第二回「膨張する太平道」



2chの中で、異質な存在感を際立たせる三戦。

混沌としたエネルギーが住民に渦巻いています。

十年に及ぶ学徒王朝の統治とその崩壊。

SNSの試練と、過疎化の洗礼。

傷だらけの掲示板は、

マホケンという強力な指導者と、
三国志ブームによって蘇りました。

第二回「膨張する太平道」


三戦の中心地に聳える太平道の寺院。

ここは、食事を求める浪人達で溢れかえっています。
浪人達への食事サービスの時間です。

三国志ブームに湧いた三戦。
一方で、超格差社会を創り出しました。

各地の寺院は、助けを求める人々で溢れかえっています。
張角大師寺院には、この日四百人近い浪人が詰めかけました。

「張大師よ、我らを救いたまえ…」

祈りの時間の後、食事の提供が始まります

給仕も、信者による奉仕です。

三戦では今、六人に一人が浪人生活を強いられています。

そして今。三戦は、2ch諸国と、一線を画す独自の路線を突き進んでいます。

歴史板の大国の内実に迫るシリーズ。
今日は、新たな時代の精神的支柱となった太平道、
それに救いを求める人々の物語です。

「寺院以外に誰が助けてくれるんだ
政権は我々を助けてくれない」

真っ白な髭を蓄えた老人が語ります

「俺たちは、解雇された浪人なんだよ」

「わしらには張大師様しかいない」

他の浪人達も続けます

「今の三戦は、五石散中毒者と仕事のない若者で溢れているよ」

食事の合間には、着物や刀などが配られます

最近では、年金生活者も寺院を頼るようになりました

この寺院を訪れたBさん、80歳。

年金で生活していましたが、
物価が急に上がり、持病の漢方は勿論、その日の食費にもこと欠いています。

三戦の南にある共同庵がBさんの住まいです。
部屋は狭く、ここに妻と暮らしています。

Bさんは、学徒王朝時代、役所に務めていました。

退職後年金で暮らしていましたが、
今では年金制度も破綻しています。

「頭がおかしいと思われるかもしれないが、私は学徒王朝時代に戻りたい。
あの頃は、年金制度も機能してて老人も大切にされとった」

今では、太平道の寺院から貰った張角大師の像に祈る日々です。

急激に変化する社会の中で取り残された人々。

太平道寺院は、24時間相談を受け付ける手紙サービスを始めました。

信者からの相談の手紙は夜も絶えません。

「父が認知症です。夜中に学徒閣下マンセーと叫び出して寝られません」

「スレの過疎が深刻です、もう私しかいません」

「息子がツイッターに出て行ってしまいました 年老いた自分だけでは生きていけません」

……

学徒王朝の崩壊と、その後の急激な社会変動に、人々は病んでいきました。
そうした中、急速に力をつけていった宗教が太平道です

太平道は、かつて黄巾の乱を起こした宗教として、三戦に親しまれてきました

専門板の中で荒らしと対峙してきた歴代の自治厨王朝にとって、太平道は国家の基盤でした。
芸術や文化も、太平道の下で花開いてきました。

自治厨王朝時代、太平道は一貫して自治厨を支えてきました。
混沌とした三戦で荒らしを治め統治する為に宗教は必要不可欠でした。

しかし太平道の運命は、学徒王朝の成立で一転。
かつて黄巾の乱を起こした太平道を危険視した学徒王朝は「太平道は邪教である」として徹底的に弾圧します。

自治厨王朝が滅亡しその庇護を失った太平道はひとたまりもなく壊滅します。

人々の心は、学徒崇拝を掲げる学徒主義イデオロギーに染められていきました

しかし、学徒王朝の崩壊で、再び価値観の転換に迫られます。

はじめて自由を手にし、激しい競争に晒された時代。

社会には、荒らしやキチガイが蔓延。
人々を、喪失感が覆いました。

2013年、マホケンが首相に就任。
事態を重く見たマホケンは太平道に目を付けます。

三戦を挙げて太平道に力を注ぐ事を決定したマホケンは、大師から祝福を受けます。

政権の庇護の下、寺院は急増。
寺院の建設は今も続いています。

寺院は、心の空白を埋めようとする人々に手を差し伸べています。

かつての共同体「講」を復活。
定期的に集会を開き信者が様々な悩みを語り合います。

その中には、Qさんの姿もありました

Qさんは王朝時代、自治新党員として王朝を支えてきました。
しかし、王朝崩壊後それを受け入れる事が出来ずに五石散に浸る日々を送っていました。

そんなQさんが講に来るきっかけとなったのは、妻のRさんの説得です。

はじめは太平道を認めようとしなかったQさん。
しかし、Rさんの熱意に突き動かされ講に通うようになりました。

我々は、Qさん夫妻の自宅を訪ねます。
郊外の広めの一軒家がその邸宅です。

Qさんは笑顔で我々にこう語ります。

「私は党員として王朝に忠誠を誓った人間として、時代の変化を受け入れる事が出来ませんでした。
しかし、妻に説得されて講に行くようになってからは、五石散もやめられるようになりました」

「学徒王朝は滅びました。
しかし、我々は生きていかなければならないんです。私だけでなく、三戦国民皆がそうあるべきです」

そう語るQさんの部屋には、
学徒出陣の肖像画と張角大師の像が飾られている。

人々の心に闇を残しながら成長を続けるマホケンの三戦。

救いを求める人々に手を差し伸べる太平道
その膨張は、今も続いています。

第二回「膨張する太平道」 完

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最終更新:2013年04月26日 23:28