カナが風邪をひいた。
いつも無駄に元気でバカな奴が。

「ありがと千秋、ずっとついていなくていいよ。もうすぐ千秋の見たいテレビが始まるよ」
「テレビなんてどうでもいいよ、おまえが苦しそうにしているのを見ていると…」
─テレビより楽しい、と続けようとしたが
(こんな時くらい優しくしてやるか)
「心配でたまらない」
コチ…コチ…、時計の音がやたら大きく聞こえる。
「ちあき…」
ポロポロと泣き出す
「うわっ、泣くな」
「だって、千秋がこんなに優しくしてくれたの、生まれて初めてだよ」
「初めてじゃないよ! 何度かあるよ!」
「うれしいよー」
ガバッと抱きついてくる。
「バカッ離せ、病人だろ」

なんとかなだめて寝かしつけたのは、30分後だった。
あの調子なら、すぐ元気になるだろう。



次の日
「おはよー!」
朝食の支度をしているハルカに元気よく挨拶をする。
「おはようカナ、よくなったみたいね」
「うん、二人のおかげだよ。あれっ、千秋はまだ寝てるのか」
「それが…」

「ケホッケホッ」
今度は私が風邪をひいてしまうとは、不覚。
ドタドタドタ バタン!
「チアキー、大丈夫か!?」
騒がしいのが来た。
「静かにしろバカ野郎」
「おっとすまない、千秋が風邪ひいたって聞いたから」
どうやらカナの風邪は治ったようだ。
「ああ、見ての通りこのざまだよ、ケホッケホッ」
「安心しろ千秋、今度は私がつきっきりで看病してあげるから」
げっ! そんなことされたら治るものも治らない。
「いいよ、私は静かに寝ていればよくなる。おまえは安心して学校に行け」
「でも心配だよー」
「そんなに心配なら、学校帰りに駅前のプリンを買ってきてくれ。それが一番の看病だよ」
「わかった、必ず買ってくる。楽しみにしててよ千秋」
「頼んだよ」

ようやく行ったか
これで安心して眠れる



zzz…
むにゃむにゃハルカ姉さま、そこはダメですぅ
「ただいまー!」
玄関からの大声で目が覚めた。
はっ!? キョロキョロと辺りを見回す。
(なんだ夢か。カナの奴、いいところで邪魔して)
ドタドタドタ
騒がしいのが帰って来た。
「千秋ー、プリン買って来たよ、駅前の!」
「静かにしろバカ野郎」
「ごめんよ、ほら千秋の言ってたプリン!並んで買ってきたよ!」
「ああ、ありがとう。でかしたよカナ」
褒められて、ちょっと嬉しそうにしているカナ。
(なんか…、キモイ)
「ほら千秋、私が食べさせてあげる」
プリンを開封し、スプーンにすくう。
「じ、自分で食べれるよ」
「病人は安静にしてなくてはダメです。はい、あ~ん?」
しかたないなー
「あーん」
おずおずと口を開く。
パクッ、もぐもぐ
「おいしい?」
「…おいひい」
なんだかいつもよりおいしく感じた。



あっという間にプリンを2つをたいらげてしまった。
「千秋、ほっぺにプリン付いてるよ」
拭いてあげる、と言ってカナが近づいてくる。
ペロ
「のわあああ、ななななにをするッ!!」
「舐めた」
「舐める奴があるかバカ野郎、ティッシュとかで拭けー!!」
このまえのキスといい、いったいどーゆーつもりなんだ。
こういった行為は恋人同士がするものじゃないのか?
ドキドキドキドキ あーもー!
「もういいから、あっち行けよ!」
「じゃあ千秋お大事にねー」
ツインテールを揺らし、楽しそうに部屋から出て行く。
「2度と来るなバカ野郎!」

あいつ絶対からかってる。
私をドキドキさせて楽しんでいるんだ。
風邪が治ったら、仕返ししてやる。
ほっぺ舐めるよりもっとすごいことをして、カナの奴をドキドキさせてやるんだ。

そう考えると、楽しくてたまらない千秋であった。


おわり
最終更新:2008年02月24日 14:08