.
満たせ
―――満たせ
――――――満たせ
その声は心の中に渦巻いて、理性という理性をすべて蹴散らした
照らす白光、艶やかに輝く銀髪、その上にある金髪
微かな水音が、部屋に響き始めた
時は少し遡る
絹恵「これで二人でお揃いやねー」
京太郎「同じところで買った眼鏡ってだけですけどね」
絹恵「私も前にお母さんに連れて行ってもらったんや、あそこ」
京太郎「じゃあ洋榎さんだけ仲間外れってことなんですね」
絹恵「私ら家族の中でね」
京太郎「あと二年で俺もその中に入るんですね」
絹恵「ふふっ、何言うてるんや?」
絹恵「京太郎くんも、もう立派な愛宕家の一員やで」ニコッ
絹恵「ただいまー」
京太郎「ただいま帰りましたー」
シーン
京太郎「誰も帰ってきてないんですかね?」
絹恵「そうみたいやね」
絹恵「……あっ!」
京太郎「どうしたんですか?」
絹恵「お姉ちゃんのこと駅まで迎えに行くんやったん忘れとったわー」
絹恵「京太郎くんは先シャワー浴びといてや」
京太郎「はい!……あれ?」
絹恵「ほな行ってくるなー」
ガチャ バタム
京太郎「…………」
京太郎「This is 愛宕家、OK?」
京太郎「I am alone OK?」
京太郎「…………おかしいなこれ」
京太郎「普通「私の部屋で待っててな」とか、だよな?それがなんで」
絹恵『京太郎くんは先シャワー浴びといてや』
京太郎「になるんだ?」
京太郎「いやいや、ここで考えよう。絹恵さんは『先』と言った、つまり後から絹恵さんが入るということ」
京太郎「このことから予想される答えは……」ポクポクポク
京太郎「あっ!」チーン!
京太郎「そうか!そうだったんだ!」
京太郎「絹恵さんは俺の身体を求めている!つまり―――」
絹恵『京太郎くんは先シャワー浴びといてや』
―――しかしその実は
絹恵『シャワーから出てきたら”お楽しみ”やな』
京太郎「くくく……ふはははは!」
京太郎「ようやく来たぞ須賀京太郎この世の春が!俺もついに卒業式を迎えるのだ!」
京太郎「まあいいや入ろ」
シャワー
京太郎「さて、ここから上がったらどうしよう……」
京太郎「やっぱり絹恵さんが上がるのを待って同意の上で――――」
絹恵『京太郎くん……』
京太郎『絹恵さん!』ガバッ
京太郎「ノーウェイノーウェイ、ここは絹恵さんの好きな男らしさを見せてやる!」
京太郎「迷うことなく押し倒す、これで決まりだ!」
ガチャ バタム
京太郎「……絹恵さんが帰って来たみたいだな、よし」
京太郎「須賀京太郎!出る!」
キュッ
ガララ
フキフキ
京太郎「服は……どうせ汗まみれになるんだ、いらぬ!いらぬわ!」
京太郎(と、出てきたものの)ボヤァ
京太郎(眼鏡忘れた……まあちょっとぼやけるだけだからいいけど)
「上がったか……はっ!?」
京太郎「目標捕捉!作戦開始!オペレーション・ドッキング!」ダダダダ!
ガバッ!
京太郎は高校生時代から比べると、幾分か視力が落ちていた
主な理由は麻雀の勉強の一環としての教本の読みすぎ、ネット麻雀のしすぎだった
京太郎の視界に入ったのは銀髪、まぎれもなく自分の恋人のそれだ
――――京太郎はこの認識を、この瞬間を後悔することになる
京太郎の眼下にあったのは黒縁の眼鏡とその奥にある赤い瞳だった
しかし、あるべきものとは違っていた
絹恵の眼鏡は桃色で、その奥にあるべきは蒼い瞳なのだ
全裸の自分が押し倒した人は恋人などではなかった
そう、京太郎が押し倒したのは――――
京太郎「お義母、さん……」
震えた声を発する京太郎の下にあるのは、スーツ姿の義理の母(予定)、愛宕雅枝の肢体であった
驚愕と焦燥を溜めながら、呼吸を整えるために上下に揺れる胸
いつも情熱を燈している赤い瞳は、風前の灯火のように弱弱しく、威厳の威の字も見られなかった
普段とは違う、艶やかな女
その姿を前に、京太郎は興奮を隠せなかった
その胸を揉みしだきたい
その唇を己が唇で侵したい
その身体へ己を解き放ちたい
何よりも美しく穢したい
【制御された欲求を満たせ】
満たせ
―――満たせ
――――――満たせ
その声は心の中に渦巻いて、理性という理性をすべて蹴散らした
雅枝はただ狼狽えるだけで、抵抗も、拒否もしなかった
京太郎はそれを"承認"と取り、雅枝の豊かな胸へ手を掛けた
照らす白光、艶やかに輝く銀髪、その上にある金髪
やがて、微かな水音が、部屋に響き始めた
雅枝を彼女の寝室に運び、二人は前戯を続けた
前戯を終えた雅枝の股からは涎のようなものが垂れていた
久々の快感に期待しているようにその実を震わせながら、京太郎の股間に張り詰めた赤黒い興奮を中へ中へと誘おうとしていた
「興に奮う」と書いて興奮
京太郎と雅枝は、共に興奮の檻に囚われていた
軽く唇を重ね、蕩け切った雅枝の顔を一瞥してから、京太郎の眼は再び紅潮しつつも微かに震える陰唇へと向かう
「は、ゃくぅ……」
ようやく聞こえる嬌声以外の雅枝の声
その柔らかく熟された声は、京太郎を迷わせた
背徳
もう既に別れたとはいえ人妻
ましてや自分と将来を誓い合った恋人の母親
行為自体初めてであるのにも関わらず、この劇的な状況
明らかに社会の規範に反する、背徳
京太郎と雅枝は共にその背徳感に溺れていった
増長した背徳は興奮を助長する
助長された興奮は行為を激化させる
結果として、雅枝の甘くか細い声は京太郎をさらに奮い立たせるものとなった
雅枝は京太郎を急かすように、力の無い指で透明な涎を滴らせた口を開いて待つ
京太郎は雅枝の意図を汲み取り、準備万端な肉棒をそこに押し当て徐々に膣内へと進めていく
十数年ぶりに得る快感への喜びのためか、それを遥かに上回る興奮のためか、雅枝の眼からは涙が溢れていた
少しだけ塩味のする涙を優しく舐め取り、京太郎は初めてへの歓喜を噛み締めつつ、動作を始めた
動作とはただ前へ後ろへと腰を動かすだけの至って単純な運動だ
雅枝の嬌声と京太郎の息遣いが部屋を満たし、京太郎の欲求が満たされるのもそう遠い先のことではなかった
ぐしゃっ、と何かが潰れた音にも気付かず、二人は思うが儘に行為に耽った
――――とある飲み屋
絹恵「お姉ちゃーん、はよ帰ろー」
洋榎「いややー!今日は恭子んちに泊まるんやー!」
絹恵「はぁ、いっつも子どもみたいやな……」
恭子「そういうことやから、絹恵ちゃんは帰ってええで」
絹恵「せやけど末原先輩に迷惑が……」
恭子「洋榎の世話はもう慣れたから気にせんでええで」
恭子「それに、須賀くんと買い物して来たんやろ?彼氏は大事にせんと」
絹恵「あ、そういえば買い物の後京太郎くん一人だけに……」
恭子「あーあ、あーあ、それ怒っとるわ。彼女が自分置いてったらそら怒るわ」
絹恵「ええ!?どうすればええんですか?」
恭子「せやなー例えば……」
絹恵『責任は、私の身体で……』ハラリ
恭子「……とか?」
絹恵「か、身体って!」
恭子「あっはっは、冗談やで冗談」
絹恵「なんか末原先輩が元代行に似てきたよーな……」
恭子「なんでやろな……」
恭子「まあ須賀くんが好きなものを作ってあげたらええんやない?」
絹恵「好きなもの……ですか」
恭子「そろそろ帰った方がええで、もう須賀くん待たせたらあかんで」
絹恵「ですね、ほな帰りますわ」
洋榎「ばいば~い」
恭子「また今度なー」
アリアタッシター
絹恵「好きなもの……ハンバーグとか、から揚げとか?」
絹恵「せやったら買い物してこぉへんと」
絹恵「京太郎くん喜んでくれるかな~♪」
絹恵「ただいまー」
シーン
絹恵「……あれ?」
絹恵「お母さんも帰って来とるんか、二人ともどこにおるんやろ」
絹恵「京太郎くーん、お母さーん」
シーン
絹恵「……なんで誰も返事してくれんの?」
「あっ、あっ!ぁぁぁあああ……」
絹恵「お母さん?……何しとるんやろか」
絹恵「確か上の方やったよーな」トテトテ
絹恵「お母さん……?」
廊下へ光が漏れている一室
母はそこで何をしているのだろう
頭に疑問符を浮かべながらドアを少しだけ開いて中を覗いた
――その光景は、絹恵にとって見るに耐えないものだった
幸せそうに喘ぐ母と、その腰を掴んで前後する恋人
軋むベッドの悲鳴と、二人の間から弾かれる水気の混じった音
母の柔らかな匂いと、ツンと鼻腔を突く何かの臭い
青いシーツの上に染み込んでいる液
半開きになった母の唇に恋人の唇が添えられる
恋人は愛おしそうに母の唇を貪る
母は恋人の頭を掴んで喘ぎを抑える
銀糸を紡いだ恋人の唇は母の胸へと向かう
右腕で左胸を揉みしだき、右胸をその唇で激しく責め始めた
汗で濡れた母の優しい手は小さな子を甘やかすように恋人の頭を撫でる
「雅枝!またっ!」
「あぁぁっ、もっと、もっとぉ、んっ!」
恋人の腰が母の尻に押し当てられ、一連の動作が停止する
母の身体が細かく震えるのが見える
肩で息をしながらしばらくして、二人の繋がりが解かれた
露わになった母の性器からは白濁した液が溢れていて
恋人の腰には太く逞しい、紅く染まった黒い肉の棒がいきり立っていた
以前一緒に風呂に入ったときに見たそれとは全く違う姿で、とても悍ましく思えた
今度は恋人の上に母が乗り、その腰を下げる
ずちゅっ、ずちゅっ、と厭な音の後、母の性器に肉棒が収まる
こうして、行為は再開された
この行為は何なのか
二人は何をしているのか
精神が思考を遮断し理解を拒んだ
だが、目の前の光景が全てを思い知らせた
この行為は性交
二人は愛し合っているのだと
――私は捨てられた、と
理解の果てに眼には陰りが入る
精神を打ち砕かれて体から力が抜ける
左腕から袋がずり落ちて、ぐしゃ、と何かが潰れる音がした
それすらも気づかないのか、部屋の中の二人は行為を続ける
私は、どうすればええんや
何も、何もない
私は、どうすればええんや
二人のためになればええ
私は、どうすればええんや
二人の間にいればええ
私は、どうすればええんや
ただ笑っていればええ
私は、どうすればええんや
……………………
絹恵「ただいまー」
京太郎「おかえりなさい、遅かったですね」
絹恵「あ……さっきはごめんな」
京太郎「?何がですか?」
絹恵「京太郎くん置いてけぼりにしてもうて……」
京太郎「別に気にしてませんよ、義母さんが晩ごはん作って待ってますよ」
絹恵「あちゃー、せっかくハンバーグとから揚げ作ろ思うたんやけど先越されてもうたかー」
京太郎「絹恵さんの料理だったら何でも、いつでも食べますよ」
絹恵「あはは、嬉しいこと言うてくれるな」
京太郎「勿論ですよ、俺は絹恵さんの恋人なんですから」
二人は、笑い合った
京太郎は身体に染みついた嘘を塗りつぶすために
絹恵は母と恋人のために
絹恵は壊れるまで笑い続けた
何があっても笑い続けた
.
最終更新:2013年10月16日 13:26