大雨の音の中、料理をしていたリョーマの耳に
 ひとつ、雷鳴が舞い込んできた。

 「…っ!」

 叫び声は喉を通らず、つっかかってしまう。

 またひとつ、鳴り響いた。
 その瞬間リョーマは、しゃがみ込んで肩を震わせた。


 ( ……怖い )


 目をギュッと瞑り、耳を塞いでも、まだ聞こえてくる恐怖の音。
 自然と瞳から涙が出てきた。


 ( 国光さんッ!早く帰ってきて! )


 その間にも轟音は鳴り響き、涙は重力により、ポロポロと落ちていく。

 何回目かの轟音が鳴ったとき、ガチャガチャという音が聞こえた。


 ( 国光さん! )


 迎えに行こうと、立とうとしたリョーマだったが、
 先まで体が震えていて言うことを聞かない。


 「リョーマ!」


 自分を呼ぶ手塚の声に返事をしようとしたが、リョーマは声が出せなかった。


 ( 何で? )


 そう思った瞬間、ふわりと、正面から優しく抱き締められた。


 「リョーマ…遅くなって、すまなかった。怖かっただろう。」


 そう尋ねてくる手塚にリョーマは、
 手塚にギュッと抱きつき、首を横に振った。


 「リョーマ?」

 「…く、に…みつさ…が…帰って、きてくれた…から…」


 大丈夫。
 そう続けようとしたリョーマだったが、言葉は手塚によって遮られた。
 キスによって遮られたのだ。
 それは安心する、とても温かい優しいキス。


 「…もっと…して?」

 「お望みなら」


 手塚は薄く微笑むと、優しい口付けを再開した。




 【スタンド バイ ミー】
 (もう怖くない………はず。)





 また懲りずに夫婦パロ。リョーマが雷恐怖症だったら可愛いなと思って…^^;
 タイトルは、ベン・E・キングの「Stand by Me」から。
 2010.01.26.志花久遠.


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最終更新:2010年02月03日 16:39