さっきまで頭に上っていた血が、一気に引いていった。
何が起こったかさっぱり分からないマコトの足元にはさっき自分で止めたピンが落ちていた。
おそらく勢いよく離れた際に落ちたのだろう。
「・・・マ・マコトは・・・お、弟なんです!」
無理のある言い訳、マコちゃんは怒られて追い出される覚悟をした。
「・・・・・そっくりねー。」
「え?」
「弟さんにソックリ!」
「は、はぃ!良く言われます!」
とっさの言い訳・・ハルカだから通用したといっても良いほど無理はあったがマコちゃんは生き延びた。
マコちゃんがホッと一息ついた頃、玄関から声が聞こえた。
「こんにちわー。」
「なんだ?トウマまで来たのか?飯が食いたいならハルカに言っておいで。」
「わかった。」
カナにそう言われハルカの部屋に行くトウマ。
そこにはパンツしか身に付けていないハルカと髪が戻っているマコちゃんがいた。
「あのー、晩御飯およばれになr・・・なっ!えぇ?!!」
「あら、トウマいらっしゃい。」
「おまえ、その髪型だとマコt」
「わー!!わーーー!!!ちょっ!トウマこっち!」
その後10分ほどカーテンの中で経緯を話すマコちゃん。
トウマは、
「お前、本当に大変だな。」
と言い残しカーテンの中を去った。
カーテンから出てきたトウマを見てハルカがある事に気づいた。
「あら?トウマ、あなたびしょ濡れじゃない?」
「ん?あぁ、急に雨が降ってきて災難だったよ。」
ハルカが外を見ると、雨が更に勢いを増して降っていた。
天気予報は晴れ。買い物に行った時も寒いながら日は照ってていた。
藤岡・マコちゃん・内田・トウマは傘なんて待ってるわけもなく、途方に暮れていた。
「困ったわねぇ・・・うちは傘が3本しかないから皆の分は足りないし・・・」
「ハルカ姉様、それなら藤岡達には泊まってもらいましょう。」
「そうね、皆お家に電話して止まっていく?・・・それにしても本当に千秋は藤岡君がお気に入りなのね。w」
それぞれ家に電話して止まる事になったが、藤岡だけは迷っていた。
そりゃ好きな女の子の家に泊まるのだから、戸惑うのは当たり前だ。
「あの、やっぱりオレ帰るよ。家も近いしさ。」
「え・・ちょっと・・・藤岡!こんな雨の中帰ったら風邪とかひいちゃうだろ、泊って行けば良いよ!」
慌てて藤岡を引きとめる千秋。
しかし藤岡は大丈夫と言って玄関の方へ向かっていく。
千秋は最後の手段とカナに頼る事にした。
「おい、バカ野・・・カナ!大変だ!藤岡を引き留めろ!早く!急いで!!藤岡、風邪とか・・・」
「えー、別に良いんじゃないか?家もそんなに広くないんだし。風邪ひかない様に傘は私のを貸してやるよ。」
「・・ぐすっ・・うぅ・・・」
「わっ、お前何泣いてるんだよ。分かった分かった一応話はして来てやるよ。」
そう言ってカナはとりあえず玄関に向かった。
「おーぃ、藤岡。帰るのか?」
「あっ、南。うん、そうするよ。」
「お前、そんなに私の家にいるのがいやなのか?それとも私が嫌いなのか?」
「えっ?!いや、そんな訳ないだろ!」
「じゃあ泊って行けよ。」
「あぁ・・・そっか。じゃあ・・・」
そんなやり取りをコッソリ見ていた千秋は、
自分が必死に泣きそうになりながら止めても帰ると言った藤岡が、
カナがアレだけの言葉で、引きとめる事が出来たのが納得いかなかった。
一仕事終えた顔でカナが千秋の元にやってきた。
「千秋、藤岡はうちに泊まっていく事になった。私のおかげでだ。」
「う・・・ぐぅ・・・」
「とりあえずこれからは私をハルカのように『カナ姉様』と呼ぶんだ。」
「・・・・・・」
「ほーら、千秋呼んでごらん。せーの、カナ姉s」
「うるさいよバカ野郎!!!」
藤岡が帰らないとなると、千秋の調子もいつも通りに戻った。
「あのー・・びしょびしょになっちゃったんで先にお風呂良いですか?」
「あぁっ、そう言えばトウマ濡れてたんだったわね。先に入っておいで。」
「よしっ!じゃあトウマ、俺と一緒にサッカーの話でもしながら入るか。」
一同『えっ?』
そう言えば藤岡はトウマを男と思っていたのだった。
別に隠していなければならない訳では無いが、今後もサッカー等、自然に男同士として遊びたいトウマ・・・
慌てふためくトウマはとっさにカナに助けを求めた。
「お・・ぉぃ、カナ何とかしてくれ!」
「なんとかって言ってもねぇ・・・もうばらしちゃえば?」
「そこをなんとか!・・・そうだ!今度駅前の角のあの店のプリン買ってくるよ!」
「分かった、それで手をうとう。」
「た、たすかるよ。ありがとう。」
「おぃ、藤岡。私も一緒に入るよ。」
「ぅん、わかっ・・・えぇ?!!」
「ちょっ!カナ!お前、なんでそうなるんだよ!」
「安心しろトウマ、要するにお前が女とバレない様に、私がサポートすればいいんだろ?」
「ぃゃ、でもそれじゃあ今度は藤岡が困るだろっ!」
「え?・・・藤岡は私と風呂に入りたくないのか?」
「えぇーっと・・う~ん、わかった!入るよ!入ります!」
そう言って脱衣所に向かう三人。
この意味がよく分からない話には、流石に千秋も呆れて口をはさむ気にならなかった。
「じゃあ残った私たちも3人で入るか。」
「えっ?」
内田とマコちゃんは、千秋がマコちゃんを女と思っている事を思い出した。
「えっと、あっ!あの!!」
「どうした内田?そんなに慌てて?」
「いや、それじゃあハルカさんが一人になっちゃうから、千秋はハルカさんと入ればいいんじゃない?」
「マコちゃん・・・さすが中学生、いい事言うな。それじゃあそうさせてもらうよ。」
間一髪正体がバレずに済んだマコちゃん。
これにより、
1組 藤岡・トウマ・カナ
2組 内田・マコちゃん
3組 千秋・ハルカ
でお風呂に入る事になった。
内田『・・・あれ?』
最終更新:2008年02月24日 00:22