無題 小ネタ ID:kjbpJTYd氏
第3局>>688~>>689


   流石に麻雀にも慣れ、確かに実力をつけてきた京太郎。しかし周囲との差は、蟻の歩みほども縮まらなかった。 
   なぜなら、周りの連中は京太郎が幾ら努力しても手に入れられない物を持っていた。それは――運。 
   麻雀とか以前に、いろいろと運の無い人間である京太郎にとってこの差は、ヒマラヤ山脈の如く巨大かつ険しい山として眼前に横たわっていた。 
   あくる日、風邪を患い数日休んだが、連絡を入れた部長以外、誰も京太郎が休んでいた事に気付いていなかった。 
   ――なんだ、自分は、居なくたって、別にいいんだ。 

   その日を境に、京太郎は部活をサボりがちになった。しかし特に行く場所も無く、帰るのも気が進まず、閑散とした公園のベンチで、空が茜色に染まるまで一人でぼーっと過ごす日々が続いた。 
   そんな京太郎に、毎日その公園を通る、どこか胡散臭い中年が話かける。 
   京太郎は、そんな相手なのに、何故か何でも話せる気がして――本当は、悩みを聞いてくれる人間を、ずっと待っていたのかもしれない――理由を話す。 

   話ながら次第に涙ぐみ、ついにしゃくりを上げて情けなく泣き始めた京太郎を見た中年は、「ヒマラヤだって南極だって、道具があれば超えられる」と言い、京太郎を近場の雀荘に連れて行く。 
   そこで、京太郎に対し、麻雀の運を左右する力を与えた。己の生まれ持った運機と引き換えなのだろうか、幸いにして、その力を操る才能が京太郎    にはあった。京太郎はその力に惹かれ、次々と知識を吸収し、技術を磨く。 
   驚くほど短期間で――京太郎は、力を己の物にし、自在に操れるようになった。 

   京太郎は、自らと咲や和との差を、ヒマラヤの巨大な峯に例えていた。以前の京太郎はその険を超える術を何一つ持たぬ素人であった。しかし今は違う、それを超える装備、それを扱う力と技を持っている。 
   玄人技を手に入れた京太郎の、反撃が始まる――! 
最終更新:2012年01月04日 03:40