| れきし 【歴史】 <広辞苑> |
① | 人類社会の過去における変遷・興亡のありさま。また、その記録。「-に名を残す」「-上の人物」 | ||
| ② | 物事の現在に至る来歴。「-と伝統を誇る」 | |||
| れきし 【歴史】 Rechtssicherheit <日本語版ブリタニカ> |
人間および人間が属する自然の諸現象で過去に生起した事実、またそれらの事実に関する調査と記述をいう。 | |||
| (1) | 中国では周代に重要な事件を竹簡などに記録する役人を史官といった。 | |||
| (2) | 西洋では | |||
| <1> | ヒストリー history という言葉が探究を意味するギリシアのイストリア istoria から始まったように、過去の探究とその叙述とを意味する。 | |||
| <2> | 同時に、ドイツ語のゲシヒテ Geschichte の本来の語義 geschehen (生起する)のように生起した事実そのものをも意味する。 | |||
| 過去に生起した事実はすべての出来事であるが、そのすべての事実が歴史となるのではない。 一定の関心、価値判断に基づいて選定された過去の事実が歴史を構成する。 「歴史は書き換えられる」という言葉があるように、問題意識の違いに応じて、選択される過去もその記述も異なってくる。 その問題意識を規定するものは現在であり、その意味では「あらゆる歴史は現代の歴史である」(B. クローチェ) | ||||
| 歴史の歴史、いわゆる史学史は古今東西の歴史叙述の問題意識のあり方を教えるが、よく知られる分類として、①物語的歴史、②宗教的歴史、③教訓的歴史、④発展的歴史、がある。 | ||||
| ギリシアのヘロドトスの『歴史』、中国の司馬遷の『史記』、日本の『古事記』などはいずれも最初の「書かれた歴史」とみなされるが、それらの歴史記述を支えた歴史意識は、固有の歴史的現実のなかで生れ、それに規定されたものであった。 そこには選択された事実に対して解釈と説明が必然的に加わるが、偶然的で、混沌としてみえる無限の事実の群れのなかから意味ある事実を選びとる以上、なんらかの普遍的原理に依拠しなければならないからである。 この歴史理論を自覚的に構築し、研究方法を練磨して科学としての歴史学に発展させる努力が19世紀に開花する。 | ||||
| れきし 【歴史】 <精選版日本国語大辞典> |
[一] 〖名〗 | ① | 過去の人間生活に起こった事象の変遷・発展の経過。また、そのある観点から秩序づけられた記述。 *談義本・艶道通鑑(1715)一「歴史につまびらかなり」 | |
| ② | ある事物の進展・変化してきた過程。 *破戒(1906)<島崎藤村>一一「嫁ぐ迄の其二人の歴史を想像して見た」 | |||
| ③ | 「歴史学」の略。 *輿地誌略(1826)一「其学四道、曰理学、曰教学、曰歴史」(皮錫瑞-経学通論序) | |||
| ④ | 学校における歴史教育を内容とする科目。 *思出の記(1900-01)<徳富蘆花>一「歴史と作文と地理と悪戯が大好きだった」 | |||
| [二] | ① | (原題ギリシア Historiai) 史書。ヘロドトス著。全九巻。紀元前445年ごろ成立。ペルシア戦争を中心に、ギリシアとアジアの異邦との抗争、東方諸国の歴史などを、豊富な説話を集大成しつつ、きわめて正確に叙述したもの。現存のギリシアの最古の歴史書。 | ||
| ② | (原題ギリシア Historiai) 史書。ツキディデス著。八巻。紀元前411年ごろまで書かれたが未完。ソクラテスと同時代の著者が、ペロポネソス戦争の開戦当初から戦いの経過と背景をなすアテナイの政情について、克明に記述したもの。 | |||
| れきしがく 【歴史学】 <広辞苑> |
歴史を研究の対象とする学問。また、歴史研究の本質を究める学問。史学。 | |
| れきしがく 【歴史学】 (histriography and historical methodology 英; Geschichtswissenschaft ドイツ) <ブリタニカ国際大百科事典> |
人間の過去の社会的生活の状態及び変遷を研究する学問。 歴史学が対象とするものは、過去の人間の経験的事象であるから、史料の発見・収集・確定が歴史学の中核的な研究方法となる。 | |
| 歴史の記述は古来から行われていたが、近代の科学的歴史学は、①史料学と、②史料批判の練磨を通じて、19世紀に至って確定された。 | ||
| 史料の内容・性質は多様であり、各種の分類が行われるが、<1>沈黙する遺物と、<2>歴史的対象への発言である報告・陳述との2つに大別され、性質の違いによる史料の吟味が研究者に要求される。 史料の存在は広範かつ無限であり、偶然性も伴う。 これらの史料を通じて過去を認識しようとする歴史学は、その解明のために、他の諸科学の援助を必要とする。 歴史学の側からは、これを補助科学と呼ぶが、①古文書学、②紋章学、③印章学、などは直接的に補助する学問である。 | ||
| また、歴史学内部にも、人間生活の側面への照明の当て方により、①政治史、②法制史、③経済史、④文化史、などの区別が生れる。 | ||
| ところで、史料の収集、吟味が歴史学の中核的方法ではあっても目的ではない。 史料を手段として、人間社会の変遷を認識する作業、すなわち総合が歴史研究の目的であり、それは叙述によって完成する。 この歴史認識の原理として、歴史理論は不可欠であり、歴史学は歴史観を離れては存在しえないゆえんである。 | ||
| れきしがく【歴史学】 <百科辞典マイペディア> |
史学。広義に<歴史>に関わる知的営為、狭義に19世紀以降確立された近代的・実証的な専門学の一つ。 | |
| 過去の出来事の連鎖としての歴史(事実あるいは存在としての歴史)は、一定の仕方で認識され叙述されて初めて知となる。 この意味で歴史意識および歴史叙述の誕生に歴史学の起源を求めることができ、洋の東西を問わず文明とともに古い。 | ||
| ただし、英語 history に story (物語、話)が含意されているように、歴史の考察は必ずしも学問的反省を伴うものではなかった。 | ||
| 西洋ではルネサンス期以降、史料収集や原典批判(古文書学、文献学)が進展し、いわゆる<実証主義歴史学>が成立した。 これには、歴史の直線的推移を想定するキリスト教的世界観があずかって大きい。 | ||
| 現代ではさまざまな近代批判の試みのなかでその限界が指摘され、歴史意識・歴史叙述そのものの方法論的再考もなされている。 典型がアナール学派をはじめとする<新しい歴史学>の潮流である。 | ||
| れきし-がく【歴史学】 (精選版日本国語大辞典) |
[1] | 過去の人間生活の諸事象を研究する学問。歴史科学。 *外山正一氏の画論を駁す(1890)<森鴎外>七「歴史学の漸く其問題を看破し得て開化史の体裁備はり」 |
| [2] | 特に、文字によって書かれた史料(文献)を基本的な材料として過去の人間生活の諸事象を研究する学問。考古学、民俗学などと区別される。 | |
| し-がく【史学】 (広辞苑) |
歴史学に同じ。「-雑誌」 | |
| history, philosophy of <Britannica Concise Encyclopedia> |
Branch of philosophy concerned with questions about | ||
| ▽ | <1> | the meaningfulness of history and | |
| <2> | the nature of historical explanation. | ||
| (1) | Philosophy of history in the traditional sense is conceived to be a first-order inquiry, | ||
| <a> | its subject matter being the historical process as a whole and | ||
| <b> | its broad aim being to provide an overall elucidation of its course. | ||
| (2) | As a second-order inquiry, philosophy of history focuses on the methods by which practicing historians treat the human past. | ||
| [1] | The former, often referred to as speculative philosophy of history, has had a long. And varied career; | ||
| [2] | the latter, known as critical or analytical philosophy of history, rose to prominence only in the 20th century. | ||
| historiography <Britannica Concise Encyclopedia> |
Writing of history, especially that based on | ||
| ▽ | <1> | the critical examination of sources and | |
| <2> | the synthesis of chosen particulars from those sources into a narrative that will stand the test of critical methods. | ||
| The major tendencies in history writing are evident from the beginnings of the Western tradition: | |||
| ▽ | (a) | the concept of historiograpy as the accumulation of records and | |
| (b) | the concept of history as storytelling, filled with explanations of course and effect. | ||
| (1) | In the 5th century B.C. the Greek historians Herodotus and, later, Thucydides emphasized firsthand inquiry in their efforts to impose a narrative on contemporary events. | ||
| (2) | The dominance of Christian historiography by the 4th century introduced the idea of world history as a result of divine intervention in human affairs, an idea that prevailed throughout the Middle Ages in the work of such historians as Bede(※注:聖ベーダ、672・673-735). | ||
| (3) | Humanism and the gradual secelarization of critical thought influenced early modern European historiography. | ||
| (4) | The 19th and 20th centuries saw the development of modern methods of historical investigation based on the use of primary source materials. | ||
| (5) | Modern historians, aiming for a fuller picture of the past, have tried to reconstruct a record of ordinary human actions and practices; the French Annales School has influencial in this respect. | ||
| historiography (Oxford Dictionary of English) |
▽ | [mass noun] the study of the writing of history and of written histories: |
| ▽ | the writing of history: | |
| historiography (ランダムハウス英和大辞典) |
1. | 歴史文献、史書;⦅集合的⦆(記録された)史実(histories) |
| 2. | 歴史学方法論、修史論;歴史記述および研究の原則・理論・方法の総体 | |
| 3. | (厳正な吟味による確かな資料を基礎とした)歴史記述、修史、史料編修 | |
| 4. | 公の歴史・正史(official history) (例文)medieval historiographies 中世正史 |
| れきし-てつがく【歴史哲学】 (Geschichtsphilosophie ドイツ) <広辞苑> |
歴史についての哲学的考察 | ||
| ▽ | (ア) | 歴史学の認識論・方法論 | |
| (イ) | 歴史的事象の本質・目的・意義についての哲学的解明、及びそれに基づく哲学的世界史 | ||
| れきし-てつがく【歴史哲学】 philosophy of history <日本語版ブリタニカ> |
▽ | <1> | 人類の過去・現在・未来の総行程の目的・意義・本質ならびに |
| <2> | その歴史的認識の方法・論理を哲学的に考察する学問。 | ||
| (1) | 初めは、人間の個別的歴史事象を支配する理法を、人間の外側にある超越的なものとして捉えていた。 | ||
| [1] | 古代ギリシアやインドでは、人間の歴史行程は循環するものと考えられ、発展の契機は捉えられなかった。 | ||
| [2] | 古代ローマ末期にアウグスチヌスが現れて、キリスト教的歴史哲学を確立するが、ここでは、歴史は、①人類の堕落の歩み、という下降と、②神の国の実現による救済、という上昇が終末において決される、という終末論的特徴が示され、キリスト教ヨーロッパの歴史哲学の素型を形成した。 | ||
| [3] | イスラム世界では、①遊牧と②農耕の対抗の中に世界史の展開を合法則的に捉えようとするイブン=ハルドゥーン(※注:Ibn Khaldun, 1332-1406; チュニス出身でエジプト・マムルーク朝の官僚として活躍)の独自の哲学が現れた。 | ||
| (2) | 歴史の創造を、人間の自由意思の働きに求め、発展の必然性の中に位置づけたのは、18世紀のG. ビコ(※注:Giambattista Vico, 1668-1744; イタリアの哲学者・文学者。デカルトの合理主義・主知主義を批判しヘブライ人以外の諸民族の歴史的発展段階を神話時代→英雄時代→階級闘争の時代の3段階を踏んで循環するとする歴史主義的循環論を唱えた)である。 | ||
| [1] | 啓蒙主義思想家は、その合理主義をさらに徹底し、発展と進歩への肯定的かつ楽天的観念を哲学的考察の基とした。 その一人ヴォルテールによって、初めて「歴史哲学」なる名称がつくられた。 | ||
| [2] | ドイツのJ. ヘルダー、G. ヘーゲルはこれを受けながら、かっての超越的かつ外在的な力を、合理的かつ内在的な法則に転換させて、壮大な世界史の体系を示した。 しかし、そこには明らかに西洋中心の意識が働き、非ヨーロッパ世界はヨーロッパの発展をもたらす前提的・否定的役割しか付与されなかった。 | ||
| [3] | ヘーゲルの歴史哲学の観念性を暴き、内在的転倒による人類史の科学的認識を歴史変革の実践と結合させつつ明かにしたのは、K. マルクス、F. エンゲルスである。 | ||
| (3) | 19世紀後半には、このマルクス主義への対抗として、①生の哲学や、②新カント派、が観念論の復権を試みた。 | ||
| (4) | さらに20世紀の危機意識は、③文明論や、④危機神学(弁証法神学)などに分岐しつつ、歴史哲学を多彩なものにしている。 | ||
| れきしてつがく【歴史哲学】 <百科事典マイペディア> |
英語 philosophy of history ドイツ語 Geschichtsphilosophie などの訳。 | ||
| (1) | 世界史の全体を包括的に展望しようとする思索、さらには | ||
| (2) | 自然の認識とは異なる歴史の認識の根拠を問う理論的反省。 | ||
| アウグスティヌス、ビーコ、ヘーゲル、ディルタイらが代表的論者。 ニーチェの<系譜学>、実在を歴史性=時間性のうちにとらえるハイデッガーの思想、フーコーの<考古学>も独創的な歴史哲学の試みと称しうる。 ⇒歴史主義 | |||
| れきし-てつがく【歴史哲学】 <精選版日本国語大辞典> |
歴史そのもの、または歴史学を主題的に扱う哲学の一部門。 | ||
| (1) | 歴史の展開原理やその本質を問題にする歴史存在論と、 | ||
| (2) | 歴史学の成立根拠や方法論を問題にする歴史認識論とに分かれる。 | ||
| *筆まかせ(1884-92)<正岡子規>一「其中の哲学なる一学科についていはんに、<略> 社会哲学、歴史哲学、政治哲学、審美哲学等の区別あり」 | |||
| 【歴史哲学】(れきしてつがく) <山川世界史小事典> |
歴史の意味、目的についての哲学的考察。 | ||
| アウグスティヌスやヴィーコにすでにみられるが、「歴史哲学」の語はヴォルテールに由来する。 近代では特にドイツで発展。 | |||
| (1) | ヘーゲルにおいては、歴史は自由実現の過程であると同時に絶対精神の自己展開であるとされ、 | ||
| (2) | マルクスは歴史は階級闘争の過程であり、社会主義革命により無階級社会が実現されるとした。 | ||
| ヨーロッパの歴史哲学にはキリスト教的救済論の色彩が強いが、イスラーム世界にはイブン・ハルドゥーンの社会哲学的・文明論的歴史哲学がある。 | |||
| なお、ヴィンデルバント、リッケルトなど19世紀末ドイツの「新カント派」の哲学者たちは、法則定立的な自然科学に対し、歴史学は個性記述的であるとして、歴史学の独自性を主張、歴史主義の哲学的基礎づけを行った。 | |||
| れきし-かがく【歴史科学】 <広辞苑> |
① | 歴史学に同じ。 | |
| ② | 歴史的な性格をもつ諸現象を取り扱う諸科学。内容上は社会科学に近い。 | ||
| ③ | ウィンデルバント(※注:Wilhelm Windelband(独) 1848-1915. 新カント派の西南学派を創始した哲学者・哲学史家)の科学分類によれば、方法上自然科学に対立するもの。 | ||
| <1> | 自然科学は、反復のできる一般的な法則を立てることを、その方法とするにに対し、 | ||
| <2> | 歴史科学は、反復できない一回的・個性的なものの記述を方法とする、と考える。 ⇒文化科学 | ||
| れきし-かがく【歴史科学】 <精選版日本国語大辞典> |
[1] | 過去に生起した人間生活の諸事象を対象とする諸科学の総称。最も広義に解した場合の「歴史学」と同義。 | |
| [2] | 人間に関する事物の歴史的個性の記述を方法とする諸科学の総称。ビンデルバンドの用語。 リットルケの「文化科学」、ディルタイの「精神科学」に相当し、方法による学問分類の上で、事物を法則的にとらえることを方法とする諸科学(自然科学)に対置され、両者で経験科学を構成する。 *学生と教養(1936)<鈴木利貞編>教養としての社会科学<蝋山政道>六「前者の傾向は新カント派哲学の文化科学又は歴史科学の方法論に、或はヘーゲル哲学の再生たる精神科学的方法に結びついて」 | ||
| [3] | マルクス主義で唯物史観を理論的基礎とする歴史学。 | ||