すやすやと、
 気持ちよさそうに、眠るリョーマ。

 いつも通りハードな練習を終え、
 部誌を書いていると、
 膝の上に乗るや否や
 寝だしてしまったのだ。

 部室にはレギュラーしか居ないのが、
 せめてもの救いだった。


 「越前は器用に眠るね」

 「そうだな良い…データだ」

 「手塚いいにゃー!俺も乗せたい~」


 皆、思い思いの言葉を口にしていた。
 乾はなんのデータなのか、最近解らなくなってきている。


 「越前、何だか幸せそうだね」


 何気ない河村の一言で、俺は、
 部誌を書くてを休めてしまった。

 恐る恐る、リョーマの顔を覗く。


 可愛い。
 その言葉がぴったりな寝顔だった。

 いつもの生意気さは、何処へいったのか。
 ぴたりと閉じられた瞳には、可愛さのみだった。


 「…ぅん?」

 「起きたのか?」

 「ぅ~ん…?」


 俺が動いたからだろうか。
 目を擦りながら、起きてしまった。
 まだ寝顔を見ていたい気持ちも、
 足が痺れてきたから起こしたい気持ちもあった。


 「擦るな。赤くなるぞ」

 「ふぅ~…」


 止めるように、腕を掴むと、
 言葉になっていない、呻き声をあげた。

 程々に覚醒してきたのだろう。
 目を頻りにパチパチと瞬きをしている。


 「…ぁれ…?
  何でオレ…国光さんの…え?」

 「無意識だったのか?」

 「ん~?」


 思い出せないらしい。


 「まぁ…良いや!」


 ぎゅっとリョーマは抱きついてきた。


 「あぁ~おちび~手塚に抱きつくなら、
  俺に抱きつけよぉ~」

 「え~…」

 「手塚ズルいぞー!」

 「ぶちょ…終わったの?」

 「ん?……あぁ」

 「ん」


 スルリと腕から出て行ったリョーマ。
 微かな温もりが、何だか寂しかった。




 【幸せは、この腕の中に。】
 (もう少し閉じ込めていたかったなんて…)







 2010.07.26.志花久遠.







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最終更新:2010年07月26日 14:30