「越前、聞いたか?」
騒がしい昼休み。
俺は眠いのに、堀尾は、ずっと話しかけてくる。
それを、払いたくて、
「…何を…」
テキトーに言葉を、かけたのに、
俺は、教室を飛び出して、廊下を走っていた。
何で?何でだよ?そんな感情しかなくて。
ただただ、走っていた。
「部長が、ドイツ行くって」
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
ドタドタ、という音と、バンッ、という音、。
扉が壊れるのでは無いかと、思うほどの凄まじい音。
と、共に
「部長っ!」
という声が1組に響いた。
何事だと、クラスメイトが目を見張った。
「……越前…」
「…ん…だ、よ…」
「え、越前?」
「なんで、ドイツなんか行くんだよ!俺達を置いていくのかよ!
俺に、青学の柱になれって言ったじゃん!」
越前は、怒ったような、泣きそうな、難しい顔をしていた。
とりあえず、どこかに移動しなくては、クラスに迷惑がかかると
越前の腕をつかんだ。
「ちょッ!部長!」
「黙っていろ」
俺は越前の腕を引いて、生徒会室に入った。
越前をソファに座らせ、隣に座った。
「…で、何なんだ」
「……何で、ドイツに行くんスか…」
「…何で、お前が其れを知っているんだ?」
「堀尾が、言ってきた」
溜息が出た。
誰にも言っていない筈なのに。
よりによって、知られたのがソイツだったとは。
「どうしてなんスか?」
「…そ、れは……治療の為だ」
「治療…?…ま、さか俺と試合したから!?」
「それは違う!」
声を荒げてしまった。
そうするつもりなど、無かったのに…
「…跡部と試合をしてからだ……お前のせいではない。」
「…め…さ…ぃ」
俺の方を見ていたはずなのに、越前は急に下を向いて、
「越前?」
「ごめんなさい!
俺、と…試合して、悪くぅ、なったのに…
アイツとも…試合し、た、からでしょ?」
泣いていた。俺なんかの為に。泣いていた。
不謹慎にも俺は、それが綺麗だと思ってしまった。
そう思った瞬間、俺は越前を抱き締めていた。
俺と越前の距離が、もどかしい、とさえ思ってしまった。
「ぶ、ちょ…?な、にして…」
「正直、俺にも解らない」
解らなかった。
気づいたら、ただ、抱き締めていた。
しかし、気持ちが、矛盾していた。
頭が追いついていないのに、
言葉がスルスルと出てきていた。
「ぶちょ。死んじゃいそう…」
「強かったか?」
違う、とでも言うように、ふるふる、と首を横に振った。
「抱き締められてるから…」
「そうか」
恐る恐るというように、背中に回る越前の腕。
あぁ、そういうことか。
と、自分の気持ちが解った気がした。
【だから、離れられないんです。】
(この想いは、どうすれば良いのだろう。)
・─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─・
るいな様、リク有り難う御座いました!
何だか、添えていないですが、私にとっての塚リョ事件は、コレだったので…
好かったら、貰ってやって下さい><
2010.03.31.志花久遠.
最終更新:2010年04月16日 13:35