某日。
二人は手を繋ぎぶらぶらと歩いていた。
二人とも久々の休日なためどこへ行くか思いつかなかったからだ。
しかし二人は久々の休日を満喫しているようだった。
喉が乾けばお洒落なカフェに入ったり、咲が和にリボンを買ってやったり、二人でお揃いのストラップを買ったり…そういった一般のカップルにとってはごく普通のことが二人の疲弊した身心を癒していった。
「私もバイトした方がいいでしょうか…」
「な、なんで?!」
「咲さんばかりに買わせてばかりで申し訳ないです…」
「…そんなのいいのに」
「え?」
「和ちゃんはいわゆる奥さんだからいいんだよ!」
「お、奥さん…!」
「えへへ」
「じゃ、じゃあ咲さんは…」
「ん?んー…そうだなあ。和ちゃんが奥さんだから…旦那さん…かな?」
(だ…旦那!なんていい響き…)
「あ!そうだ、和ちゃんちょっと待ってて!」
咲は突然握っていた和の手を離し、もと来た道を戻って行った。
和の手を温もりに代わって孤独が包む。
追いかけようとしたが咲は全力疾走して行ったのでもう見えない。
待っててと言っていたしすぐ来てくれるだろうと思い、和は大人しく待つことにした。
「………………遅いです…」
咲が姿を消して1時間が経った。
いくら待っても咲は姿を現さない。
そのうちに嫌な予感が和の頭を霞める。
(迷子でしょうか…いや、迷子ならまだましです。もし誘拐だったら…)
不安が大きくなりすぎた和の足は1時間前咲に言われた"待ってて"を破り動き出した。
(すみません咲さん…無事でいてください…!)
和は二人で歩いた道を急いで引き返した。
不安と心配でひどく焦っていたが咲を見失わないようにと思考は冷静に努めた。
もう何時間かしたら暗くなる頃合いだった。和は不安と心配と戦った。
「咲さん!!!」
ようやく和は泣きながらしゃがみこむ咲を見つけた。
「の…和ちゃーん!うっ…道、わ…わかんなくなっちゃ…って…」
和はただの迷子だったことに一先ず胸をなでおろした。
「心配で死ぬかと思いました。でも…無事でよかったです。」
「和ちゃん…ごめんね?」
「もう…私の側を離れないでください…」
「うん…!じゃあ…」
「じゃあ…なんですか?」
「……結婚、しないとね?」
「………!!!」
咲は顔を赤くし驚いている和の手を取り、指輪をはめた。
「え…これは…」
「さっき…買いに行ったんだ。出店で可愛いのあったの思い出したから…そ、それで道に迷っちゃったわけなんだけど…」
「咲さん…」
「ずっと…一緒にいてくれる?」
「…はい!当たり前です…」
和は目に涙を浮かべた。
固く繋がれた二人の手にはキラキラとお揃いの指輪が輝いていた。
ONE DAY③完
最終更新:2010年04月24日 22:53