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704 :鶴賀学園麻雀部のある放課後の風景[sage]:2009/07/17(金) 15:20:38 ID:7ZCisdkv
 鶴賀学園麻雀部のある放課後の風景


 放課後、部室では四人の部員が卓を囲んでいた。
「加治木先輩、桃子さんは来てるんですか」
 佳織が尋ねた。彼女は桃子の姿を見ることができない。
「まだだ」
 ゆみが答えた。彼女だけが桃子の希薄すぎる存在を把握できた。
 智美は手牌を見て天井を見上げた。あまりよろしくない。天に見放されたようだ。
 勝負を捨てたくなった智美は、心理戦に出ることにした。というより、うやむやにすることにした。
「ねえ、ユミちん、モモとはうまくいってるかい」
「ああ、そこそこに」
「そうかいそうかい。それで、どこまで進んだのさ」
「蒲原先輩、それはちょっと……」
 睦月が制止しようとするが、智美はニヤリと下品な笑みを浮かべた。
「こんくらいいいじゃんよー。で、どうなの? キスくらい済ませた?」
「いや、どうかな……」
 ゆみは困って目をそらしたが、智美を勢いづかせるだけだった。
「白状しちゃいなよー。さもないと、ユミちんの唇にチューしちゃうぞー。んー」
「お、おいっ……!」
 唇を尖らせて迫る智美にたじろぐゆみ。本当にキスをしかねない迫力だ。
 だが、その唇が届くことはなかった。
「ぶへあっ!!」
 突然、智美が奇声を上げたかと思ったら、椅子もろとも床に弾き飛ばされた。
 佳織と睦月が驚いて見るが、ゆみは何もしていない。智美が一人芝居で転倒したようにしか見えなかった。
 大の字になって寝ていた智美は、鼻血を手で拭って素早く身を起こした。必死の形相で部室を見回すと、かっこよく叫んだ。
「新手のスタンド攻撃か?! みんなっ、物陰に隠れるんだッ!!」
 部室が静まり返る。他の部員は卓に座ったまま、何も反応できなかった。
 智美の足下に鼻血がぽとぽとと落ちる。まだ止まりそうにない。血の赤色がよけいに智美の芸人魂をいきり立たせた。
「今、グーで殴ったよね!? 見えなかったけど、グーで思いっきり殴ったよね!?」
 智美の体を張ったボケに、ゆみは面倒くさそうに「はぁ」と一息吐くと、一転してにっこり微笑んで人差し指で智美を指した。
「こいつぅってかわいく鼻先を小突く感じだったぞ」
「ウソつけえっ! そんなんで鼻から血ぃたらして吹っ飛ぶかよっ!!」
 全力でつっこむ智美。まだ鼻血は止まらない。
 智美は手持ちのティッシュを乱暴に鼻に詰め込むと、一度深呼吸をして息を整えた。
「ヤツとやるにはこっちにもスタンドが必要だ――」
 そう言ってカッと目を見開いた。
「――睦月!! 私のスタンドになってくれっ!!」
「そ、それって、私と付き合えってことですか?!」
 いきなりのご指名に戸惑う睦月。ゆみと桃子と同じ関係になるなら、付き合いを始めるということなのだ。
「なんでもいい! 私には力が必要なんだ!」
 智美が返答を迫る。そして、犠牲者は増えた。
「ご、ごめんなさい。じつは、加治木先輩のことが――がはあっ!!」
「むつきいいいいいいいいいいっ!!」
 智美の絶叫が耳を裂く。血を散らしながら卓上を舞う睦月は、どこか清々しかった。
 どさりと音を立てて床に沈む睦月。智美は拳を握り締めて涙をこらえた。
「もうこうなったら佳織、君でもいい!」
「もうこうなったらとかやめてください!」
 半分ヤケ気味な告白に佳織は断るしかなかった。それでも、智美はあきらめない。
「ワガママなヤツだなぁ。じゃあ、どうしたらいいのさ」
「そ、それは……、もう少し雰囲気みたいなのを……」
 もじもじする佳織を見て智美は一考した。そして、鼻に詰めたティッシュを抜いて投げ捨てた。
「よーしわかった。誰でも一発で落ちる魔法の言葉を聞かせてやるからな。ちゃんと聞いてくれよー」
「はい……」
 佳織は胸の上で両手を合わせて、智美の言葉を待った。
「佳織、私は君が欲しいッ!!」
 その瞬間、二体のスタンドが智美に襲いかかり、彼女は頭から床に埋没した。


 終

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最終更新:2009年08月03日 17:20