「ど、どうしたんですか?」
「…和ちゃん、奥さんみたいだね!じゃ、お風呂行ってきまーす!」
「咲さっ…!」
和は顔を真っ赤にしてその場に固まった。
鍋からぐつぐつと音が聞こえようやく足が動くと、咲が浴室から顔をひょっこり出して言った。
「一緒に入ろうか?」
「え、ええぇえぇえ??!!」
「あ、でもこのお風呂小さいから二人はちょっと無理だね。ごめん。」
「え、ええ…」
「じゃあ今度こそ行ってきまーす!」
「ごゆっくり…」
和はほっとしたようながっかりしたようななんとも言えない気持ちだった。
(いつか…大きいお風呂を作らなくては…)
また、包丁のリズムが響き始める。
ONE DAY①完
某日。
麻雀に特化した大学だけあり二人は慣れない自活に加え、厳しいサークル活動に忙殺されていた。
しかし二人で助け合い、忙しくも充実した日々を過ごしていた。
もはや稀となった休日のこと。
「おはよう~和ちゃん」
「おはようございます、咲さん。今日はサークルも休みなんですからもっと寝ていてもいいんですよ?」
「いや~もう習慣になっちゃって。」
「咲さんったら、ふふ。今朝ご飯作りますね。」
「いつもありがとう、和ちゃん!」
「いいんですよ。咲さんにはバイト頑張ってもらってますし。それに…」
「それに?」
「い、いえ!なんでもないです…」
「?」
(それに…これは嫁の務めですし…)
エプロンを締め、台所に立ちベーコンエッグを作り始める。
台所にはいい香りがたちこめた。
「はい。できましたよ。」
「うわあ、おいしそう!さすが和ちゃん!」
「ほ、誉めすぎです…」
「すっごく美味しい!和ちゃんは食べないの?」
「あ、私は先に食べました。」
「和ちゃんも癖で早起きしちゃった?」
「…はい。」
「えへへ、おそろいだね!」
「ふふ、そうですね。」
二人は幸せな空気に包まれていた。
「ごちそうさま、和ちゃん!」
「いえ、お粗末様です。」
和が咲の食器を洗おうとすると、咲が手伝うと申し出たので二人で台所に立ち、食器を洗った。
「それにしても久々な休みだね!」
「そうですね。こう暇だと何をすればいいのかかえって悩みますね…」
「確かに…。あ、そうだ!今日は二人でどこかに出かけない?」
「いいかもしれませんね。日頃の疲れをリフレッシュしましょう!」
「……」
「さ、咲さん?」
「久々のデート、だね!」
「…!はいっ!」
真っ赤な和とそれを気にせず手を握る咲。
二人はそれぞれの期待を胸に玄関をくぐった。
二人の休日が、始まった。
ONE DAY②完
最終更新:2010年04月24日 22:50