【12月25日 夜】
内藤「・・・どうだったお?」
しゅっ・・・
男「・・・え?」
・・・ぱしん!しゅっ・・・
内藤「ばーぼんはうす・・・行ってくれたんだお?」
・・・・ぱしん!
男「あ・・ああ・・いい思い出が作れたよ・・・」
内藤「そうかお・・・よかったお・・・」
男と内藤は、誰もいなくなった畑で小さな外灯の光だけを頼りに
雪をボール代わりにキャッチボールをしていました。
男「・・・いい所だった・・・ありがとうな・・・・」
内藤には・・・本当に・・本当に感謝している・・・
あの日、マスターがいなくなった後、サトリは俺に・・・いままで家族に
しか言えなかった、サトリのお母さんの家系に続いている秘密を俺にゆっくり
と・・・全部話してくれた・・・・
それを聞いてびっくりしなかったと言えば嘘になる。
それはそれはびっくりしましたよ。ええ。
そんなコトより、真っ先に俺の頭に思い浮かんだのは、あの日
サトリが俺の前で始めて泣いたあの日・・・その原因をつくったのが、
俺の言った何気ない一言だったんだってコト・・・
サトリ「・・・ううん・・・ちがうの・・・男君は・・・なんにもわるくないの・・・」
俺の胸の中でサトリは、俺の顔を見ながら申し訳なさそうに言った。
ああそうか・・想いが全て見えるのだから・・俺はサトリに口から誤らなくても
伝えることが出来るんだ・・普通の人なら、いや、昨日までの俺なら・・・
こんなこと嫌がっていただろう。
でももう違う。サトリはもう俺の大切な・・大切な恋人だから。
俺が一生守ってやるって、漫画みたいなくさいセリフを恥ずかしげもなく
言えた大切な恋人だから。サトリの力のおかげで、俺達二人は・・
世界中の誰よりも愛し合えるんだ。素直にそう想った。
もちろん、サトリに伝わるようにね。
サトリ「・・・/////」
サトリの体は震えていた。マスターから俺がサトリに伝わらないように
助言をされたように、サトリにも何か伝えられたらしいが、それでもサトリは
震えていた。
だから俺は、その震えを止めてやろうと思いっ切りサトリを抱きしめた。
昼間・・・サトリがしてきたように。
男「サトリ・・・ありがとう」
サトリ「え・・・・?」
男「俺・・・お前のこと一生大事にする。」
サトリ「・・・」
男「一生守っていくから・・・・」
サトリ「・・・うん。」
妹よ、すまない。お前との約束全然守れんかった。
俺はサトリを・・・今日一日だけで3回も泣かしちまった。
男「・・・泣き虫。」
サトリ「・・・ぐすん・・・いぢわる・・・」
男「・・・大好き。」
サトリ「・・・・うん」
ぎゅう・・・・
なんか・・人に見られている気がするけど、そんなことどうでもいいや。
今はただ、サトリを抱きしめていたい。
サトリから伝わってくる感覚を通して、サトリもおんなじことを考えているのが分かった。
ぱしぃん!
男「へぶっ!!」
内藤「・・・何をぼーっとしてるんだお?」
男「ぺっぺっ!おまwww顔にぶつけんな!」
内藤「ぼーっとしている男が悪いんだお!」
男「だからってお」
ぱしぃん!
男「あらばっ!」
内藤「フフフ・・・隙だらけだお!」
男「てめ!!このやろ!」
内藤「・・・マスターは・・」
男「へ?」
内藤「・・・マスターは元気だったかお?」
男「え・・あ、うん、お前のこと心配してたぞ。」
内藤「・・・・そうかお・・・」
男「たまには顔みせてやれよ?マスター寂しそうだったぞ?」
内藤「・・・だめだお・・・」
男「え?」
サトリ「おーい!」
男「あ・・サトリ・・」
サトリとしぃが、コンビニから帰ってきました。
サトリ「はい!コーヒー買って来たよ!」
男「あ、うん、ありがとう・・・」
しぃ「サトリはね?男君に暖かいコーヒー飲んでもらうんだって、ずっと
そのコーヒー胸にしまってたのよ?」
男「へぶらっ!!!!」
サトリ「!!!!ち、ちょっとしいちゃん!!!」
しぃ「うふふ・・・・あらごめんなさい。内緒だったわね。」
男「・・・」(サトリの・・胸・・・・・はっ!)
サトリ「//////」
しぃ「うふふ・・・・」
男「・・内藤ー!なにしてんだよ?こっちこいよー!」
内藤「・・いまいくお!」
内藤「・・・・」(ぼくはもう・・・ばーぼんはうすにはいけないお・・・)
内藤は、サトリやしぃに心が見えない距離でそう思いました。
男「はぁ・・・あったかい・・・・」
サトリ「・・・・うん」
しぃ「・・・なんだかあなた達・・・急に見せ付けるようになったわね・・・」
サトリ、男「!!!!いや!!あ、その・・・・」
しぃ「うふふ・・・・照れない照れない・・・・」
内藤「僕にもなにか暖かいものくれお!」
しぃ「あら?内藤君・・・はい。」
内藤「ありがとうだお。」
内藤は、しぃから暖かいお茶を受け取った。
しぃ「内藤君のは、私が責任もって暖めておきました。」
男「ぶっふぉん!!!!」
サトリ「!!!しぃちゃん!?」
しぃ「うふふ・・・」(嘘よ嘘・・・)
男「・・・」(しぃさんの・・・胸・・・あ!)
サトリ「・・・・ぷぅ・・・」
男「あの、これは・・その・・・・」
内藤「?いただきますお!」
しぃ「・・」(あら・・・この子面白くないわね・・・)
内藤「ふう・・・あったかいお・・・しぃさんありがとうだお!」
しぃ「!あ・・・それはどうも・・・」
男「?」
サトリ「・・・」(ふふ・・・内藤くんが素直に喜んでくれたからしぃ喜んでる・・・)
しぃ「!!」(・・なにいってんのよサトリ・・・・私は年下には興味ないわ・・・)
サトリ「はいはい・・・」
男「ん?」
内藤「お?」
しぃ「・・・しかし、今年の冬は本当に寒いわね・・・・」
男「そうですね・・・」
4人は、もう時間もおそいので家に帰るために帰路についてました。
内藤「今年は例年にくらべても、特に寒いってにゅー速で言ってたお!」
サトリ「へぇ・・そうなんだ・・・」(・・・速?)
サトリ「あ!そうだ・・・ねえねえ男君知ってる?」
男「ん?なに?」
サトリ「息ってね、ふーって吐くと白くならないけど、はぁーって吐くと白くなるんだよ?」
男「へえ・・・どれどれ?」
そう言うと男は、サトリの顔へ息を吹きかけました。
男「ふーっ」
サトリ「きゃ!・・・男君?・・・」
男「本当だ・・赤くなった。」
サトリ「な・なにいってんの・・・ちがう///」
男「へへ・・・」
しぃ「・・・・」(なんだかだんだん腹が立ってきたわ・・・・)
しぃ「だけど、本当になんでなんでしょうね?はぁーっ・・・」
内藤「はぁーっ」
しぃ「あら・・眼鏡が曇っちゃった・・・」
そう言うと、しぃは眼鏡をはずした。
しぃ「いやぁね・・・すぐ曇っちゃうんだから・・・」
その時、俺は自分の目を疑った。
しぃさんの眼鏡をとったその美しい顔は・・・
内藤「・・・お母さん・・・」
しぃ「・・・・?え?」
内藤「あ!・・・なんでもないお!・・・」(お母さん・・・そっくりだお・・・)
しぃ「!!」
そう。本当にびっくりした。眼鏡をとったしぃさんは・・・内藤のお母さんにそっくりだったんだ。
しぃさんとサトリの髪は、日本人形のようにとても美しい色をしている。
それに比べ、内藤はどこか異国の人のような、こちらもとても美しい金色の髪だ。
そんな対象的な色のせいか、こんなに似ているのに、今この瞬間まで・・全然気づかなかった。
サトリ「・・・」(へぇ・・・そうなんだ・・)
サトリもどうやら気が付いたようだ。いや、別に心が読めなくとも、
さっきの内藤のリアクションをみれば、だれでもわかる。
しぃ「・・・私がお母さんに似ているの?」
べつに触れなくてもいい問題だったのに、なんとしぃさん本人が聞きだした。
これにはびっくり。
内藤「あ・・その・・・」
しぃ「・・似ているのね?」
内藤「・・・・」
しぃ「・・・そう・・」
それからしぃさんは、内藤の家につくまで・・・眼鏡をかけなかった。
内藤「じゃあ・・皆気をつけて帰るんだお。」
男「お、おう。」
サトリ「おやすみなさい、内藤君。」
内藤「おやすみだお。」
しぃ「・・・」すっ・・・
内藤「!!!あ・・」
しぃさんは、家に入ろうとする内藤の手をとるとこう言った・・
しぃ「・・・私には?」
内藤「え?・・・・その・・・」
しぃ「・・・・」
内藤「・・・おやすみなさい・・・」
しぃ「・・・はい。おやすみ。」
サトリ「・・・」(しぃ?)
男「・・・・」
サトリ「・・・・」
内藤と別れてから、俺達三人は線路に沿った道をゆっくりと帰っていた。
しぃさんは、俺とサトリの少し前を、後ろに手を組んで歩いていた。
しぃ「・・・ねぇ、男君?」
男「あ、はい?」
しぃ「内藤君のお母さん・・・どんな人だったの?」
男「え・・・?」
サトリ「・・・・」
男「・・・とってもやさしくて・・・綺麗で・・・」
しぃ「うん・・・それで・・・」
男「・・・内藤とすっごく仲が良くって・・いや、親子だから当たり前かも
知れないんですけど、でもなんだかとっても幸せそうで・・・」
男「俺があの親子を見かけた時は、いっつも手を繋いでましたね。
しぃ「いまのあなた達のように?」
サトリ「・・・!!」
男「・・・」
ぎゅっ・・・・
サトリ「!!・・//////」
しぃさんは俺から内藤の母親コトを聞きだすと、ゆっくりと話し始めた。
しぃ「・・・内藤君が・・・・私のことをお母さんって言ってくれた時、なんだか
とっても懐かしい気持ちになったの・・・」
サトリ「しぃ・・・」
しぃ「サトリはもちろん知っているけど、私もね・・・お母さん・・もういないの。」
男「え・・・」
しぃ「もう男君も、私達の秘密を知っているのよね?」
男「・・・・はい。」
しぃ「ああ・・・やっぱり・・ごめんね?本当は私・・サトリには・・・
喋らなくてもいいわよ?って言ったの・・・・」
これは知っていた。サトリから聞いたわけでもないが、サトリのコトを思えば
それが最善の手だっただろうし、いままでサトリのご先祖様もおそらくそうして
来ただろう。こんなやっかいな力でも、しゃべらなければなんら問題ないことなんだし・・
おそらくこんなに早く打ち明けられたのは、俺が最初だと思う。それだけ、
サトリと俺の関係は、深くつながっている・・・
しぃ「私もね?サトリが大好きだから、サトリにこれ以上傷ついてほしくなかったから・・
そうしなさいって言ったの。でも、完全に私の間違いだったわ。」
サトリ「・・・・しぃ・・・・」
自然と、私の男君の手を握る力は強くなっていた。今日、ここでこうやって
男君と手を繋いでいられるのも・・・私一人の力だけじゃなく、しぃちゃんが
・・ううん。しぃが私の背中を押してくれたお蔭でもあるんだ・・・・
そのしぃちゃんが・・・私達に・・いえ・・男君に何かを伝えようとしている。
【12月25日 夜②】
私は何故こんなことを話し出したのだろう?
男君には、なんだかとても不思議なものを感じる・・・サトリが
初めて心を許した人だから?もしかしてこれは、サトリと男君に対する
嫉妬心?それとも・・・・
何はともあれ、内藤君にお母さんと言われてから私は自分の中に得体の知れない
感覚が生まれたのを感じた。
その感覚はなんだか懐かしくって・・・温かくって・・・でも・・・・
私にはいらない物だと思ったの。だから・・・その感覚を消し去ってしまおうと
話す必要のない話を言い出したの・・・。
しぃ「私のお母さんもね?サトリだったの・・・」
サトリ「・・・・」
しぃ「・・・サトリの力はね?女の子にしか遺伝されないの。」
しぃ「私のお母さんもお父さんも、そんな厄介な能力のせいで、お母さんが
お父さんに秘密を打ち明けたとき・・・・二人はとても悩んだそうなの。」
男「え・・・?」
しぃ「二人のこれからを。・・・その時はまだ、私はお母さんのお腹にはいなかったし、
私のお父さんは・・・・サトリのお父さんや、男君みたいに・・・強い人ではなかった。」
サトリ「・・・しぃ・・・」
しぃ「サトリにも教えてなかったけど・・・私の両親は、そこで別れたの。」
サトリ「!!・・・」
しぃ「驚くことでもないわ。あなた達には・・分からないかも知れないけど・・・
人間の関係って言うのはね?案外簡単に崩れるものなの・・・・」
・・・しぃの様子がおかしい・・しぃはあの時・・・私が家で泣いた時・・・
私のコトをやさしく抱きしめながら、私のお母さんの話をしてくれた・・・
そのお話は、傷ついていた私の心を優しく包んでくれて・・人間の愛し合う絆の
強さを私に教えてくれた。
そんなやさしいコトを教えてくれたしぃが・・・まったく逆のことを話そうとしている・・
しぃ「・・・それからね?お母さんは実家に帰って、田舎の小さな家で
ひっそりと・・誰ともかかわることなく暮らししていたの・・・」
しぃ「そのことをお母さんに聞いたら、あの時ほど寂しいと・・・
自分の力を・・存在を怨んだことはなかったっていっていたわ。」
しぃ「そんなある日・・・・お父さんから一通の手紙がお母さんのもとに
届いたの。その手紙には・・・たった一言・・・すまないとだけかかれて
たんだって・・・」
男「・・・」
しぃ「それから二人は、奇妙な文通を始めたの・・・ついこの間まで愛し合っていた
二人が離れ離れになって手紙でお互いの気持ちを伝え合う・・・それは
ふつうなら笑われるようなことかもしれないけれど、二人には・・・
そうすることでしかお互いの本当の想いは伝えられなかったの。」
それもわかる。手紙ならば、心の中を読まれることもない。誰も傷つくことはない。
もしかしたら・・サトリがまだ臆病で、俺もまた、サトリのことを人並みにしか愛していなかったら
そうしていただろう・・・でも・・・・
しぃ「でも・・・二人の気持ちはどんどん膨らんでいって・・・・
お母さんも、お父さんも・・・・会ってしまえばお互いが傷ついて
しまうのはわかっていても・・・その気持ちは抑えられなくなっていって・・・」
しぃ「ついに二人は、もう一度、二人の思い出の場所で出会うことにしたの・・・
その場所がどこかは私には教えてくれなかったけど、二人はそこで・・
もう一度、はじめからやり直そうと約束した・・・」
男「・・・わかります・・・たとえお互いが傷ついてしまおうと・・・
愛し合うことは・・・やめられない・・・」
そう言うと俺は、しぃさんが目の前にいるにもかかわらずサトリをまた俺の胸に沈めた。
サトリ「ちょ・・ちょっと男君・・・恥ずかしい・・・」
サトリが照れている・・・そりゃあそうだ。いくらサトリが俺を好いていてくれても、
こんなに堂々と抱かれたら誰だって嫌がるさ。それでも俺はサトリを離さない。
しぃさんの話を聞いているうちに、なんだかサトリまでどこか遠い所に行ってしまいそうだったから・・・
ああ・・・今日の俺はどうかしてるよ・・・本当に・・・・
しぃ「くすくす・・・あなた達は本当に見せ付けてくれるわね?もう・・やんなちゃう・・・」
サトリ「うぅ・・・」(でも・・・なんだか・・・・落ち着く・・・・はぁ・・・)
しぃ「くすくす・・・」(いいのよサトリ・・・あなたは今まで・・ずっと一人で苦しんできたんだから
・・・今は男君にあまえてなさい・・・)
しぃ「それから二人は、また一から思い出を作り出した。こんどはお父さんも
お母さんに素直な思いを伝えるようにして、お母さんもその想いに出来るだけ
はっきり答えるようにして・・・・」
気が付けば、私達はもうしぃの家の前にまで到着していた。
しぃ「二人は何度も、何度も喧嘩してそのたびにおたがいの絆を深めていき・・・・
いつのまにか、お互いが互いに必要に思えるような・・・もとの愛し合う二人に
もどれたの・・・・」
しぃ「不思議だったんだ・・・なんでなんであんなに私の両親は仲がよかったんだろうって・・・
その話を聞いたとき、初めて二人で大きな障害を越えたおかげで、深く深くお互いを
愛せるようになったんだなあって気づいたの。だから私は、あなた達二人にも同じように
ゆっくりお互いを愛していってほしかったんだけど、余計なお世話だったみたいね?」
男「はい。俺達二人はもう・・・たとえ神様が二人をバラバラにしようとしても,離れることは出来ませんよ。」
サトリ「・・・・うん///」
しぃ「ふふ・・・わかってるわよ。」
しぃ「そしてわたしのお母さんは私を身篭ったの。お父さんも、私が生まれた時
泣いて喜んでくれたって・・・・」
しぃ「でもね・・・・そんな二人に・・・・突然別れが訪れた・・・」
サトリ「しぃ・・・・」
しぃ「私のお母さん・・・元からそんなに体の丈夫な人じゃなかったの・・
私が小学生のころに・・・お母さんは病気で死んじゃって・・・」
しぃさんは遠くの空を見つめながらそう言った・・・
しぃ「・・・とっても・・・悲しかった・・・・」
サトリ「・・・・」
サトリはまた涙目になっていた。ホントにこいつは泣き虫なんだ・・・
しぃ「もう私も大人だから・・・気持ちの整理はついていたから・・・
こうやってお母さんのことを思い出すのも・・・・」
しぃさんの目には、うっすらと一粒の涙が流れていた。
しぃ「・・・さっきね?内藤君が・・・私にお母さんって言ってくれたとき・・・
ふっとお母さんの顔が思い浮かんで・・・あはは・・なにいってんだろうね?
私・・・とっても懐かしい気分になったの・・」
しぃ「内藤君も私も・・・・大切な大切な・・・お母さんがもういないから・・・
そんな悲しい共通点が私をこんな気持ちにさせたのかな?・・・・あ・・
ごめんね?・・私・・・何を」
サトリ「・・・!」
サトリは、俺の腕から離れて、しぃさんのところまで走っていき、文字どうり
しぃさんに抱きついた。
しぃ「!!や、やだ!なに?サトリ?」
サトリ「しぃちゃんは・・私の大切な家族だから!これからも大切な家族だから!」
しぃ「な、何いってんの・・・」
サトリ「私は・・・もう・・・男君のおかげで寂しくないから・・・今度はしぃちゃんが
私に甘えていいから!・・・」
しぃ「・・・サトリ・・・・」
しぃさんはおそらく、俺とサトリの姿に両親の影を重ねていたんだろう。
心から祝福してくれていたんだろう。・・・そのうちに大好きだったお母さんや
親子三人の懐かしい思い出が甦ってきて、それが内藤の一言で溢れ出したんだ。
サトリ「もう私は寂しくないから・・・」
しぃ「・・・ふふ・・・本当に・・・サトリは可愛い子ね・・・・」
しぃ「さてと・・・それじゃあ二人とも、さっきは変なこと言ってごめんね?」
男「・・・」
サトリ「・・・・」
しぃ「男君?サトリをどうか・・幸せにしてあげてね?」
男「もちろんです・・・」
しぃ「サトリも・・・ちゃんと男君を捕まえておくんだよ?」
サトリ「うん・・・」
しぃ「それじゃ・・・もう遅いから・・・・おやすみなさい・・・」
男、サトリ「おやすみ・・・・」
しぃさんは家の中に入っていった・・・
【12月25日 夜③】
しぃさんと別れた後、俺達二人も家を目指して歩いていた。
サトリ「・・・あ!ねえねえ男君!」
男「ん?どうした?」
サトリ「公園!よってこ!」
サトリの指差す所に、小さな公園があった。
サトリ「男君!押して押して!」
サトリはブランコに座ると、子供のような表情で俺にそう訴えかけてきた。
男「はいはい・・・」
キィ・・・
キィ・・・
男「・・・なあサトリ・・・」
キィ・・・
キィ・・・
サトリ「なぁに?」
男「なんだか・・・いろいろあったな・・・この数日で・・・」
サトリ「・・・・うん・・・」
男「・・・これから・・・ふたりでいろんな思い出作っていこうな・・・」
サトリ「うん・・・」
キィ・・・
キィ・・・
タッ!
サトリがブランコの揺れる力を使ってちょっとだけジャンプした。
サトリ「ねえ!男君!」
男「なんだ!」
サトリ「私ね!・・・まだ男君に秘密にしていることがあるんだ!」
そう言うとサトリは俺から少し距離を置いた。
男「なんだよ?まだなにかあるの?」
サトリ「おしえてほしい?」
男「もちろん。」
サトリ「じゃあ・・・」
サトリは両手を思いっ切り広げてこういった。
サトリ「はぐはぐ!」
男「・・・?え?」
サトリ「・・・もう一回・・・私を・・・・ぎゅーって・・・」
男「・・・・」
ゆっくり・・・おれとサトリの距離は近くなる。
男「何回目だっけ?」
サトリ「何が?」
男「・・・俺がサトリを抱きしめるの・・・」
サトリ「・・・今までで・・・三回・・」
男「じゃあ・・・四回目!」
ぎゅう・・・・
サトリ「えへへ・・・」
男「さあ・・・・約束は守りましたよ?最後の秘密を教えてください・・
俺の小さなお姫様・・・」
サトリ「・・・うん・・・あのね・・・・」
サトリ「私のね・・・私の力は・・・・お母さんやしぃちゃんたちのそれとはちょっとちがうの・・・」
男「え?・・・・」
サトリ「お母さんやしいちゃんは・・・周りの人皆のことが分かるんだけど・・・」
男「・・それが・・・サトリの力なんだろ?」
サトリ「私はね・・・・私は・・・」
サトリ「愛する人の考えしか分からないの・・・」
男「え・・・・」
これは驚きだ。俺はてっきり・・・サトリは皆の考えが分かるものだとばっかり思っていた。
サトリ「私はね・・・前から・・・男君のことが好きだったの。」
男「・・・・」
サトリ「だからね・・・家族以外で・・・初めて男君の心が見えたとき・・
本当にびっくりして・・・・でもそれが逆に怖くなって・・・」
男「サトリ・・・・」
サトリ「でもね?男君は・・私がお弁当あげたり、傘貸してあげたり、
私が何かするたびに頭の中では私にありがとうって言ってくれてて・・・」
サトリ「それがずぅーと・・・私の中で響いてて・・・いつしか頭の中は男君でいっぱいに
なってた・・・」
男「・・・俺の心・・・」
サトリ「だからね?私はそれを男君に伝えれたんで・・・すっごく嬉しいの・・・
もう・・・一人で苦しむこともないんだなぁって・・・」
男「・・・じゃあ・・・俺は・・・サトリに思いが伝えられる・・・家族以外の・・・」
サトリ「ちがうよ・・」
男「え?」
サトリ「男君は・・・・もうわたしの・・・か」
男「あ!たんま!」
俺はサトリの口を指で優しく塞いだ・・・
サトリ「んぐ!・・・ぷはぁ・・・なんでー?」
男「それは・・・俺に言わしてくれないか?」
サトリ「あ・・・・うん////」
雪の降る小さな公園で、俺はサトリにこういった。
男「サトリは・・・俺の大切な・・・」
サトリ「うん・・・」
男「大切な・・・・大切な家族だ!」
ぎゅう・・・
サトリ「・・・男君・・・」
ぎゅー・・・
サトリ「・・・・だぁいすき・・・・」
男「・・・うん・・・俺も・・・」
男「・・・・・」
サトリ「・・・・・・」
俺はこの数日で・・・サトリを五回泣かした。
サトリに四回抱きついた。
そして・・・・
この寒空の下でサトリのやわらかい唇に一回目のキスをした。
さとり・男編終了