某日。
咲と和は手を繋ぎ家へ向かった。
すっかり日は落ち、二人は視覚以外の五感で互いの存在を感じていた。
プロポーズのためか、二人の間に漂う空気はどことなく気恥ずかしさが漂っていたが、居心地が悪いというわけでは決してなかった。
その居心地の良い空気は夫婦のそれに近かったことだろう。
「日落ちるの早くなったね~」
「そうですね…もう冬ですね。」
「どーりで最近寒いと…って、家の前に誰かいるね…」
「え、ええ…誰でしょうか…」
「なんか…ちっちゃいような…」
「…子供…のようですね…。……!!」
「??和ちゃん知ってる子なの?」
「い、いえ!……」
(この子…咲さんそっくり!)
「あ、あのーどうしたのかな?こんなところで」
「……」
「おうちの人は?」
「……」
「…困りましたね…」
「今日はもう暗いし…とりあえず上がってもらおう?」
「そうですね…」
「お姉さんたちのおうちの中入ろっか!」
「……」コク
咲は子供の手をとり中へと導いた。
和は咲にそっくりな子供に驚きながらも温かいココアをつくってやる。
ココアを子供の前のテーブルに置くと子供はもじもじとして和を見た。
「?飲んでいいんですよ」
和が言うとすぐに子供はマグカップを手に取り口をつける。しかし熱かったのかすぐに離しふーふーと冷ます。
和は咲に瓜二つな子供のその姿にしばし見とれた。
ココアを飲み終え子供がようやく口を開いた。同時に和も意識を戻した。
「美味しかった…有難う!」
「いえ、いいんですよ」
「えへへ…」
子供は初め見た時に見えた警戒心の色を消し、安心したような笑顔を見せた。
「今日はもう遅いですし泊まっていった方がいいんじゃないですか?」
「そうだね!じゃあおうちの人に連絡しないと…」
「えと…名前何て言うのかな?」
「……分からない…」
「……え…」
「名前、分からない…」
「じゃ、じゃあお父さんやお母さんは…?」
「……どっか、行っちゃった…」
咲と和は動揺を隠せなかった。とりあえず子供を先に寝かせ、居間で話し合うことにした。
「あの子…捨てられてしまったんでしょうか…」
「分からない…でもほっとくわけにはいかないね…」
「そうですね…まだ4、5歳ですし」
「施設とかに連絡した方がいいかな…」
「そう…ですね…」
咲と和が子供を見るとその寝顔には涙の跡が見えた。
ONE DAY④完
最終更新:2010年04月24日 22:54