久しぶりに風邪を引いた。
 とても辛い。
 何がって、喉とか関節が痛いし、鼻づまりで呼吸が出来ない。
 だから喉がもっと酷くなるっていう悪循環。

 しかもこういう時に限って、予定が入ってるっていう…

 久しぶりに国光さんに会えるっていうのにっ!


 コンコン。
 不意に鳴ったドア。


 「あーい?」

 「リョーマ大丈夫?」


 入ってきたのは、心配そうな母さんだった。
 無理して起きようとすると、手を出されて、やんわりと制止された。


 「リョーマ、お母さんね、今からチョットお出かけしなくちゃなの。
  でも、お父さんに看てもらうのは嫌でしょ?
  そうしたら、手塚くんが看てくれるっていうの。だから甘えちゃった!」

 「…っ!」

 「良かったわね。手塚くんなら頼もしいわぁー。もうそろそろ来る筈よ」


 声が喉で引っかかって出てこなかった。
 まさか国光さんが来るとは…

 でもオレはこのとき、重要な事に気付いた。


 「…かっさん!」

 「あら。来たみたいね」


 バタバタという階段を下りる音が、
 母さんを引き止めることに失敗したことを証明していた。
 このままじゃ風邪が国光さんに、うつってしまう…!


 ドアを閉めようと重いからだを起こすと、ナイスなタイミングで、
 国光さんがドアの前に立っていた。


 「越前…大丈夫…では無さそうだな」


 と、いいながら国光さんは、オレを優しく横たえさせてくれた。
 こんな顔見られなくなかったかも…


 「じゃあ、リョーマを宜しくね。手塚くん」

 「はい」


 バタンと閉ざされた扉。
 あーあ…
 閉められちゃった。


 「寒いかもしれないが、窓を開けるぞ」


 頷く暇も無く窓は開けられた。
 …なんか寒いんですけれど…


 「うぅ~…」

 「寒いか?少し我慢してくれ。
  空気の入れ替えをしないと治るものも治らんからな」


 そういってオレの額から頬にかけてを撫でた。
 どうして風邪とか、病気になると人の、ぬくもりが恋しくなるんだろう?


 「看病でも…お前に会えてよかった…」

 「う?」

 「ん?…久しぶりにだからな。今日が楽しみだった」


 ごめんね。風邪なんて引いて。
 オレも会いたかったんだ。

 そういう意味を込めて、国光さんの指を引き寄せた。


 「そうか…良かった。俺だけじゃなかったんだな」


 どうやら伝わったらしい。嬉しい。
 傍からみたら小さいことかもしれないけど、なんだかとても嬉しくなって、
 無性に好きだと言いたくなった。


 「俺も好きだ…リョーマ」

 「!」


 伝わったのかな?オレのキモチ伝わったのかな?


 「なんだか知らないが、リョーマの気持ちが手に取るように解るんだ」


 こういうのってアレだよね。…い、い?


 「以心伝心か?」


 すごいね。オレたちなんでも解っちゃう。最強だよね。


 「そうだな……換気はもう良いか」


 指がするりと指から抜けていく。


 「…あ」

 「また繋いでやるから」


 国光さんは苦笑い。
 なんだ、指を繋いでなくても解っちゃうじゃん。

 バタンと窓が閉められて、国光さんが戻ってきた。


 「少し寝ておけ。そうしたら早く治るはずだ」


 キスをしてくれた。額にだけど。残念。


 「口には治ったらしてやる」

 「ん」


 そんな些細な約束でも、心が高鳴る。
 こんなにもアンタが…国光さんが好きなんだよ?


 「おやすみ…リョーマ」


 またキスしてくれた。手を繋ぎながら。
 おやすみ。国光さん。






 【頬を撫でる指を引き寄せて】
 (国光さん…風邪ひいちゃったね…?)






 ・─ ─ ─ ─ ─ ─ ─・
 遅くなって申し訳ないです;;
 越前家でいちゃいちゃ甘いのということで、南次郎ださなくて申し訳ないです!
 かわりに(?)倫子さんが出演です。
 リク有り難う御座いました!><


 2010.07.16.志花久遠.




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最終更新:2010年07月16日 17:24