夏『おーぃ。ただいまー』

秋『あー・・・おかえり。』

そこには、いつもに増して2/3程目を閉じて、寝転がる千秋がいた。

夏『どーした千秋、いつもに増してだらけてるじゃないか?ん?』

秋『うるさいよ。私は炭酸が切れるとどうもヤル気がでないんだよ。』

話を聞くと、どうやら家に帰りいつもどうり炭酸を飲もうと冷蔵庫を開けると
炭酸が切れていたらしい。

夏『あ~、昨日のアレ飲んじゃまずかったのか。いやー悪い悪い。』

カナは悪びれた様子もなく笑いながら適当に謝った。

秋『・・・はぁ・・・もういいよバカ野郎。とりあえず炭酸買ってこいよ、バカ野郎。』

夏『なっ・・・!千秋!あんた二度もバカ野郎っていったね!』

秋『言ったよ。それがどうしたバカ野郎。』

大きく息を吸い込み、何かを言おうとするカナ。
しかし、そこで何かを思いついた様な顔でニヤリと不敵な笑みを浮かべ、千秋の頭の近くに仁王立ちした。

夏『おい千秋、あんたはこの私に2度ならず3度もバカ野郎といったね。』

長年の勘と言うかなんというか・・・千秋はめんどくさい事になったと一瞬で感じ取った。

夏『で・・・そのバカ野郎にこうして見下されてる今の気分はどうだい?』

カナは勝ち誇った顔で千秋を見下した。



秋 『あぁ、バカに見下されて最悪の気分だよ。』

いつもならここでパンチやキックが来るのだが、今の炭酸の切れた千秋にはその力もなかった。
しかし千秋はあることに気づいた。

秋 『おい、バカ野郎。』

夏 『ほほぅ・・・まだそんな口をきくか。』

秋 『お前はさっきからパンツが丸見えなわけなんだが、そのパンツの端からから、うっすらと少し毛のようなものが見えているぞ。』

夏 『なっ・・・(バッ!!)』

慌てて千秋から離れるカナ。少し考えた後、うなずきながら千秋に語りだした。

夏 『あのなぁ、千秋。中学生にもなれば・・・そりゃあんた毛の1本も生えるでしょうよ。あんたの大好きな春香何てそりゃもう・・・』

秋 『でも海に行った時、はるか姉様のビキニからはそんなもの一切見えてなかったぞ。』

夏 『それは・・・剃ったんじゃない?』

秋 『つまりお前は身だしなみを整えていないわけだ。バカ野郎。』

夏 『上等じゃないのさ!そこまで言うなら千秋、あんたは身だしなみ整えてるんでしょうねぇ?』

そう言うとカナは、あっという間に千秋を丸裸にした。



秋 『おいバカ野郎。私はお前と違ってバカじゃないんだ。風邪ひいちゃうだろ。服返せよバカ野郎。』

動けない分、いつも以上に口で反撃する千秋。
しかしそんな事は気にも留めずカナは続けた。

夏 『あれ~?千秋、あんた林どころか木の一本も生えてないじゃないのさ。』

秋 『そりゃそうだよ。私はまだ小学生なんだ。普通だよ。分かったなら早く服返せよ。』

カナは不満そうな顔をしながら、ふと千秋の胸に目をやった。

夏 『なんだい千秋、あんた山も無けりゃあ、小高い丘もないじゃないか。見渡す限りの大平原だよ。』

このときはじめて千秋の眼が2/3程開いた。

秋 『うるさいよ!まだ発展途上なんだよ!もういいから服返せよ!』

夏 『はぃはぃ分かりましたよ。・・・ピシッ!』

そう言うのと同時にカナは、千秋の大平原にあるピンク色のモノを指ではじいた。

秋 『きゃっ・・・!あぅぅ・・・・ばか野郎・・・』

二人の時間が止まる・・・カナは思い出せるだけの記憶を引きづり出したが、
千秋が『きゃっ』などと女の子っぽい声を出した記憶はなかった。
もちろん千秋自身もそんな記憶はなかった。

二人の間に気まずい時間が流れた・・・。



春 『ただいまー。おーぃ千秋ー、切らしてた炭酸買ってき………』

学校帰りに炭酸を買って帰って来たハルカの目に飛び込んで来たのは、
制服のカナと、素っ裸で顔を真っ赤にした千秋の取っ組み合いの喧嘩だった。

秋 『ハ…ハルカ姉様。こ…このバカ野郎が…わた…私……ぁの……ぇっと…』
春『カナ。こっちにいらっしゃい。』
夏 『ちょっ!ハルカ!まずは両方の言い分を……ぁー……ちょっ…』

普段クールな千秋が、あそこまで取り乱すと言う事は…どちらが悪いか考えるまでもなく、
そのままカナはハルカの部屋に引きずり込まれた。
部屋に残された千秋は2・3回深呼吸した後ハルカの買って来た炭酸を飲み、服をきた。

藤 『こんにちわー。』

藤岡の声が聞こえると、千秋は少し小走りで玄関に向かった。

藤『あっ、こんにちは千秋ちゃん。…えーっと…南に呼ばれて来たんだけど…』
秋 『あのバカ野郎なら今ハルカ姉様に叱られてるよ。』
藤『ぇっ?』
秋『まぁ立ち話もなんだし、カナが戻るまで上がってテレビでも見てようよ。』



千秋がテレビの正面にあたる特等席に座布団を引く。

千秋 『はぃ。いつもの席どうぞ。』
藤『あっ、いつもありがとう、千秋ちゃん。』

千秋は藤岡にお礼を言われ、少し恥ずかしそうにうつむいた。
実は千秋は藤岡が来る事を知っていても、「ありがとう」と言われたい為に藤岡がきてから座布団は出す様にしていた。
過去に一度カナが座布団を出してからは、藤岡が来るまで座布団を隠す念の入れようだ。
藤岡が特等席に座ると、千秋も自分の「指定席」に腰掛けた。

秋 『よいしょっ…』
藤『…ねぇ千秋ちゃん。前から不思議だったんだけど、どうしてオレの膝の上に座るの?』
秋『ん…?私が座ると…藤岡は迷惑なのか?』

千秋は少し暗く心配そうな表情で藤岡の方を向いた。
藤岡は何かまずい事を言ったのかと、すこし慌てた様子で話し続けた。
藤『いゃ、全然平気なんだけど、なんでかな~って。…アハハ……。』
秋『藤岡はお父さんに似てるらしいんだ。』
藤『えっ…お父さん?』
秋『前にハルカ姉様が、「藤岡君の雰囲気がお父さんに似てるのよね」…って、
私はお父さんがどんな人か…何故いないのか知らないんだ…。』



その後も千秋は話続けた。
物心ついた頃には姉しかいなかった事…
何故かお父さんの事を聞くとハルカが困った顔をすること…

秋『……でも…私がお父さんの事を聞くとハルカ姉様が困る。だからもういいんだ…。』

千秋は目を真っ赤にして下唇を少し噛み悲しい気持ちを押さえ、藤岡には悟られないように笑顔をみせた。
しかし藤岡はすぐに千秋の気持ちを察した。
そもそも千秋が笑顔を見せる事自体が不自然だった。
そして藤岡は再び話をして話をきりだした。

藤岡 『よし!じゃあ今からオレが千秋ちゃんのお父さんになる!』
千秋 『ぇ…?ど…どうしたんだ藤岡?カナのバカがうつったのか?』
藤岡 『こら、千秋!藤岡じゃなく「お父さん」とよびなさい!』
千秋『え…ぁ……ご、ごめんなさい……ぉと……ぅさん…。』

普段静かな藤岡の、あまりの勢いに押され千秋は藤岡をお父さんと呼んだ。

最終更新:2008年02月24日 00:10