2月14日。世界ではバレンタインデーにあたるこの日、俺はスコールの家に遊びに来ていたのだ、が。

「郵便でーーす!」
お決まりの台詞と共に今日何度目か分からないインターホンが鳴った。







「・・・またか」
「うーわ、さすがスコール」
郵便のダンボールの中には、見ただけで胃もたれがする程の
チョコ、チョコ、チョコ。
今までもらった分を合わせれば、3日分の食事はゆうに確保できそうだ。

「俺は甘いのは好きじゃない・・・・」
「ん!じゃあ俺食っていいっすか?」
「別にいいが・・・散々昨日もらってなかったか?」
「あれは友チョコみたいなもんだって!それにチョコ美味いし
な!くっていいか」
確かに本命っぽいのはちょいっと入っていた気がするが、どちらにしろスコールの方が本命チョコが
多いのは明らかだった。

手の込んだラッピングに、小さく添えられた手紙。
ラッピングを空けると、これまた努力のあとが見える手作りのチョコやらケーキやら。

一口食べる。

「・・・・おいしい」


ああ相当この娘達はスコールが好きなんだなって伝わってくる。
そりゃあ分かる。だって俺だってスコールが好きなんだ。



だから、スコールにこのチョコが回らないように。


想いが、伝わらないように。


全部食べてしまおう。




ああ本当に。
「・・・最低だな、俺・・・」

「ん?」
「あ、いや!なんでも、ないっす、う・・・、あ。」
情けない、みっともない。
ぼろぼろと冷たいのか生ぬるいのか分からない液体が目から流れていく。
ごまかすことすらまともに出来ないのか俺は!

「っ!?ティ、ティーダ?ちょ、どうしたんだ」
スコールが心配そうに顔を覗き込むけれどやっぱり俺の涙は止まらなくて
むしろさらに勢いを増していく気がした。

「ごめん、俺っ、スコールにチョコ、食べて欲しくなかった・・・っ!
みんな、ラヴレターとか、書いてて、本気だったから・・、
スコールを、取られたく、ないって・・・思って、
だから、全部、俺が、食べちゃおうって・・・!!」

「・・・・・・・・・馬鹿」
そういってスコールが小さくため息をついた。
嫌われちゃったかもしれない。

さらに泣き出す俺を見て、スコールは散らばっている手紙を集めた。
「・・・・・・??」
行動の意味が分からずに暫くみていると。
その集めた手紙をとんとん、と軽くそろえ、そして


   縦に 裂いた。


「な、なにやってるんすか・・・・!?」
「裂いた」
だからなぜ裂いた!?

「この手紙のせいであんたは泣いたんだろう?だったら破る。
        • それだけのことだ」
「・・・・・」

流れていた涙の温度が変わった。

「ま、また泣くのかティーダは」
「安心、した・・・!」
泣き虫、とスコールが笑った。

これで安心する自分がどうしようもなく汚いと思ったけれど、
やっぱりスコールだけは譲れないんだ。
皆、ごめんなさい。

だからせめて、

この人たちに負けないくらい、スコールを愛します。



そう思いながら、俺はスコールの胸にダイブした。






(大体な、おれがティーダ以外を好きになるなんてありえないだろう?)
(はい。・・・・・ごめんっす)

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最終更新:2010年02月12日 06:57