部活のない暖かい日曜日の午後。
 手塚の部屋。
 本が捲れる音。


 その後ろ姿を見つめる、俺。


 「ねぇ。国光さん」 

 「何だ…」

 「ぎゅーって…して?」


 そう言うと国光さんは、ちょっと考えるフリをして、本を閉じた。

 近寄ってくる長身。

 見上げる首は少し痛い。
 だけど、それは、幸せの痛み。

 国光さんは屈んで、腕を、
 そっと……肩に回した。

 その瞬間、抱き寄せられて、
 目の前は国光さんで、いっぱいになる。

 俺も国光さんの背中に腕を回して、顔をうずめる。
 そして、肺いっぱいに、国光さんの香りを吸い込む。

 不思議と落ち着く。


 「…リョーマ…」

 「ん。何?」

 「いや…何でもない」

 「ん…」


 国光さんに抱き締められて、幸せ。

 きっと、この暖かさも、それを助長させているのかもしれない。

 でも、一番は大好きな人が抱き締めて、傍に居てくれるから。



 「大好き。国光さん…」




 【春一番。】
 (俺も、リョーマを愛してる。)




 2010.02.09.志花久遠.



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最終更新:2010年02月14日 02:19