某日。
携帯のアラームで目覚めた和は顔を洗い目を覚ます。
髪をまとめエプロンをつけると冷蔵庫から卵を3つとった。
3人分の目玉焼きをつくると咲が目をこすりながら起きてきた。
「おはよう~」
「おはようございます。もうすぐできますから」
「あ、運ぶの手伝うよ」
「いえ、咲さんはあの子を起こしてあげて下さい」
「ん…わかった!」タタタタ
全ての皿をテーブルに運び終えるとコーヒー2つにココアを1ついれる。
ちょうどよい頃合いに子供を連れた咲がきた。
「おまたせ、和ちゃん!」
「おはようございます。では皆で食べましょうか」
「いっただっきまーす!」
「……」
「ど、どうしたんです?」
「食べないの?」
「……誰かと、一緒に食べたことない」
「……」
和は言葉を失ってしまった。
同情がこの子供にとって何にもならないことは分かっていたが、子供の気持ちを何とか推し量ろうとした結果だった。
「よしよし」
咲が子供の頭を撫でた。
「それで緊張しちゃったんだね?皆でご飯食べるのってすっごく楽しいし美味しいよ!一緒に、楽しもう?」
「…うん!いただきます!」
子供は嶺の上に咲く花の如く笑った。
笑顔まで咲にそっくりだった。
「ふぅー美味しかった!ごちそうさま!」
「私もごちそうさま!」
「ふふ、お粗末様です。」
笑顔を取り戻した子供は咲が2人いるようで、和は笑みをこぼした。
和が食器を洗う間、咲は子供に昨日和と話したことを伝えた。
「ここなら同じ歳くらいのお友達もいっぱいいるし、皆で毎日ご飯も食べれるし、学校にもいけるよ?」
「……」
「そりゃあ最初は抵抗あると思うけど…」
「…私は、邪魔…?」
「…!」
「…いらない、子供?」
子供の目は全てを締観したように虚ろで、声も妙に落ち着いていた。
「そんな…「そんなことありません!」
咲の言葉に和の言葉が重ねられた。
子供は和が怒ってると思ったのかこじんまりとしている。
「あなたは、要らない子供なんかじゃありません。」
和がこの子供をほっとけないのは咲に似ているからかもしれない。あるいは子供の辛い境遇のせいかもしれない。
和の心にはこの子供を守らなければという、母性本能とも言うべきものが働いていた。
それは咲も同じのようで、和に目線を送る。和が頷くと、
「…あなたはここにいたい?」
「………………」コク
「…わかった。じゃあ…しばらくはうちで預かろう。和ちゃん、いいかな?」
咲と子供は同じ顔で和を見る。
この顔でねだられては和はお手上げだった。
「…わかりました。色々大変でしょうけど…親御さんが見つかるまで仲良く頑張っていきましょう。」
2人の顔が笑顔になる。
「「やったあ!」」
2つの、花が咲いた。
ONE DAY⑤完
最終更新:2010年04月24日 22:56