「別れよう」
アンタからこの言葉を聞くことは、薄々気づいてた。
でも、コレを言われたショックは
自分でも解らないほど絶大だったようだ。
「うん。解った。アメリカに行っても頑張ってね。」
そう言ったのはいつだったか…
時が流れるのは早いもので、俺はもう18歳になった。
つまり高校3年生だ。
周りの人達は進学があーだ、就職がこーだ言っている。
正直に言って、興味が無い…
進学も就職も、もうどうでも良い。
確かに大学進学すれば昔の先輩達がいる。
でも顔を合わせたくなかった。
だって、あれだけ毎日やっていたテニスもやめてしまった。
否、出来なくなってしまった。
去年の夏、全国大会を終えた時から左肩が上がらなくなったのだ。
最初はスランプだと思った。でも違った。
それに加えて、交通事故に巻き込まれた。
それ以来全く出来なくなってしまった。
これは本当に嫌になった。
出来なくなった事より、昔好きだったアンタと同じところを
怪我してしまった事が嫌だった。
…昔?
今もかなり引きずっている。
今でも変わらず、
いや、
前よりもかなり好きになっていた。
忘れようとしても無駄だった。
そこまで俺の心にアンタは居座っていた。
それでも、もう会うことは無いと思っていたのに…
あの雨の日に会ってしまったんだ…
アンタと俺がいつも一緒に帰って、別れていたあの道で、
「…リョーマ…」
アンタはビックリした様子で俺に声をかけてきた。
「…く、に……手塚先輩…」
咄嗟に出た言葉を訂正した。
あの日からおれは、もう、この名前を呼ばないと決めたから。
「…どうして此処に?」
「…長期休暇が取れて…ついでに年越しをする為に、帰ってきた…」
「そっか…」
「…あぁ…」
この場所に、アンタと二人で居るのが息苦しかった。
一刻も早くこの場所を去りたかった。
「じゃあ、手塚先輩さようなら。」
「まっ、待ってくれリョーマ!!!」
「…なん、ですか?」
早くここを去りたいのに、アンタが声をかけるから
体が言うことを利かないじゃないか…
「少し…話でもしないか?」
「…俺は…俺は何も無いですから!!」
差していた傘を放り投げ、それだけをアンタに言い残して、
雨の中を無我夢中で走った。
2009.10.06.志花久遠.
最終更新:2010年02月03日 16:40