390洗濯1sage2011/07/15(金) 00:42:12.41 ID:??
381の
洗濯イラストからイメージを膨らませてSS書いてみました
完全にサンジ視点です
※ ※ ※
「さーみんな、じゃんじゃん洗っちゃうわよ~」
ナミさんの元気な号令と共に開始されたミッション。
それは洗濯だった。
悪天候の中をずっと航海してきて、ようやく見つけたのどかな浮島。
島に着くと嘘のような快晴で、住民に聞くとここは年中ずっと晴れ晴れとしているらしい。
途中で気候が変わる心配もないと知り、俺達は溜まりに溜まった洗濯物を協力して処理する事になった。
ナミさんとロビンちゃんは野郎共と違って毎日交代で洗濯しているらしいが、
さすがに雨嵐続きの海の上では思うように洗いきれずにいたようだ。
男物も女物もみんなごちゃ混ぜとなって、船から運び出された大量の衣類等が山を作っている。
それでも大人数で手分けして行っているためか、洗濯は順調に進んだ。
島の川に棲むワニは気性が非常に穏やかで、チョッパーの交渉を経て洗濯板代りになってくれた。
いつぞやのバナナがついたワニとはえれー違いだぜ。
広がる青空の下、洗い立てのシーツが風にそよぐ様は何とも爽快な気分にさせてくれる。
「ナミさん、この服も洗い終わりました~」
「はーい、今干すわね」
丈の短いワンピース姿で、はち切れんばかりの健康美溢れる太腿を出し惜しみしないナミさん。
俺はそのお傍でワニの背中でゴシゴシ服を洗う係り。
そしてナミさんの可愛らしい手に直接、洗い終わった服を渡していく。
アァ~幸せだー。
「水、冷たくて気持ちいいわね」
「風も涼しいし」
「時間がいつもよりゆったりして感じるわ。本当にいい島だわ」
ナミさんの鮮やかなオレンジ髪が太陽の光を受けていつも以上に眩い。
温和な気候のためかナミさんの雰囲気も船の上でと比べて随分と柔らかい。
泡に塗れた服をワニの背中の上で擦り合わせながら、度々前に立つナミさんに目を奪われる。
洗濯自体は特に好きでも何でもない作業だが、ナミさんと一緒なら極上のひと時だ。
「サンジ君、それが終わったらこの服お願いね」
「承知しましたナミさん♪」
「あ、サンジ君。その服は伸びやすいから、あまり強くゴシゴシしないでね」
「分りましたナミさん♪」
『あまり強くゴシゴシしないでね』だってー。
ゴシゴシ…ああ、なんていい響きだ。クソ可愛いぞナミさん。
いや、ナミさんが発するから可愛いんだ。
俺も普通にゴシゴシという言葉を使っている。他の男連中とかもな。
だがナミさんの言うゴシゴシは格別な響きを伴うみてえだ。
なんて頭の中でメロリン細胞を密かに活性化しさせていた時にそれをぶち破るのは我らが船長の豪快な雄たけびで。
「うお~あったけえー!」
よりによって干している最中の洗濯物に飛びついてはしゃぎやがって。
「くおらルフィ!せっかく洗ったシーツに飛びつくな!汚れるだろーが!」
「にししっ!」
にししっじゃねえ!
ったく。なんで俺以外誰も注意しねえーんだ。
ロビンちゃんは、ワニと戯れてるかーわいーな…って、まあいいとして。
ウソップの野郎も一緒になって馬鹿笑いしてやがる。
チョッパーはいつの間にか洗濯物に混じって干されてやがるし。
マリモ…の奴はなんかワニと服取り合って揉めているし、はなっから期待してねえ!
せっかく俺とナミさんの愛の共同作業で洗いあげたシーツ達を…。
「もう、ルフィったら。子供みたいにはしゃいじゃって」
ナミさんの鈴の鳴るような穏やかな声が耳に入った瞬間すっと怒りが収まる。
ナミさんの声には精神の鎮静作用があるに違いない。
いや、逆に高ぶる事もあるが。
「子供みたい、じゃない。子供なんだよ、奴ぁー」
「それもそうね」
そして二人して顔を見合わせて、ぷっと吹き出しクスクス笑い合う。
ああ、いいなこういうの…。
船の上じゃ一緒に洗濯なんてした事なかったしな。
もう向こうの方で騒いでいるルフィ達の事も気にならない。
俺が洗ってナミさんに渡す。
ナミさんはそれを木に吊るした紐に干す。
俺が洗ってナミさんに渡す。
ナミさんはそれを木に吊るした紐に干す。
同じ作業を繰り返しているだけなのに甘酸っぱい感覚に胸が満たされる。
なんかよー、こういうのって、今の俺達って…。
「新婚さんみたいね」
「え…?」
一瞬、俺の脳みそん中が外に零れ出したのかと思った。
いやいや、でも今の声は間違いなくナミさんだ。
思わず顔を上げると目を見開いたナミさんと目が合う。
「ナミさん…?」
「…い、今私…」
「今…?」
「な、なんでもない!」
「新婚さん?」
途端に、ナミさんの顔が音を立てるようにして真っ赤に染まる。
湯でダコみてえだぜナミさん。
「な、何でもない…!何言ってるんだろ私…。い、今の、今の違うから」
手に持っていた洗濯ものを意味無く上下にぶんぶん振って、顔も同じように横にぶんぶん振って…。
らしくない挙動不審ぶり。
これって、もしかして…。なあ…?
「新婚さんみたいって、俺とナミさんが…?」
「………!!!」
ビンゴ。
こんなに恥ずかしそうな、照れた表情のナミさん滅多に見られない。
熟したトマトみてえに赤いぜナミさん。
「違うわよ!私はただ…」
「ただ?」
「ただ………」
「ただ?」
「………~~~~だから何でもないんだってば!」
上手い言い訳の1つも思いつかない彼女。
ナミさんの手元に未だ干されずにいる洗濯ものがおしぼりのように捩じられている。
ナミさん、服が皺くちゃになっちゃうよ。
瞳は潤んでるし、普段の勝気さが顔からすっかり抜けちまっている。
いつも素直じゃないナミさんの、紛れもない素の姿。
俺が密かに思い浮かべたそれが、ナミさんも同じように思い浮かべていて。
俺は心の中に留めていたそれを、ナミさんの方はうっかり口にしてしまって…。
ああ、本当に…。
「幸せだ~!!!」
「…っるさいわよ、サンジ君!」
突然叫んだ俺を何事だ?と、注目する他の連中(+ロビンちゃん)の視線を感じたがどうでもいい。
熱が引かない顔を一味に見られまいと必死に洗濯物で隠すナミさんがクソ愛しい。
その後の作業が鼻歌交じりとなるのはこれはもう必然的なもんだ。
ナミさんの方は俺が服を渡す時に指先が触れただけでびくっと震えたりしている。
そう緊張されると新婚さんって空気ではなくなっちまったなあ…。と思わず苦笑い。
でもこれはこれで心地良くて俺の気分はこの島の天気のように快晴。
あとは──そうだな。とりあえず今まで必要だからやっていただけの“洗濯”という作業が、
俺にとって料理の次に好きな家事になった、って事だな。
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最終更新:2011年07月16日 23:50