ふと気がつくとその小さい背中を追っていた。
 俺の意識とは関係なく、だ。

 それは部活中にだけではなく、
 1年が移動しているとき、
 全校生徒の前で話しをするとき、
 全ての行動の中にあの生意気な目を探している自分がいた。

 部活時は一番大変だ。
 ずっと見ているのだから…

 確かに彼のテニスセンスは優秀だ。
 しかし其れだけで見ているのだとは自分のなかで思えなかった。
 なにがこんなに引っかかるのか解らなかった。


 水曜日の雨の日、もちろん部活は中止。
 廊下で筋トレなどやっても良いのだが、いつも優先してもらっている為に
 どうどうとは使えない。
 なので休みを入れてみたのだ。

 家に帰っても勉強は早く終わってしまうだろう。
 そう推測し、本を借りるため図書室に寄った。

 …寄ったのが間違いだった。そこには越前が居たからだ。
 仕事もせずにカウンターに突っ伏して寝ている。
 幸い他の者は居ないようだ。
 しかし起こさないわけにもいかないので、

 「越前、起きろ」

 言いながら揺さぶり起こす。 

 「ん…ぶ、ちょー?」

 可愛い。不覚にもそう思ってしまった。
 まだ眠たいのか唸っている。

 「寝ていないで仕事をしろ。」

 そんな思考を振り切るため思ってもいないこと言ってみる。

 「…でも部長、起こしてくれ…たじゃないッスか」

 「それは仕事をしていないからで、「ねぇ、部長?」」

 俺が言葉を紡いでいるのにそれを越前は遮り、




 「部長に好きな人はいますか?」




 いきなり聞いてきた。
 そのとき、何故だか解らないがそのとき、


 俺は越前が好きなのだとはじめて知った。



 【恋をしたと、はじめて知った。】
 (好きな人か?…あぁ…いるぞ。)






 手塚→(←)越前
 2009.11.11.志花久遠.


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最終更新:2010年02月03日 16:34