「もう…嫌だ」


 夏独特の豪雨に見舞われ、
 部活が中止になった後の、
 帰り道での言葉だった。


 「……部長が何考えてるのか解んない」


 よく言われた言葉だ。
 『手塚くんって何考えてるか解らない』
 この先の言葉もよく知っている。


 「もう。疲れたっす…」


 あぁ。ほら。
 この言葉だ。
 俺の一番、聞きたくなかった言葉だ。
 特に、こんなに好きになった奴からは。


 「部長……別れ」

 「嫌だ」

 「……ぶ、ちょう…」

 「別れたくないんだ…越前…」

 「でもッ……でも…どうしたら良いか…解んない…」


 あぁ。
 嫌だと拒否したのは初めてだった。
 越前と付き合う前にも、
 ちらほらと関係を持った奴はいた。
 だが、こんなに求めたのは、初めてだ。


 「お前は…俺を嫌いになったのか?」

 「ち、がう」

 「じゃあ、別れる必要なんて無い」

 「……だって…オレ居る意味ないじゃん…」

 「なに?」

 「アンタは、オレとセックスしたい為に付き合ったの!?
  オレとセックスする以外で逢うことなんて無かったじゃん!
  今みたいに一緒に帰る事なんて、両の指で数えられる程じゃん!!
  確かに、アンタは忙しかったかもしれないけど……
  アンタは俺に何をしたかったの?」

 「…越前?」

 「名前で呼んでくれさえしなかった…」

 「…」


 越前は綺麗に泣いていた。
 不謹慎かもしれないが、
 俺が見てきた越前の表情の中で、
 それが一番、美しかった。


 「だから、サヨナラ……国光さん」





 【雨の日に咲く、最初で最後の感情論。】
 (その言葉が俺たちの最後だった。)







 おうおう;;
 2010.08.22.志花久遠.



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最終更新:2010年08月22日 21:31