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【12月27日 昼】


荒巻「うわぁー!なつかしー!」
内藤「ここは・・・なんにも変ってないお・・・」
男「ああ・・・昔のまんまだ・・・」

内藤、男、荒巻の三人は思い出の学校に到着しました。
そこでは、ちょっと古くなった校舎や体育館、鉄棒、鯉が泳いでいる池
卒業生の作った花壇が色あせることなく三人を迎えてくれました。

男「おい!あれ!見てみろよ!」
荒巻「おー懐かしいな・・・」
内藤「?なんだお?」

男の指差す先には、大きな銀杏の木がありました。
男「覚えてるか内藤?お前がこの木に登って・・」
荒巻「俺達がやめろって行ったのにお前てっぺんまで登りやがって・・・」
内藤「・・・・斉藤先生に助けてもらったお・・・」
男「内藤思いっきり泣いてたよなwwwwwだからやめろっていったのにwww」
荒巻「こわいおー!こわいおー!とかいってさwwwwwwそんでその後
   斉藤のヤローに思いっきりどつかれてたよなwwww」
内藤「斉藤先生がいなかったら・・・本当に落ちて死んでたかもしれないお・・・」
荒巻「はははwwww・・・あ!みろよ!」
男「ん?」


次に荒巻が指差すほうにはグラウンドがありました。
荒巻「ほら、あそこ・・・」
内藤と男が目を凝らしてみると端のほうに野球のボールとバットが
あるのが見えました。
荒巻「久しぶりにさ・・・な?」
男「お・・・いいな・・やるか!」
内藤「お!また荒巻の魔球が見られるのかお!?」
荒巻「おう!お前らにこの荒巻様の熱意あふれる投球をみしてやんよ!」
三人はグラウンドまで走っていきました。
その目はもう・・・幼いころの・・・やんちゃな少年の目に・・・


ゴゴゴゴ・・・・

マウンドに立つ荒巻から、圧倒的なオーラがでています。

荒巻「ふふふ・・・・男よ・・・俺はもう昔の俺じゃないんだぜ?
   もうお前に俺の球は打てねえ・・・・」
男「ふん・・・笑わせんじゃねーよ・・・いくら頑張ったって、お前じゃ俺を
  抑えることなんてできやしねぇよ!」
内藤「荒巻!僕がちゃんと捕るから思い切り投げるお!」
荒巻「ふふふ・・・内藤!お前も油断して、俺の球落とすんじゃねーぞ!」
男「しゃあ!こいっ!」
荒巻「ぬおおおおお!いくぞ!」


この三人は小学校時代、同じ野球チームに入っていました。
荒巻は、平成の生んだ怪童とまで言われた先発の柱
男は小学生最強の不動の四番
内藤は天性のリード力と並外れた骨格をもつ菩薩のキャッチャー
と、それぞれがなんだかありえないあだ名をもっており、この三人の力で
チームはリトルリーグ日本一にまで成しあがりました。
その後、荒巻は転校し、男は「飽きた」という理由から野球を辞めて、内藤は
・・お母さんが死んでしまったショックから・・・野球から遠ざかっていました。

その三人が・・・今まさに・・・思い出の詰まったグラウンドで再び勝負しています。


内藤「えーと・・・確か今までの成績は・・・・」
男「荒巻が25勝で俺が24勝・・・俺の負け越しだな・・・」
荒巻「ふはは!そのままさらに一勝分リードしてやるよ!」
男「ほざけ!いいからさっさと投げて来い!」
荒巻「・・・・・」

荒巻は静かに振りかぶり・・・あの村田兆治を思い出させるようなまさかり投法で
思いっきり内藤めがけて白球を投げました!
シュッッ!!
男「!?」
ズバーーーーーン!!
内藤「!!!!!」
シュゥゥゥゥゥ・・・・・


男「な・・・何だ・・・今の球は・・・・・」
内藤「ま、まさかいまのは・・・・」
男「!?知っているのか内藤!?」
内藤「今の球はまさしく・・・あの野球漫画の最高峰・・・ドカベンにでてくる男の中の男・・・・土門・・・土門剛介!!??」
男「!?」
内藤「自分の球を取れるキャッチャーがいないからと、藁人形相手に投げていた土門の超重量ストレートそっくりだったお・・・
   あのオールスターで・・・九人連続三振を打ち立てたストレートにそっくりだお・・・僕じゃなかったら手が潰れていたかもしれないお・・・」
男「な・・・」(なんてマニアックな・・・・もはや意味すらわからねぇ・・・)
荒巻「ははは!どうした男!?驚きすぎて声もでないか!?無理もないさ・・今のストレートを打てたやつなんて一人もいないからな!」
男「何を!?」
荒巻「だが安心しろ!お前にはもう今のストレートは投げないでやるよ!」
  (・・・やべえ・・・張り切りすぎてもう肩が・・・・ぬお・・・)
男「な!?なめてんのかてめえ!?」
荒巻「ふふ・・・そんな台詞はこの球を打ててから言ってみな!!」
ザッ!!
内藤「・・・!!」(あのフォームは・・・・まさか!?)


荒巻は現役時代の阪急ブレーブスの怪童、山田久志を彷彿とさせる美しい
サブマリン投法からゆったりとした高めのストレートを放った!
男「?なんだぁ?こんな遅い球で俺を打ち取ろうってか!?なめんな!」
男のバットは荒巻の放ったボールを正確に捕らえにいった!しかし・・・
荒巻「ふっ・・・甘いわ!」
クイッ!
ストーン!!
内藤「!!?おっと!」
男「なにぃ!?」
ブーーーン!!
男のバットは乾燥した音とともに、風だけを切った・・・
男「な・・なんだ・・・今の球・・・・ありえない角度で・・・落ちた?」
内藤「ま・・・まさか今の球は・・・・」
男「!?しってるのか内藤!?」
内藤「今の球はまさしく・・・・あのベースボール漫画の教科書・・・ドカベンの明訓高校の永遠のエース・・・里中智!?」
男「何ぃ!?」
内藤「明訓高校の黄金期をその小柄な体格で文字どうり支えた、七色の変化球をもつ男里中・・・
   その里中がプロ入り後初めてのオールスター戦であのにしこり(松井)をもうならせた秘球
  「スカイフォーク」・・・それを・・・投げれる人間がいたなんて・・・荒巻・・・・お前はどこまでいくんだお!?」
荒巻「ははは!この俺様は日々成長し続けるのさ!」(まさか・・・あそこまで曲がるとは・・・俺すげぇ・・)
男「いや、内藤・・・お前もよく捕れたなそれ・・・・」
内藤「この僕に捕れない球はないお・・・」
荒巻「さあ!男!!!これで最後だ!貴様のスコアブックは三振で試合終了だ!!!!!」
ザッ!!グオオオオオッ!!
男「うお!?・・なんだ!?・・・吸い込まれるっ!?」
内藤「!?ままままさか!あのフォームは!?」



ラスト三球目・・・荒巻の最後の投球ホームは・・日本野球界が産みとした天才ピッチャー・・ドクターK
こと、野茂英雄そっくりのトルネード投法!
男「う・・うおおお・・・・なんだっ・・この気迫はっ!?」
内藤「まるで・・・まるで僕らのいるこの空間が荒巻に吸い込まれるみたいだお!!」
荒巻「おりゃああああ!!くらええええええ!!!」
シュッ!!

男「!!」
内藤「!?」
荒巻「あ」



ゆる・・・・

男「な・・なんだこの球!?おせぇ・・・」
内藤「・・・まさか!?あの球は!?」
男「な!?しっているのかなry」
内藤「この球は・・・あの日本の野球少年のバイブル・・・ドカベンの山田太郎永遠のライバル・・・不知火守!?」
男「なにいいいいっ!?」
内藤「一度も甲子園の土を踏むことはなかったが・・・神奈川県最強のピッチャーと言われ、幾度と無く明訓ナインの
   前に立ちはだかった男・・不知火守・・・その不知火の剛速球や変化球に加わり・・ハエが止まるとまで言われる
   魔球「超遅球」!?だめだお!男のタイミングは完全にずらされたお!」
荒巻「!?は・・・ははは!!どうだぁ!?打てるものなら打ってみろぉ!」
   (完全にすっぽ抜けただけなんだがなぁ・・・)
男「・・・・ふん!なめるなああああ!俺はまったく動じぬぞおおっ!」
ザシュ!
男「おりゃあああああっ!!!」
内藤、荒巻「「なにいいいいいいいいいいっ!!!!??」」

グワラゴワガキーーーーーン!!!

内藤「はっ!?この打球音は・・・岩城!?」
男「どうううううだあああああっ!!」

男の放った打球はどんどん伸びてゆき・・・・・


ガシャーン!!


男「あ」


男「・・・やっべ・・・」

男の打球は校舎まで伸びていき、四階の窓ガラスを割ってしまいました。

荒巻「・・・」
内藤「・・・」
男「・・・・どうしよう・・・」
荒巻、内藤「「逃げよう」」

その時・・校舎から一人の男性教師が出てきました。

斉藤「くぉらあああ!?だれじゃああああ!!!」
荒巻「げ!?斉藤!?まだここにいたのかよ?」
内藤「あ!斉藤先生!!」
男「ちょ!?内藤!!」

内藤は、斉藤先生のほうに走っていきました。


内藤「斉藤せんせー!僕だお!内藤だお!」
タッタッタッ・・・
斉藤「・・?お、おお!!内藤か?あの内藤か!?」
タッタッタッ・・・
内藤「そうだお!その内藤だお!」

内藤と斉藤は・・感動の再会を向かえ・・・・

斉藤「内藤!!でかく・・でかくなったじゃないかあああああああっ!!!」
ドゴン!
内藤「オフッ!!」
男、荒巻「「内藤ーーーー!!??」」

斉藤教員の放ったカエルアッパーは思いっきり内藤の顎を貫きました。

斉藤「感動の再開は職員室でおこなう!!!お前ら全員連行じゃああああ!!」
荒巻「う、うわっ!!こっちくんなぁああああ!!」
男「ひいいいっ!?サーセン!サーセン!サーセェェェン!!!」
斉藤「だれがゆるすかあああああ!!にげんなあああああ!!!」

三人は・・・・あっけなくかつての恩師に捕まってしまいました・・・

内藤「・・・ゴフッ・・・この感覚・・・ひさしぶ・・り・・・・だお・・・ガクッ・・・」



三人は斉藤から一発ずつ愛の鉄拳を受け取り、職員室に連れて行かれました。

斉藤「・・・で・・誰がやった?」
内藤「・・・」
荒巻「・・・」
すっ・・・

二人は静かに男を指差しました。
男「!!??おま」
斉藤「ほほう・・・やっぱりおまえか?」
男「あ・・あのその・・」
斉藤「男は昔っからスラッガーだったからなぁ?」
男「え・・・はは・・・そんn」
ドゴン!


男「えぶっ!!」
斉藤「だれもほめとらんわぁ!!昔っから考えて飛ばせっつってきただろうが!
   俺がバントサインだしても思いっきり三振してたんはどこのだれじゃああ!?」
男「うぅ・・ごめんなさい・・」
荒巻「・・・ぷっ・・・だっせ」
ドゴン!
荒巻「ぬがぁっ!!」
斉藤「お・ま・え・もじゃああ荒巻!毎回毎回!自分の投げたいように投げおって!!
   ちったあサインにしたがえばかもんが!!」
荒巻「・・ってえな・・くそおや」
ドゴン!
荒巻「ヴもんっ!」
斉藤「まだ言うか!もっとなぐられたいのかあああ!?」
荒巻「うう・・・すいません・・・」
内藤「・・・ふたりともかわいそ」
ドゴゴン!
内藤「もごぉ!!」
斉藤「なああにを安心しとるかああ!!!内藤!おまえもいつになったら荒巻にサインを
   出せるようになるんじゃああ!?いつもいつも荒巻にいいようにされおって!!お前の
   とりえはその天才的リード力だろうがぁ!?」
内藤「・・ぐすん・・・ごめんなさいお・・・」
斉藤「まったく・・・お前らはいつになったら俺を安心さしてくれるんじゃ・・・はぁ・・」


三人は、ガラスを割ったことを怒られているのではなく・・・まるで昔の・・
斉藤鬼監督に野球のコトで怒られているみたいと思いだし、いっせいに笑い出しました。

三人「・・・ぷっ・・・あはは・・・・あはははっ」

斉藤「・・・なにがおかしいいいいいいいっ!!?」

三人「!!???サーーーセン!!監督!」
斉藤「・・・・ふん・・・まあいいわ・・・」

なんだか斉藤先生は・・・とても喜んでいるように見えました。



ガラッ

三人と斉藤がいる職員室に、誰かが入ってきました。

女教師「あら?斉藤先生?どうしたんですかその子達・・」
斉藤「ん・・・ああ・・昔の教え子ですよ。」
女教師「あら、そうですか・・・」

荒巻(なあ・・男・・・斉藤のやつ・・やけににやけてねぇか?)
男「ば・・・おま」
斉藤「おい・・荒巻・・・お前またなんか言っただろ・・・」
荒巻「!!いや、な、なんも言ってないっすよ!」
斉藤「・・・フン・・・ところで・・・どうしてお前らココに来たんだ?」
内藤「あ・・・昨日荒巻がこっちに帰ってきたんで・・・」

内藤は、ことの経緯を斉藤先生に話しました。

斉藤「ガハハ!それであんなことしやがったのか!?」
男「・・・すいません・・・」
斉藤「それで?じゃあその勝負は男の勝なんだな?」
内藤「そうだお!男もよくあの球を打ったお!」
荒巻「な!?ちょっとまてよ!あれは失投だよ!まぐれだよ!」
斉藤「ガハハ!言い訳をするな荒巻!失投でも一点は一点だろ?」
荒巻「・・・ふん・・・そうゆうことに・・しといてやるよ・・ちぇっ・・・」
内藤「あはは!荒巻はやっぱり何もかわってないお!」
斉藤「ガハハ!ほんとじゃのう!ガハハ!」

いつの間にか、斉藤先生の顔からは怒りは無くなり・・職員室には嬉しそうな斉藤先生
の笑い声が絶えず響いていました。



男「それにしても・・・斉藤先生まだこの学校に居たんですね・・」
斉藤「ん?おお・・まあな・・・」
荒巻「なっげぇよなぁ・・・俺らが一年のときから居るんじゃねえの?」
斉藤「なんじゃ?ここにおったらいかんのか?んん?」
女教師「あらあら・・皆さん楽しそうね?」
さっき入ってきた先生がお茶を持ってきてくれた。
斉藤「あ・・・先生すいません・・・」
女教師「あらあら?いいですよお茶ぐらい・・」
荒巻「では先生・・・俺と二人で喫茶店にでも・・」
ばしゃ!
男、内藤「「!!?」」


荒巻「!!あっちちちちっちっちちゃああ!!?」
女教師「あらあら?ちょっと熱すぎたかしら?ごめんなさいね?でもあんまり
    変なこと言わないでね?私冗談嫌いだから・・・フフ・・」
荒巻「!!・・す、すいません!!」
女教師「あらあら・・・フフ・・・フフフ・・」

荒巻にお茶をぶっかけたあと、この先生はまた教室を後にした・・・

斉藤「・・・すまん・・・あの先生・・・本当に冗談通じんのだ・・ワシも昔やられたよ・・」
男(・・・・ドSだ・・・)
内藤(・・・始めて見た・・・ドSだ・・・)
荒巻「でも・・・かっこいい・・・」
斉藤「おま・・・頭大丈夫か・・・・」
男(・・・・ドMだ・・・)
内藤(・・・始めて見た・・・ドMだ・・・)


荒巻「・・・そういえば先生!まだ野球の監督やってんだろ!?」
斉藤「!!・・・・」
男「ばっか!あたりまえだろ!あの鬼監督がやめるわけ無いじゃん!」
内藤「先生どうだお!なんかいい子はいるのかお!?」

斉藤は・・・しばらく沈黙し・・・その思い口を開いた・・・・




斉藤「・・・ワシはもう・・・監督じゃないんじゃよ・・・・」


斉藤先生の口からでた言葉は・・信じられないものだった。
あの・・なによりも野球が好きだった・・・斉藤先生が・・・・監督を
やめた?今、三人の中で・・この事実を信じれた者はいない。
でも・・ゆっくりと先生は話し始めた。

斉藤「・・・お前らが卒業してから、二年はワシもまだ監督じゃったんじゃが・・
   ・最近の子供たちは・・・お前らみたいに根性がなくての・・・」
内藤「・・・・」
斉藤「いや・・・それならよかったんじゃ・・そんなもん・・野球をしているうちに
   いやでも身につくからな・・・ガハハ・・・」

斉藤先生は・・今のを冗談で言ったのか分からないけど・・・僕らは全然笑えなかった。
それよりも、なんで・・・なんで斉藤先生が野球を辞めてしまったのかだけが気になっていた。
僕らの真剣な態度を見たせいか・・・そこからは斉藤先生も・・・僕らにちゃんと説明してくれた。


斉藤「わしもな・・・・最初はそんな子らでも、いつかは野球の楽しさを分かって
   くれるだろうと・・一生懸命だったんじゃ・・・しかし・・あろうことかそいつらは
   野球をただのステータスとしか考えておらんでの・・・おかしい話じゃろ?そんな小学生の
   うちから見かけを気にするようなことなんて・・・」

僕にはその意味が分からなかった。僕らは少なくとも・・・野球が好きだったから・・・先生が好き
だったから野球をしていた。だから・・・先生に殴られることすら嬉しかった。

斉藤「もうその時点で・・・ワシは弱気になってての・・・もうワシみたいな古い考えは
   今の野球にはいらんだろうと・・・大体、もう体罰自体がおかしいもんな・・」

そんなことない。いや・・・少なくとも僕達はあれを体罰なんて思ったことなんて一度もない・・・
僕らがいけないから殴られた。僕らがやっちゃいけないことをするから殴られた。
そこには全て理由があった。



斉藤「ワシもみんなを殴りたくて殴ったわけじゃないいんだがな・・・今は生徒だけでなく、
   生徒の手本となるべき先生や・・・親御さんまで神経質になってしまった時代だからな・・・」
荒巻「・・わっかんねーよ!なんでそれが監督が野球辞める理由になるんだよ!」

荒巻が声を荒げて叫んだ。びっくりはしたけれど、斉藤先生は気にすることなく話を続けた。

斉藤「・・・いじめじゃよ・・・・」

斉藤「わしの生徒が・・・大事なチームメイトがあろうことか信頼するべき仲間をいじめていての・・・
   お前らの居た時の様なかわいげのあるもんではなかった・・・・ワシはそれがゆるせんでの。」
斉藤「・・・お前らの時のように・・・ワシの拳を・・・ワシの思いをぶつければ・・・
   分かってくれると思ったんじゃ・・・・じゃがの・・・」

もういやだ!聞きたくない!先生のこんな情けない格好なんて見たくない!
そう思ったのに・・僕の臆病な口は・・・動いてくれなかった・・・



斉藤「・・そいつらは分かってくれなかった。親が学校に来て、わしは首こそは免れたものの
   監督という名前は捨てさせられた。それだけならまだよかった・・・あろうことかそいつらは
   わしの見えないところで・・・またいじめをしおった・・・無口で・・・体が弱くて・・・
   でも一級品の変化球を投げる子じゃった・・・まだまだこれからが楽しみな子じゃった・・・
   だが・・・それからその子は・・・ワシに告げることも無く転校してしまった。」

おとこが話しを聞きながらたまに僕を見てくる。おそらく・・・いじめの話を聞いて・・・僕が嫌な
ことを思い出すんじゃないかって思っているんだろう。

もちろん・・・思い出したさ・・・あの・・孤独感・・だれにもわかってもらえない・・・家に帰ってもお母さんは
いないし、学校に行ったところで・・・僕の居場所は無かった。

でも、僕は男に救われた。僕には助けてくれる人がいた。だから今ココで・・斉藤先生の話が聞けるんだ。

斉藤「・・・もうそれから・・・怖いんじゃよ・・・ワシがどんなに心をこめようが、誰もわかってくれないんじゃないかって
   ・・・ワシはもう・・・・」




斉藤「誰かに別れを告げられるのが怖いんじゃよ・・・・・」




冷や汗が出た。

あんなに怖かった斉藤先生が僕が思っている事と同じことを口にした。

「誰かに別れを告げられるのが怖い」

僕と同じだ。斉藤先生も・・・人の繋がりから逃げている。
僕が・・・しぃさんを・・・想う気持ちを殺しているように。

斉藤先生は、しゃべるのをやめなかった。

斉藤「お前らもな・・本当は・・・わしに殴られたくなかっただろ?
   すまんな・・わしは・・・わしはそれしか方法を知らなかったんじゃよ・・
   お前らと・・・子供達と触れ合う方法を・・・」
男「・・・斉藤・・・先生・・・」
斉藤「さっきもすまんかったの?つい昔のくせで・・・手が出てしまった・・・
   いかんの・・・・年をとるとなんでも忘れっぽくなってしまう・・・」

・・・斉藤先生は間違っている。僕達は・・・本当はだれも先生を怖がってなんかいない。
だけど・・・今の僕には何もいえない・・・僕は斉藤先生と同じ・・・いや、それ以上に人への
愛情の向け方が分かっていない・・・斉藤先生見たいに分かろうともしなかった。

本当は自分が傷つくのが怖くってしぃさんから逃げ出した!

しぃさんの想いに答えてあげずに、しぃさんを突き放した!!!

本当はしぃさんが・・・好きなのに・・・・自分の心にまで嘘をついてその想いを殺そうとした!!!!!

そんな・・・そんな卑怯な人間に・・・なにが言えるんだ・・・
僕はただ・・・自分の情けなさを実感するしかなかった・・・


斉藤「・・・さて・・・もうこの話はやめよう・・・せっかく荒巻も帰ってきたのに
   面白くないだろう?」
斉藤先生は立ち上がり、グラウンドを見つめながら僕達に言った。
斉藤「・・・もう帰りなさい。もうわしのことは忘れて思いっきり遊んで
   いい思い出を作ってきなさい。」
ああ・・なんでこんなことになってしまったのだろう・・・僕が小学校に行こうといったのが
いけなかったんだろう。ここにこなければ、僕達の斉藤先生は・・・ずっと心の中で思い出になっていたのに。
内藤「・・・斉藤先生。きょうはほ」
荒巻「・・・っざけんじゃねぇよ・・・」
内藤「?」
荒巻「ふざけんじゃねええええ!!!」
ガタン!
ドゴ!
斉藤「うおっ!?」
男「!?おい!荒巻お前何やってんだよ!?やめろ!」

荒巻が突然、斉藤先生に飛び掛った。とっさに男がそれをとめに入ったけど、僕は動くことすら
できなかった。


男「荒巻!やめろ!」
荒巻「っるせぇ!!」
バコッ!
ガシャン!
男「うっ!」
男が壁に叩きつけられた。その表紙で壁に掛けてあった絵が落ちた。
あいかわらずぼくはどうすることもできない。
荒巻「ふざけてんじゃねーぞ!クソ親父!!」
バキッ!
斉藤「うっ!がはっ!」
荒巻「なにが別れるのが怖いだ!?なにがすまなかっただ!?」
バキッ!
バキッ!
内藤「・・あ・・あら・・」

それ以上声が出ない。くそ!こんなときまで僕は役立たずだ!くそ!くそっ!!



荒巻「てめぇは!ずっとそんなこと言いながら俺のコト殴ってたのかよ!?ええ!?
   俺に!野球教えてくれて・・・俺に投げることの気持ちよさを教えてくれたあんたは
   どこいったんだよ!!!!」
斉藤「・・・・」
荒巻「あんた・・・昔言ってたよな・・・俺達を殴るとき・・・俺の拳もすっげぇ痛ぇんだって!
   だからその痛みを忘れないように!俺達を殴るときは思いっきり殴るって!」
荒巻「だから俺は!アンタに殴られたときは!!あんただってすっげぇ痛いんだって!!
   そう思ってあんたに殴らせないようにって頑張ってきたんだよ!!!」
斉藤「・・・荒巻・・・」
荒巻「それがなんだ!?あんたのせいでガキがいなくなっただぁ!?何言ってんだよ!?
   あんたは確実に!そいつらを殴ってそのガキを救ってんだよ!!」
荒巻「あんたの前からいなくなったっつっても、死んだわけじゃねーんだろ!?今もどこかで野球やってんだろ!?
   もしそうじゃなくてもアンタは信じてやれよ!!!」

荒巻「そいつを信じてやれんのはあんたしかいないだろうが!!!!」

荒巻が先生に言っている言葉は、全部僕に向かってくる。全部自分に言われている。
そうとしか思えない・・・・ああ・・・耳を塞ぎたい・・もう聞きたくない!
でも・・・僕は・・・逃げちゃだめだ・・・逃げちゃ・・・いけないんだ!

荒巻「今の時代に自分の考えは合わない?それをきめるのは誰なんだよ!?合うか合わないかなんて
   そんなもん自分できめるしかねぇだろうが!!あんたは全部時代のせいにして逃げたかった!!!
   そうだろうが!!!」
斉藤「ち・・ちが」
荒巻「ちがってねぇよ!!!じゃあなんで俺らの時代は通じたんだよ!?アンタが最後まで俺らのコトを
   見てていてくれたからじゃねぇのか!!?それに俺達が答えただけじゃなかったのかよ!?俺はアンタが怖くって
   しぶしぶアンタに逆らわないできたのかよ!?あんたが怖くてこんななる迄やってきたのかよ!!!!」
バッ!!



荒巻は上着を脱ぎ捨てた。上半身をあらわにした荒巻の体は・・・高校生に見えないほど鍛え抜かれていた・・・
でも・・・それよりも・・・僕らのめに飛び込んできたのは・・・生々しい・・・・手術痕がついた・・・肘だった・・


290 名前:小豆汁[] 投稿日:2006/12/20(水) 01:00:18.62ID:pWB0tfyn0
斉藤「・・・お前・・・その肘・・・」
荒巻「笑っちまうよな・・・野球が好きで好きで・・・だれにも負けたくなかったから・・
   必死で練習した結果がこれだよ・・」

それは僕の・・野球からしばらく離れてしまった僕の目にも分かるぐらい・・・痛々しい痕だった。
あんな・・あんな傷であんなすごい球を何事も無く投げれるはずがない・・・どうして・・

荒巻「医者によ・・・お前はもう野球できないかもって言われてよ・・・手術してももう先発投手として
   は投げられないって・・・投げられても一試合十球にも満たないだろうって・・本当に絶望したよ・・
   ・たまらなく怖かった・・・甲子園に行って・・・完全試合をするって夢が・・・完全に途絶えた上に
   もう大好きな野球ができないかもしれないって・・・・」

荒巻は昔から、先発しか登板しなかった。それがあいつのポリシーだった。そんなワガママを平気で言うやつ
だったから、自分のせいで負けたときは、たとえ練習試合でも僕達に泣いて謝ってた・・・そんな荒巻が・・・
肘を壊すまで練習していた・・僕が一人でうじうじしていた間に・・・



荒巻「そんでよ?本当に死ぬほど怖かったけど、死ぬほど嫌だったけど・・俺手術したんだ・・
   ほんっとに辛かった・・・最初はよ?ボールさえ握れなかったんだぜ?あんなに好きだったボールが・・
   全力で俺のコト嫌ってるみたいにさ・・・」

いつのまにか男が立ち上がっていた。さっき壁にぶつかった時に切ったのか、口からは血が出ていた。
も・・もう男は荒巻を止めようとはしなかった。
荒巻「それでもよ?俺ホント頑張ったんだぜ?毎日毎日リハビリして・・何度も嫌になったよ!!
   どうせ回復しても・・・もう九回を投げきることは出来ないんだからよ!!でも・・・それ
   でも・・諦めたくなかった・・・もう一度マウンドで球が投げたかったんだよ!!!」

荒巻の体には、よく見ると無数の傷があった。それを見るだけで・・・こいつがどんだけがんばってきたのかが
わかった・・・伝わってきた。・・なんで僕は・・さっき気付いてやれなかったんだろう・・・
僕と荒巻は・・・最強のバッテリーじゃなかったのかよ・・・何を僕は忘れてしまったんだ!・・・

荒巻「・・・・リハビリが終わって・・・また全力で投げられた時・・たった一球だったけど・・・物凄い
   痛かったけど・・・すっげぇ気持ちよかったんだよ・・・思い出したんだよ!・・・
   たった一球でも!球を投げれる喜びを!!!あんたが教えてくれたことだろうが!!!」
斉藤「荒巻・・・」
荒巻「どうなんだよ!?これでもあんたの考えは間違ってたって言えんのかよ!!!俺はずっと騙されてきたのかよ!!」
斉藤「ちがう!!」


斉藤先生が叫んだ。年取ってくしゃくしゃになった顔をさらにくしゃくしゃにしながら・・・

斉藤「間違ってなんか・・・・いない・・・おまえは・・・」
荒巻「おれじゃねーよ!!あんただよ!!!あんたのその思いが・・俺をここまで野球馬鹿にしたんだよ!!」
男「・・・・」
荒巻「逃げんじゃねーよ・・・アンタの思いは伝わってんだよ・・・ちゃんと俺に・・そのガキ達にだって・・ただあんたは・・」




荒巻「本気でぶつかりもしないで!!!初めから諦めてたんじゃねーのか!!!!??」





そうだ・・・・僕も先生も・・・失うことが怖すぎて・・・答えを見る前に・・・
全部無かったことにしようとしてたんだ・・・卑怯者・・・


斉藤「・・・そうだよ・・・その通りだ・・・わし・・・俺は初めから・・・全部時代のせいにして
   逃げたかったんだよ・・・怯えていたんだよ・・・・皆・・・もう俺なんか必要ないんじゃないかって・・」

荒巻「あんたは・・・古くなんかないんだよ・・・・あんたが勝手に思い込んでただけなんだよ・・・
   諦めないでくれよ・・・あんたが諦めたら・・・俺は誰を信じたらいいんだよ・・・わっかんねえよ・・」


荒巻は・・・なんて凄いのだろうか・・・僕と同じだけしか人生を生きていないのに・・・
こんなに力強い・・・


ああ・・・思い出した・・・僕・・・男に言ったじゃないか・・・・
自分に嘘をつくなって・・・自分が本当に好きな人のそばに居ろって・・あの夜
えらそうに言ってたじゃないか・・・くそっ・・・自分に嘘ついて逃げてんのは・・自分じゃないか・・・



ガラッ!
女教師「きゃっ!!!どうしたんですか!!なんですかここ!?なにがあったんですか!?
    あ!!あなた怪我してるじゃないの!!」
男「あ・・・はい・・・」
女教師「はいじゃないわよ!ちょっと斉藤先生!なにが・・・・斉藤先生?」

斉藤先生は照れながら顔を隠していた。荒巻も恥ずかしそうに服を着ていた。
僕は・・・ひとりで・・・泣いていた・・・かなしいわけじゃないのに・・・



【12月27日 昼②】

それから僕達三人、いや四人は全員でめちゃくちゃになった部屋の片付けを
した。

斉藤先生と荒巻はなんだかはずかしそうに倒れてきた絵をなおしていた。
斉藤先生の顔は荒巻に殴られたせいで軽くぼこぼこになっていたけど、斉藤先生はなにも
言わなかった。それ以上に・・・荒巻は斉藤先生の臆病になっていた心を元に戻してくれたのだから・・・・
さっき教室に戻ってきた女の先生も、男の傷は心配していたけど、斉藤先生の顔を見ても何にも言わなかった。

男と僕は、斉藤先生と荒巻を職員室に残して、二人でトイレに行った。
別に行きたかったわけではなかったけど、今はあの二人の邪魔をしたくなかったのと・・・・僕の・・
荒巻によって動かされた僕の決意を・・・男に聞いてもらいたかった・・・


内藤「・・・・」
男「・・・・」
内藤「・・・・」
男「・・なぁ、内藤・・」

僕から話しかけようと思ったら、男のほうが喋りだした。

男「俺・・荒巻ってさ・・・昔っから斉藤先生のコト・・嫌いなんだって思ってたんだ。」
内藤「・・・お・・・僕もそう思ってたお・・・」
男「なあ?だって・・・いっつも斉藤先生に突っかかっていってたし、いっつも影では
  悪口ばっかり言ってたもんな?」
内藤「・・・それでも・・・・斉藤先生の言ってた練習には・・あいつだけは全部着いて行ってたお・・・」
男「・・・あれは・・・荒巻がバケモンみたいな体力が在っただけじゃなかったんだな・・」


斉藤先生の練習は、本当にきつかった・・・毎日最後までそれに耐えれたのは荒巻しかいなかった。
斉藤先生も、最後まで立っていられない僕らを怒ってはいたけど、無理やりやらせようとはしなかった。・・・
自分でもきついメニューだとは思っていたんだろう。でも、荒巻だけは着いていった。

男「あれは・・・斉藤先生の練習だから着いていけてたんだな・・・」
内藤「・・・そうだお・・・荒巻は、斉藤先生をだれよりも信用してたんだ・・」
男「斉藤先生も、そんな荒巻だったからあんなきついメニューをさせてたんだな・・・」

ふと思い出した。斉藤先生はいっつも、練習が終わった後・・みんなを帰らせた後・・・一人で
グラウンド整備してた。普通は僕達がやらないといけないけれど、斉藤先生はもう遅いんだから
早く帰れって・・・あれは多分、僕らにきつい練習をさせた・・罪滅ぼしみたいなものだったんだろう。


男「さてと・・・そろそろもどるか・・・」
内藤「あ・・・」

男は職員室に戻ろうとしていた。

内藤「あ・・・ま、まって!」
男「!な、なんだよ!?」
内藤「あ・・・」

呼び止めたのはいいけど・・・・どうすればいいんだ?僕は男になにを伝えればいいんだ?
いったい僕は男になにを言おうとしたんだ?・・・あれ・・・わかんなくなった・・・

男「・・・なんだよ?」
内藤「・・・
男「・・・」




だめだ・・・男は行ってしまう・・・・なにやってんだよ!お前は・・・荒巻の言葉で・・・何を決意したんだよ!
斉藤先生と同じように、いままで自分に嘘ついて・・逃げてきたのはもうやめるんだろ!言え!お前の・・・僕の
言いたいこと・・伝えたいことを・・言え!さあ!!喋れ!!怯えんなよ!逃げんなよ!!!
あいつは・・・・男は・・・・ぼくの家族なんだろうが!!!!
言え!!お前の伝えたいことを!!!!!





内藤「・・・僕・・僕は・・・しぃさんのコトが好きなんだお!!!」




男「・・・・」

トイレから出ようとした俺の背中に、内藤が叫んだ。

何をいってんのかわかんなかった。え、何?内藤うほっ?とか思った。
でも内藤は・・・ちゃんと・・・はっきりと言った。
「しぃさんが」好きだって・・・

内藤はずっと・・・お母さんが死んでから、ずっと漫画に逃げていた。俺も知ってた。
でも・・・なんにも言えなかった。それに言おうともしなかった。それは・・・内藤の
問題だから・・・俺がどうこう言えることじゃないから・・・だから・・・俺は内藤にこう言った。

男「・・・はぁ?だから・・なんだよ?」
内藤「・・・・」

すまない内藤・・・本当は喜んでんだよ俺・・・お前が人を好きになった・・それを
俺に話してくれてる・・正直泣きそうだ・・・お前が・・やっと本当の意味で外に出てきたみたいで・・
でも、それはまだ言えない。さあ!言え!俺にどうしてほしい!?何を聞いてほしい!?
頑張れ!!言え!!聞いてやるから!!!


内藤「あ・・・うう・・その・・」
男「・・・そんだけ?・・ふーん・・よかったじゃん・・」



男は・・こっちを向いてくれない・・・でも・・そこから動こうとはしない・・
僕が・・・喋るのを・・待ってくれている。
もう逃げない。こいつは僕の家族だ。なんでも言える・・・無二の親友だ!

内藤「しぃさんが・・好きなんだ・・・僕・・どうしようもなく・・」
男「だからなんだよ!何が言いたい!?」
内藤「昨日・・・僕・・・しぃさんと会ったんだ。いろいろあって、しぃさんは僕の腕を掴んでくれた。
   ぼくにありがとうとか・・一緒に居てとか言ってくれた・・・それが・・・僕の中から離れないんだ・・」
男「・・・・」
内藤「別に・・しぃさんはなんとも思ってないかもしれない。そんなこと・・もう忘れているかもしれない・・
   でも・・・僕は忘れられないんだ!!しぃさんの温もりを!!しぃさんに・・そばに居てほしいんだ・・」
男「・・・・」



内藤・・違うよ・・・しぃさんは多分・・いや確実に・・お前のコト好きで居てくれてるさ・・
サトリが・・・そうであるように・・しぃさんもサトリだから・・心が読めるんだから・・好きでも
ない人にそんなことできないさ・・・でも俺は言わない。そんなことは全部、まだ言えない。

内藤「初めは・・・しぃさんにお母さんの影を重ねていたんだ・・・しぃさんと居ると、お母さんが
   そこにいるように・・・でも・・・違った・・僕は・・しぃさんと居たかった・・お母さんの
   影をだしてまで・・・自分に嘘ついてたんだ・・・」
内藤「それから昨日・・・しぃさんは突然僕の前から居なくなった・・泣いてるみたいだった・・僕が
   頭の中でしぃさんなんか好きじゃないとか思った所為かと・・・そんなわけないのに・・・」

いや、それだ。しぃさんは多分・・内藤の心を読んで、内藤が自分についた嘘を勘違いしたのだろう。
でもそれは・・俺が教えることじゃない。


男「お前がなんかいらんことしたんだろ?」
内藤「違う!そんなことしてない!!・・・僕は・・・しぃさんに・・・笑っていてほしかった・・
   少しの間だけでもいいから・・僕の隣で笑っていてほしかった・・・だから!・・・」
男「・・・・だから?」
内藤「・・・だから・・・僕は・・・しぃさんに・・・もう一度・・・そばにいてほしいんだ!
   なんであの時・・泣いていたのかが知りたいんだ!!でも・・・僕の力だけじゃ・・・無理なんだ・・」

さあ・・・もう少しだ!!あとは・・・言え!!




内藤「・・・だから・・・だから僕に教えてくれ!!!!僕はどうしたらしぃさんを
   幸せに・・・しぃさんに笑っていてもらえるんだ!?僕だけじゃ分からないんだ!!
   だから・・・うっく・・・だから・・・男に助けてもらいたいんだ!!!」



内藤が泣いている。そりゃそうだ。こんななんでもないことでも、あいつはずっと言えなかった。
ずっと人を愛するのを怯えていた。今の内藤は、全力で俺を必要としている!!ちくしょう!!
俺も涙の所為で振り向けないじゃないか!!!くそっ!!!内藤の馬鹿野郎!!こんなんいつまで
待たしやがったんだよ!!!言っちまえば簡単だろう!?俺はおまえの親友なんだから!!



男「お前を助けてやらないわけないだろうが!!!!」





内藤「!!?う・・うぁ・・・男・・」
男「・・・ったく・・・いつまでも一人で抱え込みやがって・・お前が言ったんだろ?
  俺達は家族だって・・・」
内藤「う・・うぁ・・ひっく・・・」
男「泣いてんじゃねーよ!!ったく女みてぇに・・・うじうじしやがって・・くそっ!」

はは・・・何言ってんだよ・・男だって・・・泣いてるじゃんか・・・

男「いいか?もうこれからは・・俺に内緒で一人で何でも抱え込むんじゃねーぞ?なんでも
  言えよ?女のことでも何でもいいから・・全力で聞いてやるから・・・だけど・・」



男「だけど・・・本当に答を見つけるのはお前だからな!!俺はヒントしかやらねーからな!?」
内藤「ひっく・・う・・うん・・わかったお・・」
男「明日・・・俺とサトリ・・・お前としぃさんで・・・出かけよう。ダブルデートだ。」
内藤「!!え・・そん」
男「文句は言わせねえ!!俺が絶対セッティングしてやるから!自分でしぃさんを笑わしてみろ!!」
内藤「・・・うん・・・かんばるお・・・」
男「それからな・・もう絶対しぃさんの前で嘘つくんじゃねーぞ?たとえ心の中でもだ。
  お前が嘘ついて・・・またしぃさんを傷つけやがったらフルボッコだかんな!?」
内藤「わかったお!絶対にしぃさんを振り向かせるお!!」
男「絶対だかんな?絶対に嘘なんかつくなよ?」
内藤「約束だお!!」
男「おし・・じゃあ・・わかったよ。」

そう言い残すと、男はトイレから出て行った。


男「はぁ・・ちょっとずるいかな?・・いいよなサトリ?このぐらいのヒントなら・・・本当のコトは
  しぃさんが・・自分から言わなくちゃいけないもんな・・・」


内藤は一人、トイレに残ってました。
内藤「うぅ・・・がんばるお・・・」
内藤は心の中で小さく・・・しぃを幸せにしようと思いました・・


ジョルジュ「NO----------------!!!!!」
内藤「!!!!????」

トイレの個室、一番奥のところから悲鳴が聞こえてきました。



内藤「!!!どどど、どうしましたお!?」(人がいたのかお!?)
ジョルジュ「NO---!HELP!!ヘーーールプ!!」
内藤「ちょ、だ、だからどうしたんだお!?」
ジョルジュ「カミ!」
内藤「へ?」
ジョルジュ「カミ!カミガアリマセーーーン!!コレデハデンブがフケマセーーン!!」
内藤「でんぶ・・・・・あ、臀部(しり)か・・・・あートイレットペーパーだお・・・」
ポイッ
内藤はジョルジュのトイレに紙を投げました。
ジョルジュ「Ohーーーー!?テンカラノメグミネ!コレデワタシ、デンブキレイキレイネー!!」
内藤「・・・・」(うるさいお・・・)
ガチャ!
内藤「!!」


ジョルジュ「オー!!ワタシヲスクッテクレタヒトハアナタデスカ!!」
内藤「で、でかっ!!」
ジョルジュ「オー?タシカニトテモデカイノガウマレマシター!!ミマスカ?」
内藤「みないお!あなたのことだお!早く流せお!!」
ジョルジュ「オー・・・サヨナラマイサン・・・・」
ジャーゴボゴボ・・・
内藤「・・・」(何だこの人・・・)
ジョルジュ「ドウモタスカリマシター!!ワタシコノガッコウデエイゴノセンセイヤッテル
      ジョルジュ・長岡・ジョシュバーネットデス!リャクシテ「ジョナガ」デース!!」
内藤「いや・・・ジョジョだお・・・常識的に考えて・・・・」
ジョルジュ「カミヲクレタオレイニ!シアワセニナレルオマジナイヲオシエテアゲマース!!」
内藤「?おまじない?」
ジョルジュ「マズ!ヒダリテヲコシニアテマス!!」
内藤「・・・・」
ジョルジュ「ミギテハグーデース!!」
内藤「・・・」
ジョルジュ「ソシタラー!コブシヲゲンキヨクジョウゲシテ!オッパ」
内藤「おっぱいおっぱいならやらないお・・・・」
ジョルジュ「・・・・・ニョローン・・・」
内藤「はあ・・・・」

内藤はトイレから出て行こうとしました。


ジョルジュ「アッー!マッテクダサーイ!!」
内藤「?なんだお・・・」
ジョルジュ「タスケテクレタオレイニ!コレアゲマス!!」
ポイッ・・
パシッ!!
内藤「おっと・・・なんですかこれ?」
ジョルジュ「・・・イマノアナタニヒツヨウナモノデース・・・」
内藤「え・・・?」
ジョルジュ「デハ!コノヘンデ!!サヨナラアッー!」
内藤「え・・あ・・ちょっと・・・」
内藤「・・あれ?」

内藤が外に出てみると・・・そこにはもうジョルジュはいませんでした。

内藤「な・・・なんだったんだお・・・それに・・・これ・・・キーホルダー?」

内藤が受け取ったそれは・・星型のキーホルダーでした。

内藤「なんだろ・・・なんか懐かしい・・・」
男「おーい!内藤ー!」
内藤「あ!いまいくお!」



その後三人は、斉藤先生にまた三人で会いに来ると約束し、斉藤先生もまた、野球の監督になる
と、三人に約束しました。

荒巻「いいかオッサン!!ぜったいまた来るからな!!約束やぶんなよ!!」
斉藤「おうおう!わかっとるわい!・・・お前も体は大事にしろよ・・・」
男「それじゃ先生・・・さようなら・・・」
内藤「元気でお!」


斉藤「おまえらーーーー!・・・・・ありがとうなーーー!」


斉藤先生は、三人の後姿が見えなくなるまで・・・ずっと手を振ってました・・・



女教師「あらあら・・・もう帰られたんですか?」
斉藤「ん・・・そうですね・・・・」
女教師「・・ガラス代はどうしますの?」
斉藤「そのぐらい・・・私がだしますよ・・・」
女教師「あらあら・・・斉藤先生はやさしいんですね・・・」
斉藤「いやいや・・・ガラス代以上に・・・私は大切なものを・・・もらいましたから・・」
女教師「あらあら・・・くすくす・・」


斉藤「それより先生・・・その・・・右手に持ってる・・・なんですかそれ?・・ムチ!」
女教師「あらあら?これですか?通販で買ったのですけど・・使う人がいなくって・・」
斉藤「・・・・あいつら・・・帰ってよかったな・・・」
女教師「なんか・・・ぐりん・・・がむ・・とかそんな名前の鞭なんですけど・・・
    斉藤先生?一発どうですか?」
斉藤「ノーセンキュー」
女教師「あらあら・・・・」


その後三人は、日が暮れても・・・終電の時間までめいっぱい遊びました・・




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最終更新:2006年12月23日 15:50