4-443氏 ONE DAY⑤

某日。

携帯のアラームで目覚めた和は顔を洗い目を覚ます。
髪をまとめエプロンをつけると冷蔵庫から卵を3つとった。
3人分の目玉焼きをつくると咲が目をこすりながら起きてきた。

「おはよう~」

「おはようございます。もうすぐできますから」

「あ、運ぶの手伝うよ」

「いえ、咲さんはあの子を起こしてあげて下さい」

「ん…わかった!」タタタタ

全ての皿をテーブルに運び終えるとコーヒー2つにココアを1ついれる。
ちょうどよい頃合いに子供を連れた咲がきた。

「おまたせ、和ちゃん!」

「おはようございます。では皆で食べましょうか」

「いっただっきまーす!」

「……」

「ど、どうしたんです?」

「食べないの?」

「……誰かと、一緒に食べたことない」

「……」

和は言葉を失ってしまった。
同情がこの子供にとって何にもならないことは分かっていたが、子供の気持ちを何とか推し量ろうとした結果だった。





「よしよし」



咲が子供の頭を撫でた。

「それで緊張しちゃったんだね?皆でご飯食べるのってすっごく楽しいし美味しいよ!一緒に、楽しもう?」




「…うん!いただきます!」

子供は嶺の上に咲く花の如く笑った。

笑顔まで咲にそっくりだった。

「ふぅー美味しかった!ごちそうさま!」

「私もごちそうさま!」

「ふふ、お粗末様です。」

笑顔を取り戻した子供は咲が2人いるようで、和は笑みをこぼした。


和が食器を洗う間、咲は子供に昨日和と話したことを伝えた。

「ここなら同じ歳くらいのお友達もいっぱいいるし、皆で毎日ご飯も食べれるし、学校にもいけるよ?」

「……」

「そりゃあ最初は抵抗あると思うけど…」

「…私は、邪魔…?」

「…!」

「…いらない、子供?」

子供の目は全てを締観したように虚ろで、声も妙に落ち着いていた。

「そんな…「そんなことありません!」

咲の言葉に和の言葉が重ねられた。
子供は和が怒ってると思ったのかこじんまりとしている。

「あなたは、要らない子供なんかじゃありません。」

和がこの子供をほっとけないのは咲に似ているからかもしれない。あるいは子供の辛い境遇のせいかもしれない。
和の心にはこの子供を守らなければという、母性本能とも言うべきものが働いていた。
それは咲も同じのようで、和に目線を送る。和が頷くと、

「…あなたはここにいたい?」






「………………」コク

「…わかった。じゃあ…しばらくはうちで預かろう。和ちゃん、いいかな?」

咲と子供は同じ顔で和を見る。
この顔でねだられては和はお手上げだった。

「…わかりました。色々大変でしょうけど…親御さんが見つかるまで仲良く頑張っていきましょう。」

2人の顔が笑顔になる。

「「やったあ!」」


2つの、花が咲いた。






ONE DAY⑤完
最終更新:2010年04月24日 22:56
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