今日はバレンタインデー。
チョコレートを貰えるかどうかで男達が一喜一憂する日。
此処にも一人の少年が……


ガサガサ……ボトボト
「ん?」
(……しまった!今日はバレンタインだった!今は義理のひとつも受けとれない!)
この少年藤岡はバレンタインには人一倍チョコを貰う。つまりはモテるのだ。
(これ全部返さないと!…でも誰からのだろう?)
そんな、チョコを貰い慣れてる彼が何故こんなにも焦っているのかと言うと…
『藤岡』
『藤岡さぁ、チョコいっぱいもらった?』
「ひとっつももらってないよっ!」
『……』
そう、藤岡少年はこの少女、バカ野郎日本代表〔チアキ談〕の南カナに惚れているのだ。
以前、藤岡はカナに告白をした事があるのだが、カナの持ち前のバカさ加減と
妹チアキの素晴らしい解釈により無かった事になっている。


――放課後
『ヨシ!』
『ケイコ!この学校で一番モテるのは誰だ!?』
[は?]
[…石川先輩かな?]
『ヨシ、放課後ならたくさんあまってるだろ』


――30分後
(もうみんな帰ったのかな。南もいないみたいだし。)
「ハァ…もらったぶんは全部返しちゃったけど…」
「結局、南からはもらえなかったな…」
『なんだ?藤岡は私のチョコが欲しかったのか?』
ガタッ!
「み、南ッ!?…いつからいたの?」
『お前がため息ついてる辺りからいたよ。気付かなかったのか?
それよりもなんだそんなに驚いて。失礼だろう?』
「あ…ご、ごめん……」
『まぁいいや。そんな事より…藤岡、チョコ欲しいのか?』
「え?」
『どうなんだ?』
「ほ、欲しいよ!…南がくれるなら…」
『でももうこの最後のひとつしか残って無いんだ。他は全部食べちゃった』
そう言ってカナはチロルチョコをつまんで見せた。
(南がくれるのならなんでも……)
カサカサ…カナはつまんでいたチョコの包み紙を剥がし始めた。
(ま、まさか南…ア~ンとかしてくれるのか!?)
藤岡が少し行き過ぎた妄想をしていると、カナは躊躇する事なくチョコを自らの口に放り込んだ。
「……」(……南…くれるんじゃないの…)



「じゃ、じゃあオレ帰るね南。また明日」
そう言って藤岡が教室を出ようとカナに背を向けた時…
『コラふひほか!ひょほほひくなひほは?』
モゴモゴとしゃべるカナの言葉を何とか聞き取った藤岡は振り向きながら
「でもそれが最後のひとつなんじゃ…ん…『ん…ん……ふぅ…ん』……~~~ッッッ!?」
藤岡が言い終わる前、振り向いた瞬間にカナは唇を重ねた。
そのまま藤岡の口内に舌を侵入させると、歯をこじ開けてそのすきに
先程自らの口に放り込んだチョコを押し込んだ。
『ンフッ…ハァ』
「ッハァ…み、みなみ……」
『どうだい藤岡?私のチョコは。…美味しいだろう?』
そう言うカナの表情は普段からは想像出来ないほど艶やかで色っぽかった。
藤岡の理性がガシャーンバラバラ。
「……南…」
『ふ、藤岡?どうしたそんな恐い顔して……もしかして怒ったのか?』
{どうしようッッ藤岡怒ってるよーう}
『た、確かにちょっとやり過ぎだったな。で、でもバ「南…ん」ぅむ…』
藤岡は狼狽するカナを黙らせるため、カナの唇を塞いだ。
「『ん…ちゅ……んぷ…ふ…」』
そして藤岡はカナのしたようにチョコをカナの口内に移した。
「『くちゅ…ちゅ…ちゅぷ……んく」』
二人の間を幾度と無く往復していたチョコが溶けてなくなっても、そのくちづけは終わらなかった。


数分の後、二人がやっと唇を離すと名残惜しそうに唾液が糸をひいた。
『……藤岡…』
「み、南ごめんッッその、オレあんな事して…」(どうしようッッ南怒ってるよね…)
『藤岡』
「南、ホントにごめんッッ!」
『今から私の家、来ないか?』
「え?」
『ダメか?』
「いや、そんな事ないけど……南、怒ってないの?」
『いいよ別に。もともとは私が最初にやったんだから…それより来るのか?来ないのか?』
「い、行くよ!…でも何で?」
『チョコよりいいものあげようと思ってね』
「え?南それって…」
『それと藤岡!ホワイトデーは3倍返しだぞ!忘れるなよ』
「う、うん。わかったよ」
『ヨシ。じゃあ行くぞ藤岡』
そう言ってカナは藤岡の手をとった。
藤岡はその手をしっかりと握りカナと一緒に歩きだした。


おしまい
最終更新:2008年02月21日 19:35