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第一話 胎動


『七勇者』と内藤というモンキーハンターが猿を倒し、その活躍が昔話となり、伝説になり、人々はすでに猿の存在を忘れ、国家同士が醜くも戦争を繰り返すようになっていた。
さらに時が流れ、国同士の戦も落ち着き人々が平和を手に入れた・・・かと思われた。

その平和は一時のまやかしに過ぎなかったようだ・・・

ユーレリア大陸の北東に位置するディパン帝国が周辺の国々へと突如進軍を始めたのだ、油断していた周囲の小国達は次々と帝国へと吸収されていった。
しかし、このような勝利が長く続くはずもない。
大陸の西側に位置する大国、フケガ王国が中心となりそのほかの国が連合を組み、立ち向かったのだ。
戦争はこれで決着がつく筈だったが、当初の予想以上にディパンの軍事力はすさまじく、戦線は膠着状態となり始めていた・・・


      そんな頃・・・
  人知れぬ場所で邪悪な意思が目覚めようとしていた。 ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
ここはマリアナ海溝の奥深く・・・そこに、一本の毛が漂っていた。

???「(・・・やっと、再生することができた・・・この俺をここまで追い込んだ奴は初めてだったか・・・なかなかたのしかった・・・しかし、もうその『七勇者』と内藤という奴は存在しない・・・チャチャチャ!少しつまらないことになるかもしれないが・・・地上をサルダイスに変える日が来るのも、そう遠い日のことではないだろう・・・チャチャチャッチャ!!!)」



第二話 異変


ここは、ディパン帝国、謁見の間。

朝日出「皇帝陛下、ご報告申し上げます。この度、起こりましたヴィルノア地方での反乱、我等が第08騎士団が完全に鎮圧いたしました。」

謁見の間の赤絨毯に片膝をつき、謁見の間の奥に座るディパン帝国の皇帝に恭しく頭を下げながらそう報告したのは全身を黒い装束で覆った一人の若い男性・・・
その腰には、拳銃が携えられ、背中のマントのふくらみから察するに何らかの巨大な武器を折りたたんで背中に担いでいるらしい。

皇帝(???)「おお、朝日出よくやった。ほめてつかわそう。」
朝日出「・・・ありがたき幸せ。(・・・最近皇帝陛下の顔色が悪くないか?それに、今度の反乱、あそこヴィルノアは今回の戦争で手に入れた土地というわけではない、明らかに民の不満が募っている証拠。だいたい、先の戦争、大義はこちらにはない・・・)」

――疑問に思ってはいけない。皇帝に仕える忠臣、十二騎士団が一人として、皇帝の命は絶対・・・
そうは思っていても、朝日出の内面から沸き起こる疑問を皇帝に尋ねて良いものか――そう考える気持ちが、報告を終えた後も朝日出をその場にとどめていた。

皇帝(???)「どうした?朝日出よ、まだ何かあるのか?」

報告が終わっても部屋から引かない朝日出に疑問を抱いたのか、皇帝は、怪訝な顔つきで問いかける。

朝日出「いえ・・・最近、陛下の顔色が優れないもので・・・病でもお召しになられましたか?」

正直、今回の戦争に疑問を抱いていた朝日出は、考えを反戦思想の考えを悟られまいと、ごまかした。
いいや、正確にはごまかしたつもりだった。
しかし、そのごまかしが、まさか事態の核心を突いていようとは・・

皇帝(???)「・・・気付かれたか・・・くっくっく。」
朝日出「はい?」

いつもとは様子の違う皇帝に、どう返事をすればよいか、言葉が浮かばない朝日出。
しかし、それは考えるだけ無駄だった。
なぜなら次の瞬間、

ウイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!
そう擬音語で表現するしか手が無い音とともに朝日出の体にまとわりつく黒い何か。
それは、皇帝よりはなたれていた。

朝日出「ぐっつ・・・がっ・・・体が・・何かに引きよせ・・ぐっ・・」

朝日出の思考は、パニックにより全く働いていなかったがこれまでの若くして得た数々の戦闘経験により体が先に動いていた。腰のホルダーに手を伸ばし、素早く銃を手に取ると、闇の発生元と思われる場所へと銃口を向け引き金を引いた。
ガゥン!!
乾いた銃声が鳴り響く。
銃弾が闇の発生源と思われる場所を貫いた。
闇は消えた。
朝日出はあわてて正面を確認する。
そこにいたのは、肩を押さえてうずくまる皇帝だった。

朝日出「陛下!?」

朝日出が叫ぶ。全く状況が理解できていない。その時、背後のドアが開きある人物が入ってきた。

???「陛下!今の銃声、それに謎の気いったいどうしたのです!?」
朝日出「・・・」

朝日出は目を丸くする。
ドアのところにいたのは・・・
   第01騎士団団長小川、ディパン最強の男。
今一番見たくない顔だった、仮にも朝日出はそのつもりがなかったとはいえ、皇帝を撃ったのだ。
反逆者に変わりはない。

皇帝「謀反だ・・・朝日出が裏切った・・・」
小川「何!?朝日出・・・貴様ぁ!!!」

次の瞬間、小川は跳躍すると朝日出の頭上を飛び越し、朝日出と皇帝の中間地点に立った。その時皇帝は自分の肩に手を当てた。驚くべきことにその手を外すと、傷が完全に癒えていた。

小川「貴様!ディパンに背いたこと覚悟するがいい!!」
朝日出「ちっ!」

朝日出は銃を構え、引き金を絞る。
ガゥン
カラン
しかし、飛び出した銃弾は小川に到達する前に地に落ちていった。

朝日出「なんだと!?」
小川「陛下、伏せていてください。」
朝日出「くそ!!」

ガゥン!ガガゥン!!
カランカランカラン!
手ごたえはある、しかし銃弾は小川に到達する直前に壁のようなものに遮られているようだ。

小川「裏切り者には死を・・・邪眼を開放する。」

小川がそうつぶやいた次の瞬間、小川を中心として凄まじい衝撃波の嵐が吹き荒れる。

朝日出「ぐわああああああああああああああ!!!」

重い衝撃波が、朝日出を襲う。
朝日出は吹き飛ばされ、城壁を突き破る。
朝日出は見ていた。皇帝が肩に手を当て、傷をいやしたとき、そこに自分を襲った闇があったことを・・・
この時すでに朝日出は確信していた。皇帝が何者かに操られていると。
と同時に、朝日出は自分の意識が遠のくのを感じていた。



第三話 別了

吹き飛ばされた朝日出の姿は次の瞬間には消えていた。
なぜ消えたか、皇帝の側近である者ならば誰もが知っている。
これが小川の力であると。

皇帝「小川・・・反逆者の始末、済ましたようだな。」

皇座からゆっくりと赤絨毯が引かれた階段を歩み降りながら、静かな声で小川に語りかける皇帝。

小川「はい、・・・陛下、それよりお怪我は?」
皇帝「朝日出は私に向かって発砲したが、焦っていたようだ。弾丸は外れた。」
小川「そうでございますか、お怪我がなくて何よりです。」

この時、小川は僅かに疑惑を感じた。
朝日出がいかなる状況におかれていようと弾丸を外す事はないと知っていたからだ。
しかし、皇帝に忠誠なる騎士である小川は、皇帝に疑問を感じたことを恥、次の瞬間には疑惑は消えていた。

皇帝「それで・・・奴をどこへ飛ばしたのだ?」
小川「異空間の彼方へ・・・」

皇帝の問いに小川は静かな静かな・・・低い声で答える。
その口調はまるで小川が自ら発する言葉を一語一句かみしめながら話しているようでもあった。

皇帝「そうか・・・未来永劫出てくることは叶わない空間・・・さすがだ。」

小川のその言葉に皇帝はまるで自らのことを誇るような口調でそう言った。

小川「お褒めに頂くほどのことではございませぬ・・・。」

空間を自由に操る・・・これが小川の誇る邪眼力の一つ、彼が騎士団最強の男である訳だ。

皇帝「フケガオ王国との戦争も近い・・・お主の力は我も存分に期待しておる。」
小川「ハッ・・・ご命令とあらば今すぐ死地へでも赴きます・・・」
皇帝「では小川よ、そろそろ下がってよいぞ。」

小川の返事に皇帝は満足げに微笑すると、そう小川に達し、自らは階段を上る歩みを進めた。
いくら自らの直属の部下とはいえ、配下の者に背を向けるような皇帝はいないであろう・・・しかし、小川に対し行ったその行動は、皇帝の小川に対する全幅の信頼を示すものあったのだ。

小川「ハハァッ!!」

皇帝の後ろ姿に深く頭を下げると、小川は謁見の間を後にした。
しかし、小川は皇帝に一つ嘘を付いていた。
だが、この事については、自負心はない。
いくらなんでも小川には戦友である朝日出は殺せなかったのだ。

小川「(朝日出よ・・・許せ。お前の反逆の理由は知らずともこうするしかなかった。いや、仮にお前が反逆をしていなかったとしても、皇帝を敵に回した時点で、帝国騎士団としてのお前は死んでいたのだ。・・・お前の記憶は消した。新たな人生を歩んでくれ・・・。)」

―さらばだ・・・第08騎士団長・・・朝日出!!―

小川は今は友と呼べぬ、かつての戦友に心の中で静かに別れを告げると小川は皇帝の間から、下階へと続く螺旋階段をゆっくりと降りて行った・・・



――――――――――続く・・・
最終更新:2008年01月11日 18:20