『好きでした。
  今まで、ありがとうございました。』




 そんな内容の手紙を不二から受け取った。


 「お前…」

 「僕からじゃないから安心して。渡してって言われたんだ」

 「…誰だ…」

 「教えない。自分で考えなよ。
  卒業式に人伝で渡す、奥ゆかしい人だね。」


 不二はそれだけ言うと去っていった。

 手紙に書かれている文字の癖は、
 見たことが有るような、無いような…



 「……越前…」



 呟いたあとは、足が勝手に動いて、走っていた。
 当てなんてない。
 ただ、しらみつぶしに、走った。


 1年、2年、3年の教室。部室。裏庭。


 どこにも居ない。もう帰ってしまったのだろうか。
 そう思ったのに、足は屋上へと続く階段の前で止まった。


 「…屋上…」


 階段をゆっくり上り、ドアノブを回す。

 鼠色から、橙に傾きかけた青い空が、視界いっぱいに広がった。

 そのキャンバスにポツリと置かれた黒い影。



 「越前…」


 影の主は、ゆっくりと振り返って、


 「……部長…な、んで…」


 驚いていた。

 越前にゆっくりと近づく。


 「お前が、この手紙を遣すから」

 「うん…」

 「だから、返事をするために、探していた」

 「うん…」


 越前の前、1メートルで止まる。


 「俺も、好きだ」

 「ッ……でも、その手紙は過去形ッスよ」

 「だからって言っては、いけないと、言う事は無い」

 「俺じゃなかったら、如何するんすか」

 「手紙が過去形なことや、俺ではなかったらと、
  言っている時点で、お前だろう。…越前」

 「…そっすね…」

 「越前…俺は過去か?」

 「そっ、すよ…」


 越前は下を向いている。


 「…そうか……
  じゃぁ、悪いことをしたな。」


 本人に、もう好意が無いのなら意味が無い。
 そう思い、越前に背を向けた。


 「青学を…頼んだぞ」

 「…うぃっ、ス」


 泣きそうな声で、返事をされても、
 俺は越前を、抱き締める権利すらない。




 大好きだった君へ
 勿忘草が描かれた手紙へ
 その想いを乗せよう




 【勿忘草】
 (花言葉は「私を忘れないで・真実の愛」) 







 ・─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─・ 
 凛桜さまリク有り難う御座いました!
 期待に添えてない感120%ですが、好かったら貰ってやって下さい!

 しかし、初です。
 恋人にならない手塚とリョーマの話なんて… 

 2010.04.16.志花久遠.



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最終更新:2010年04月16日 15:55