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291 :「優しいあなた」 1:2009/10/30(金) 20:01:29 ID:iu1IzSPQ 「お泊まり、か…」 枕に顔を埋めて、ぼぅっとする。 そして、私はさっき睦月さんと電話で話した内容を思い出す。 明日の土曜日は、睦月さんのご両親が不在らしく、良かったら泊りにおいでよ、と誘われたのだ。 明日は特に用事も無いので私はもちろん、行きます。と返事をした。  あ… 思い出したら、なんだかまた緊張してきました。 睦月さんと、いわゆる恋人関係というものになってから、もう2ヶ月以上経つというのに。 今だに、睦月さんの事を考えると胸がドキドキしてしまう。  「でも、楽しみです…」 そう言えば、昨日買った雑誌に「女の子に聞いた恋愛事情」というアンケート特集のようなページがあったな。 そんなことを思い出し、普段はそういったページに興味が無く、飛ばして読んでいたけれど、少しでも参考になればと思い私は雑誌を開いた。  しかし… 「え……ええっ?!」 そこに広がってる文字を見て、私は驚愕した。 「恋人との初お泊まりは初エッチになる率58%」 と、大きくタイトルが書かれていてその下には… 「やっぱり、お泊まりの時は下着に気合いを入れます☆」 「こないだ初めて恋人の家に泊りに行って、そんな雰囲気になってそのまま…」 「もしお泊まりに行っても、何もされなかったら自分に興味が無いのか不安になっちゃいます。」 その下や隣にもまだまだたくさん、私と同い年くらいかと思われる女性達の体験談が綴ってあったのだ。 それは、私にとってあまりにも衝撃的で、これ以上はとても読む気になれず、パタンと雑誌を閉じ、そのまま本棚へと押し込んでしまった。 再びベッドに横になり、枕に顔を埋める。 「一体…あれは何なのでしょうか」 さすがに、エッチというのはどういう行為の事なのかくらいは知っていますが…  ですが… 初めてお泊まりに行くにあたって、そんな大きな試練があるだなんて… 枕を抱く腕に、ぎゅっと力をこめる。 「ありえない…ですよね」 睦月さんと、そのような行為をするのが嫌なのかと言われたら、別にそういう訳ではない。 ただ、どうしても今はまだ考えられないのだ。 心の準備も何もできていない。 まぁ、でも… さっきのはあくまでも体験談なんですよね…? 誰もが必ずしも、そうなる訳じゃ無い。 あんなものは気にしないで、明日は普段通りに睦月さんと過ごせば良い。 そう思い、私は眠りについた―――  そして当日 やはり、あの体験談を意識しないなんてのは無理でした。 「数絵…だいすき…」 「ひゃっ…む、睦月さ…ん」 家に着き、夕食とお風呂を済ませ部屋で雑笑をしていたら突然、睦月さんが後ろから私を抱き締めてきたのだ。 私は昨日の雑誌で見たページを思い出し、緊張と恥ずかしさのあまり、どうする事も出来ずに、ただただ睦月さんに体を預ける。 あ… 睦月さん、すごく良い匂いがする… シャンプーの香りかな。 いつもは私と同じで髪をポニーテールにしているけれど、今はお風呂から上がって、全て下ろしている。 髪を下ろした睦月さんは、いつもとは少し雰囲気が違っていて、それでも綺麗でとても魅力的だった。 良い香りに包まれて、なんだか少し心が落ち着く。 私を抱き締めている睦月さんの腕に、そっと手を添えた。 「ねえ…数絵」 「はい」 「キスしても良い…?」 「はい…どうぞ」 今までなら、過剰に反応してしまう言葉だったけれど、多少は免疫がついたのか、鼓動がドクンと跳ね上がる程度で済んだ。 睦月さんの腕が、解かれる。 「その前に、電気消すね」 「え?はい…」 何故か、突然部屋の電気を消されてしまい、頭に疑問が浮かぶ。 時間はまだ9時ですが、もう寝る準備に入るのでしょうか。 部屋の中は暗くなり、カーテンの隙間から僅かに月明かりが差し込み、うっすらと目の前に睦月さんの顔が見えた。 おいで、と手を引かれて私達はベッドの上に座る。 「好き。愛してる…」 私の両頬に手が添えられ、ゆっくりと彼女の唇が重なった。 「んん…」 そして何秒か経ってから、唇が離れていく。 鼓動が高鳴り、胸が熱くて苦しい。 「今日は、いつもみたいに騒がないんだね?」 少し意地悪な笑顔を浮かべて、睦月さんが私の頭を撫でた。 「…これでも、緊張はしているんですよ?」 「そっか」 と言い、くすりと彼女が笑う。 それから、再び体を引き寄せられて、ぎゅうっと抱き締められた。 「あの、睦月さん…」 「ん?何?」 「睦月さんは、その…したいとか思ったりするんですか…?」 自分でも、何で急にこんなことを言ってしまったのか分からない。 おそらく、ナチュラルハイといいますか…夜になり、少しテンションが上がっていたのかもしれません。 それと、彼女がどう思っているのか少し気になっていたというのもある。 「へ…っ?数絵…?まさか、したいって…あれのこと言ってるの?」 「は…はい…」 「何でまた、急にそんなことを…?」 「実は、昨日…雑誌で見たんです…」 「うん…」 「その……」 すうーっと息を吸い込む。 「恋人との初めてのお泊まりは初エッチになる率が高いって書いてあったんです…!!!」 はぁはぁ、と一人で勝手に興奮して息が上がってしまった。 「か、数絵…?びっくりした…」 「す、すみません…」 いや、良いんだけどね。と言い、彼女は続ける 「うーん…。まぁ、正直にいうと、したくないって言ったら嘘になるかな…」 「そう、なんですか…」 「うん。だから、電気を消したの」 「はっ、はい…!」 彼女の言葉に、体が急に固まってしまった。 緊張して頭に汗をかいてしまう。 「でも…」 「え…?うあっ!?」 突然、服の上から胸を撫でられて反射的に声をあげてしまった。 そんな私の様子を見て、彼女は少し困ったように笑う。 「数絵はまだ、そんな気にはなれないでしょ?」 「はい…その通りです…」 「うん。やっぱりね」 「ごめんなさい…」 なんだか、いつまで経っても緊張して、先に進めない自分に少し嫌気がさす。 ポフッと睦月さんの首もとに顔を埋めた。 「もう…。謝らなくて良いから」 「嫌いにならないで下さい…」 「なる訳ないよ」 背中を手でポンポンと優しくたたかれる。 「睦月さん…」 「ん…?」 「私の心の準備が出来るまで、待っててもらえますか?」 「もちろんです」 「ありがとうございます…」 彼女のその返事を聞いて、ホッとする。 「でも…」 「はい…?」 「キスはたくさんさせてね?」 「はっはい…!」 耳元で囁かれ、顔がぼっと熱くなるのを感じる。 それから、私達は何回も何回も数えきれないくらい唇を重ね続けた――― 睦月さん。 私は本当に、優しいあなたの事が大好きです。 いつかは、私からも積極的になれるように頑張ります。 それまで、もう少しだけ待っていて下さいね。

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