441 :名無しさん@秘密の花園:2010/06/20(日) 23:17:43 ID:1xdD8kAt

「ねぇ~、みはるん。」

気付いたら部屋にはあたしとみはるんの二人だけだった。
同い年で一番仲が良くて優しいみはるんだから。
つい甘えてしまう。つい本音を言ってしまう。

「なぁに?かなちゃん。」
「いやだよね。」
「キャプテンのこと?」

ほら、みはるんはあたしのたった一言で何のことか当ててしまう。
あたしのことを一番理解してくれてるんだ、ってこういうときに感じちゃう。

「んぅ…。やっぱり目の前で大切な奪われて行っちゃうの、やだし。」
「……。」

キャプテンの前でこんなこと言えない。
あの人は本当に優しい人だから。

「見ててわかるし。キャプテンは清澄の部長のこと……」

自分の、キャプテンの1番でいたいって言う気持ちを通すのか、キャプテンの気持ちを尊重するのか……。
あたしの目の前には道が2本あった。
正直最初は、絶対にキャプテンをだれにも渡したくなかった。
絶対幸せになるって言う自信もあった。
だけど、1番傍にいるから。わかる。
大好きだから分かってしまう。

キャプテンは本当はあの人が好きだって。
キャプテンの幸せは、きっとここじゃない。

「かなちゃん。」

みはるんの笑顔はどこか切なくて、苦しそうに見えた。

「泣いてもいいんだよ。」

でも、そんな心配はみはるんの言葉で消えてしまう。
泣かないって決めてたのに、どうしてか涙が止まらない。

「みはるん……!」



442 :名無しさん@秘密の花園:2010/06/20(日) 23:18:37 ID:1xdD8kAt

久しぶりに人の胸で泣いた気がする。
布越しに感じるみはるんの温もりはあたしを安心させる。

「……も、もう、大丈夫だし。」

もう涙が出ないほど泣いたんじゃないかなって思う。
それくらい泣いて、あたしは顔をあげた。

「……華菜ちゃんの気持ち、分かるよ。」
「え……?」

みはるんは自分で言っといて口を押さえている。
きっとみはるんも同じなんじゃないかな?
あたしと一緒で、きっと本音が零れちゃったんだ。

「なになに?みはるん。いつのまにそんなことがあったんだし?」

沢山泣いてしまった気恥ずかしさから、茶化すようにみはるんに身を寄せる。
みはるんはあたしから顔をそらして俯いた。
あたしはこんなときにまで図々しくて、みはるんの顔を下からのぞきこんだ。
のぞきこんでからしまったって思う。

みはるんは唇をかみしめて、涙をこらえていた。
堪えても、堪え切れず、頬を涙が伝わって、あたしに落ちる。

「あっ……。みはるん、ご、ごめん!」
「ち、違うの!」

あたしが謝るとみはるんが言葉を発した。
そして涙を拭いながら、顔をあげて、無理矢理笑う。

「……違うから。かなちゃん。いきなり泣いちゃってごめんね。」

あたし、みはるんに甘えてばかり。
あたしもみはるんのために何かしたい。
だって1番の友達だし!

「みはるん!みはるんだってあたしを頼っていいんだし!だから、1人で抱え込まないで!」

みはるんは優しく笑う。本当に、すごく柔らかくて優しい笑顔。

444 :名無しさん@秘密の花園:2010/06/20(日) 23:20:06 ID:1xdD8kAt

「ありがとう、かなちゃん。」

その笑顔とその言葉にほっとする。
みはるんは一呼吸して立ち上がる。

「でも、まだこれは言えないよ。」

部屋の扉を開けながら、みはるんはこっちをちらっと見て呟いた。
もうみはるんは泣いてないのに、あのときの泣き顔も苦しそうだったのに。
なんでだろう。
今ちらりと見せた笑顔が、何よりも心に残る。

あたしはその場から動けなかった。
みはるんが出ていった扉を見つめる。
さっき沢山泣いたのに、なぜかまた涙がこみ上げた。


部屋を出る寸前にみはるんが小さく呟いた言葉の意味はなんだろう。



「……かなちゃんには言えないよ。一生、ね。」





おわり。

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最終更新:2011年11月28日 17:50