吊橋理論、と言うものを何処かで聞いたことがある。
危機的状況に陥ると、人は恋に落ちやすく(あるいは堕ちやすく)なるらしい。
…だからと言ってこれはいくら何でも無いだろ…
「好きだ、ティーダ」
目の前にスコールのやたら綺麗な顔が迫っている。既に背後は行き止まりで、
これ以上後ずされるような場所もない。
「………」
普段の俺なら笑って冗談も言えただろう。はぐらかすことも簡単…とまでは
いかなかったとしても最悪の状況からは脱することもできたはずだ。
しかし、生憎今はとてもじゃないが言葉を発せる状況にない。唾を飲むことすら
も赦されない。
そんなことをすれば喉元に当てられたガンブレードにさっくりといかれるだろう。
それはもう、さっくりと。いっそ清々しい程に。おぉ怖い。
「…ティーダ、本当に好きなんだいやむしろ愛してる。本当に本当だ。
こんなものに縋りたくなる程に、愛しているんだ」
スコールが視線を俺から自分の武器へと移した。
移して、深くため息をついた。
いやため息つきたいのはこっちだっつの。
「…俺のものに、なって欲しいんだ」
再びスコールが俺の目を見て言った。その顔は普段のスコールとは余りに掛け離
れた儚い表情だった。
今度こそ本気でため息をつきそうになった。
ガンブレードを思い出して慌てて引っ込める。
代わりに俺はガンブレードを持っている方のスコールの腕を2、3回叩き、
退かせろ、と訴えた。
スコールはぎこちない動きで俺の喉を解放し、悪かったと小さな声で謝った。
俺はゆっくりと呼吸を繰り返す。そしてスコールの方を向く。
相変わらずスコールは情けない顔をしていた。
「スコール、一度だけ言うッスよ」
すぅ、と大きく息を吸い、一気にまくし立てた。
「あのなあスコールそんなもんに頼らなくたって俺はあんたが大好きで俺もあんたを愛しててだからそんな情けない顔すんなっつか…もう、俺はとっくにあんたのあんたのものだっつうの気付け馬鹿スコール!!」
あー畜生、恥ずかしい上に言葉めちゃくちゃだ。
けど俺はちゃんと言ったかんな。伝われよ。
「…そうか」
ふ、と安心したようにスコールが微笑んだ。
本当、格好良いよな…なんて思ってる間に俺はスコールの腕の中に引きずりこま
れてしまった。
「愛している」
耳元で言われたストレート過ぎる一言に、お俺は赤くなった顔を見られまいと強
く抱き返してやった。
「言われなくたって、知ってる」
君のことならなんだって。
***アトガキ***
ヤンデレチックなスコティが書きたかった。ぶっちゃ毛ティーダの台詞で一番恥ずかしい思いをしたのはおれだと思う\(^0^)/