【12月28日 朝③】
時計の針がちょうど11時を指した時、四人は男の案内する次の目的地に着きました。
サトリ「・・・ここは?」
内藤「・・・繁華街?」
男が連れてきたのは何の変哲のない繁華街でした。
しぃ「・・?なにかあるの?ここに・・・」
男「まあ、みんな黙ってついて来いって・・」
サトリ「?」
四人は男に連れられて・・どんどん裏道に入ってきます・・
内藤「・・・男・・本当にこっちかお?」
しぃ「・・なんだか・・人がいなくなってくよ・・」
サトリ「・・・」
ギュ・・
男「・・・・・・」
男は黙ったまま・・三人を人気の少ないところに連れて行きます。
サトリ「ふぇ・・・・おとこくぅーん・・・・」
ギュ・・・
男「・・・はい!到着!」
内藤「!」
しぃ「・・・ここは・・・」
そこには・・・古ぼけた・・・
サトリ「・・映画館?」
男「そう。おれが前にこの辺ウロウロしてた時に見つけて、館長と仲良くなったんだ。」
しぃ「へぇ・・・なんだか・・不思議な建物ね・・・」
内藤「・・・本当にやってるのかお?」
男「大丈夫だって!さあ入った入った!!」
キィ・・・
中に入ってみると、そこには外からは想像もつかないぐらい・・静かな空間がありました。
サトリ「うわぁ・・・」
しぃ「あら・・・なんか・・・いいわね・・」
内藤「うん・・・おちつくお・・・」
映画館というか、まるで喫茶店のような雰囲気に、三人は酔いしれてました。
男「館長ー!おれおれー!」
男がそう言うと店の奥から男の人が出てきました。
館長「なんだぁー・・・俺に息子なんか・・あ!男か!」
男「おう!おいっす!」
館長「おいっす!おせえじゃねえか!」
男「はは!ごめん!」
奥から出てきた男はすらっとした背の高い、あごにうっすら髭のはえた、ロカビリーチックな人でした。
館長「で・・・あ・・その子かい?」
サトリ「?」
男「うん・・おれの彼女。」
館長「はー!これはなかなか・・・・やるなぁお前・・・」
サトリ「え?/////」
館長はサトリを見ながら頷いています・・
館長「ふんふん・・・ん!君名前は?」
サトリ「え!?サ、サトリです・・・」
館長「サトリちゃんか・・・うん!よろしく!」
内藤「なんだか元気な人だお・・・・」
館長「で!そっちの二人は?」
内藤「お!?」
館長「おーおー・・・・こっちもまたべっぴんさん連れて・・・若いねぇーおまえら!」
ぽん!
サトリ、しぃ「「きゃっ!!?」」
男「!おい!館長なにやってんすか!!」
館長「ははは!いいじゃねーかよ尻ぐらいっ!」
内藤「・・・・」(ビキビキ・・)
男「・・・嫁さんに言いつけますからね・・・」
館長「!!??そ、それだけは・・・ごめん・・・」
嫁「なにおいいつけるってぇー?」
館長「!!」
また奥から・・今度はメイド服に身を包んだ女の人が出てきました。
男「あ!嫁さん!!また館長セクハラしてますよ!」
嫁「なんだってぇー!こぉら!だめでしょぉ!」
ぽこん!ぽこん!
館長「いてて・・ごめんて・・」
なんだかおっとりした嫁さんはぜんぜん痛そうに見えないパンチで館長を叩きます。
しぃ「・・・・・」(もう・・・)
サトリ「・・・・」(なんなのこの人たち・・・)
内藤「・・・メイド・・」
しぃ「!!・・・」
ぎゅ・・・
内藤「!!・・・・?」
嫁「あらぁーおとこくんでぇとぉ?」
ぽこん!ぽこん!
男「あ、はい今日四人で予約してたんです。」
嫁「あぁそう?ありがとぉねぇー。」
ぽこん!ぽこん!
館長「あてて・・・じゃあ四人ともこっち来て!・・・あたた・・」
サトリ「あ・・・はい・・」
しぃ「・・・」
内藤「お・・・・」
四人が案内されたそこは、3番ブースと書かれていました。
サトリ「・・・3番?」
男「うん。ここの映画館は全部で3部屋の小さな上映室があるんだ。」
しぃ「3室の・・上映室?」
男「どの部屋も、普通の映画館に比べたら小さいけど、完全貸切制で
予約さえすれば、さっきの嫁さんのコレクションの中から
好きな映画を借りて見ることができるんだ。」
内藤「へえ・・・すごいなぁ・・」
男「だろ?俺も初めて来たときびっくりしたよ。
館長にうちは予約制だっつって断られそうになったんだけど、
俺がちょうど「理由なき反抗」っていうジェームズ・ディーンの
DVD持ってるのを見て、館長が俺も大ファンだから
一緒に見ようぜって言ってくれて・・」
館長「ジェームズ・ディーンは男の鏡だからな!さぁどうぞ!若者達!!」
ギィ・・
重そうな音を立てながら・・防音効果を持つだろうそのドアが開いた。
サトリ「・・・うわぁ・・・すごい!!」
そこには、確かに普通の映画館に比べれば小さいかも知れないが、四人で使うには十分すぎる
シアタールームが広がっていた。
その部屋の壁には、エルビス・プレスリーの映画ポスター、ストレイ・キャッツの
メンバー三人、ブライアン・セッツァー、リー・ロッカー、スリム・ジム・ファントムの
それぞれの代表的パフォーマンスをとらえた写真、年代物のwranglerのジーンズ
スクリーンの横にはウッドベースや薄汚れた星条旗など、館長の趣味がこれでもかと
あふれていました。うっすらとながれるBGMでさえ、古きよき時代のロカビリースタイルを
かもし出しています。
内藤「・・・す・・すごいお・・」
しぃ「ここが・・・私達だけで貸切なの?」
館長「おう!もちろんさ!のどが渇いたんならそこの呼び鈴押せば
うちの嫁がなんか持ってくるからよ。バドワイザーからギネス、
なんならオリオンビールまでそろってるぜ?」
男「いや、俺ら未成年ですから・・・」
館長「なぁに硬いコト言ってんだ!俺らの時代はハッパだって・・」
男「はいはい!自慢はいいから!作品選ばせてよ!」
館長「お?そうだな!」
サトリ「あ!私も行く!」
館長「おお!いいねぇ嬢ちゃん!よし着いてきな!!」
パタン・・
内藤「お・・・・」
しぃ「あ・・・」
内藤としぃは、二人だけその70年代っぽい部屋に取り残されました。
男「なんか新しいのって入ってる?」
館長「んー・・わかんねーなぁ・・そこは俺の趣味じゃないしよ・・」
サトリ「全部奥さんのコレクションなんですか?」
館長「おう!俺の嫁はな昔女優でよ・・ほら・・なんだっけ・・あの・・」
男「紅の花。」
館長「そーそー!それに出てたんだけど・・・嬢ちゃんしらねえか?」
サトリ「あの・・もしかして・・10年ぐらい前の・・・」
男「正確には12年前だな・・その主演女優だった・・」
サトリ「KOTOKOさん!!??」
男「そのとおり・・すごいだろ?」
館長「そんなにすげぇのか?俺全然見たことないんだけどなぁ・・・」
サトリ「!!す、すごいなんてもんじゃないですよ!! KOTOKOさんって言えば
今の私と同じ年でその年のシネマ・オブ・クイーンにまで選ばれた
大女優じゃないですか!? たしかそのあと突然失踪して、
そのまま行方がわからなくなった・・」
男「その大女優がさっきのメイドさんだよ。」
サトリ「えー!?すっごい!!私女優さんなんて始めて見た・・・」
館長「もう昔の話だよ・・いや・・かわいいのは否定せんが・・嬢ちゃんも映画くわしいのかい?」
男「大概の日本人ならみんな知ってるって・・・」
嫁「おぉーい!こっちだよぉー!」
「無断立ち入り禁止!入ったらもふもふしてSATUGAIかSATUGAIしてもふもふ!!」って書かれた部屋のドアに
嫁さんが立ってこっちに手を振っていた。
嫁「はぁい!おくぇどおぞぉー!」
サトリ「・・はあぁ・・」
嫁「うにゅ?どうかしたのぉ?」
サトリ「あ!い、いや、なんでもないです!!」
男「ほら!サトリ!なんか見たいのえらんでみ!!」
サトリ「あ、はぁーい!」(ああ・・あの人見てたら・・・吸い込まれそうだった・・)
その部屋には、数にして表せるのかどうかわからないくらいの映画フィルムがあった。
サトリ「うぅ・・ここに来てからびっくりしっぱなしだよぉ・・」
男「ははは・・俺もそうだったよ・・なんでこんな変なとこにこんな映画館があるんだか・・」
館長「ふん!俺はあくまで趣味のつもりだかんな!男もこれ以上客つれてくんなよ!」
男「わかってますって・・あ・・これなんてどう?」
男がもってきたそれは・・「アメリカン・グラフィティ」
館長「えーと・・・うん・・・それはないわ・・」
男「え!?これ以上の青春映画ないだろ!?」
館長「いやぁ・・・俺はいいんだがお前らがアメリカ人の青春見てもわかんねーだろ?」
男「えー・・そうかなぁ・・・」
館長「それよりこれだよ!」
館長が持ってきたそれは・・・「ミザリー」
男「いや・・なぜに?」
館長「なんでってお前、ホラー映画みて彼女にキャーコワイーって
抱きつかれたくないのか?」
男「たくはないわけじゃないけど・・・
それはリアルすぎるって・・・最恐のメイド映画じゃん・・」
館長「うーん・・うちの嫁さんみたいなんだがなぁ・・」
男「いや、なにいってんだ館長・・頭OK?」
サトリ「ねーねー!男君!私これ観たい!」
サトリがもってきたそれは・・・「ムトゥ 踊るマハラジャ」
館長「それはねーよ・・」
男「それはねーよ・・」
サトリ「ええ?・・・だめ?」
男「いや、むしろよくそれを選んだよ・・すごいなサトリは・・」
サトリ「えー・・だってパッケージが可愛かったから・・ぷー・・・」
意見がバラバラになり、なかなか作品を選べません・・・そこに・・
嫁「ねぇねぇーこれなんかどぉ?」
男「あ・・・うん!これいいですね!」
館長「ちょっと俺の趣味じゃないけど・・いいんじゃない!?」
サトリ「・・・?」
とりあえず二人はそのフィルムを選び、しぃと内藤が待つ部屋に向かいました。
男「うん・・・あれなら・・きっとみんな満足するさ・・」
サトリ「うん?どんな映画?」
男「とってもいい映画だよ。サトリには難しいかなぁー?」(ふふ・・)
サトリ「あー!馬鹿にしたなぁ!?」
男「いやいや、してないっすよ!」
サトリ「もう・・ぷん!」
しぃ「・・・すごいね・・ココ・・」
内藤「うん・・」
シアタールームに残された二人は目の前に広がる不思議な空間に見惚れていました。
しぃ「うぅ・・全然知ってる人いないや・・・」
しぃは部屋の壁にきれいに並べられているCDを観ながらつぶやきました。
しぃ「内藤君、知ってる人いる?」
内藤「うーん・・」
内藤はしぃの横に立ってCDを眺めだしました。
内藤「プレスリー・・キャッツ・・あ、13Cats・・すごいなー・・
タイガーアーミーまで・・うわぁ・・ホラープップス?・・
本当にロカビリー好きなんだなお・・ネオから・・サイコも・・」
しぃ「・・くすくす・・内藤君も結構知ってるんだね?」
内藤「あ・・うん・・けっこう知ってるのあるかも・・」
しぃ「ふぅん・・あ、これは?」
内藤「それ?・・ディープ・パープルだお。」
しぃ「・・深紫?」
内藤「・・うん・・まあそうだけど・・ちょっとここに置いてあるのとはちがうジャンルだお。」
しぃ「そうなの?」
内藤「うん・・・あ・・」
内藤の目の先に・・ベースがありました。その隣にはギターも・・
内藤「そうだお・・よっと・・」
しぃ「・・内藤君楽器弾けるの?」
内藤「うん・・ちょっとだけだお・・よいしょ!」
内藤はそう言うと、ウッドベースに跨りました。
しぃ「!!あ、あぶないよ!?」
内藤「大丈夫だお!・・えっと・・これがロカビリーだお。」
スリムのウッドベースに乗って弦を弾くパフォーマンスを内藤はしぃに見せました。
しぃ「うわぁ!!すごいすごい!」
内藤「っとと!!まあこんな感じでとってもリズムに乗りやすいのがロカビリーだお!」
しぃ「こう・・なんていうか・・・お父さんが聞いてそうだね?」
内藤「うん。ちょうど僕らの親達ぐらいの世代で、よくはやってたお・・そして・・」
内藤は次にギターを手に取りました。
内藤「お・・ええ!?これはすごいお!・・58年製のサンバースト!?」
しぃ「?すごいの!?」
内藤「こ・・こんなの・・ココにあること自体すごいお!これは僕が触っちゃ・・いや・・」
内藤は少し考えた後・・・ハイウェイ・スターのギターソロを引き始めました。
しぃ「!!すっごい!内藤君かっこいいよ!」
内藤「!・・こ、こんな感じに・・分かり易いながらも複雑な、日本人ならだれもが一曲は聴いたこと
ある曲をたくさん作ってきたのが、そのディープパープルだお!」
しぃ「うん・・なんだか私も聞いたことありそう・・」
内藤「あ・・・じゃあ・・この曲は?」
内藤が次に弾き出した曲は・・・「BURN」
しぃ「あ・・うん・・なんだか知ってる・・」
内藤「・・・お・・」(あら・・意外とこれも知ってるんだお・・)
館長「おいおい!いったいどこから魔女が入ってきたんだ?」
内藤「!!」
・・・そこにはいつの間にか三人が戻ってきていました。
サトリ「うわー!内藤君すごいねー!」
男「うん・・おれもびっくりした・・」
館長「・・そのギターを弾いたやつ見たのは久しぶりだがな・・」
内藤「!!ご、ごご・・ごめんなさいお!!」
館長「いいよいいよ!楽器なんて弾いてなんぼなんだから!
それよりお前・・いまどきBURN弾くガキがいるなんてな・・・」
内藤「いや・・その・・好きだったもんで・・つい・・」
館長「いまのガキはもっとこう・・和製ロックみたいかと思ったけど・・
なかなかやるじゃん!? そこの嬢ちゃんも惚れ直しただろ?」
しぃ「!!え・・そ、その・・・」
コクン・・
内藤「!!」
館長「ははは!さあ!モントルーの火災が起きる前にそろそろ始まるぞ!」
男「あ!そっか!館長ありがとう!」
館長「その辺のもんは全部食っていいから・・あと・・
ココの隣は誰もいないベッドだけの部屋になってて鍵はー」
男「!!も、もういいから!でてけ!」
ガチャ!
館長「てて!ったく!人の親切をよぉ・・ははっ!!」
男「・・・ふう・・・さあ!それじゃ始まるよ!」
サトリ「はい!男君はココ!」
サトリは一番前の真ん中の席で、男に隣に座るよう言いました。
男「・・いや・・サトリ?そこはさすがに首が痛くなると思うよ?」
サトリ「あ・・・う・・うん・・・/////」
内藤「・・・なにしてるお!早く来るお!」
振り返ると、ちょうど真ん中あたりに内藤が座っていて・・その隣にしぃが座っていました。
しぃ「・・・/////」
男「・・!!・・・」(おお・・キタコレ・・)
サトリ「・・男君・・なんだかしぃちゃん・・」
男「うん・・俺たちはあいつらとはちょっと離れたトコすわろっか?」
サトリ「・・うん!」
四人は二人ずつ・・・少しはなれたところに座り・・いよいよ上映開始です・・
しぃ「・・・」(さっきの内藤君・・ほんと・・かっこよかった・・)
内藤「・・・・」(しぃさん・・喜んでくれたかお・・・)
しぃ「//////」
室内が薄暗くなった。
私は内藤君の隣で、サトリは男君隣に座っている。
なんだろう・・・本当に数日前なら考えられないコトだった・・・
私がこんなに内藤君を愛しく思ってるなんて・・・
人を好きになるなんて、すごい時間を掛けて少しずつ少しずつ想いが変わっていく
ものとばかり思っていたから・・その過程が怖かったから・・・私は恋愛から離れていたのだろう。
&一目惚れ?うーん・・わかんないや・・でも・・このまま・・ずっとこの人と居たいのは・・確か。
さっきまで流れていた音楽が止んだ。それと入れ替わるように映写機の回転する音がうっすらと聞こえてきた・・
内藤「しぃさん・・寒くない?」
しぃ「え・・あ・・うん・・」
なんでもない、ただ室内に空調が効いてきたから私のコトを心配してくれたんだろう・・
でもあんまり急なコトだから・・嘘ついちゃった・・えへへ・・
男「・・・」(ねえ・・サトリ?)
サトリ「・・ん?」
男「・・・」(あの二人・・・結構いい感じになってきたな・・)
サトリ「・・うん・・・」
男「・・・」
(さっき公園でさ・・内藤・・松本くんにしぃを幸せにしろって言われてさ・・)
サトリ「・・なんて言ったの?」
男「・・・」(もちろん・・・はいって・・)
サトリ「・・そっか・・」
男「・・・」
(なんかあれだよな・・俺とお前の時みたいに・・お互いが想ってるのに・・
きっかけのない所為で・・)
サトリ「・・・前に進めない?」
男「・・・うん・・」(でも・・あと少し・・だよな・・)
サトリ「・・うん・・あとは・・本人の勇気だけ・・ね?」
男「・・・」(俺たちも・・・あんなだったのかな?)
サトリ「うーん・・どうだろう?私が男君に・・
あんまり近づけなかったからなぁ・・見えるのが・・怖くって・・」
男「・・・ごめんな?」
サトリ「・・ううん・・いいの・・そのぶん・・今が楽しいから////」
ぎゅう・・
男「・・うん・・」(・・ったく・・引っ付きすぎ・・)
サトリ「///・・だめ?」
男「・・・」(・・・いいよ・・)
サトリ「!!・・・うん・・」
ぎゅー・・
男「・・サトリの力も・・けっこういいな・・・うん・・・」
サトリ「?・・あ、始まった・・」
真っ白なスクリーンに・・製作会社のロゴが映し出された・・
男「・・・久しぶりに・・観るな・・これ・・」
サトリ「え?・・見たことあるの?」
男「うん・・・前にね・・でも・・今サトリと観ると・・また違った感想が言えそうだ・・」
ぎゅ・・
サトリ「?」
内藤「・・・・」(気を使ってんのか知らないけど・・・けっこう声きこえてるお・・・)
しぃ「////」(うぅ・・私はもっと聞こえてるんだけどね・・・///)
【12月28日 昼】
スクリーンに映し出された映画は 「シザーハンズ」
分かりやすく言えば、両手がハサミのまま生まれてしまったロボット?と人間の恋物語。
ジョニー・デップが演じる「エド」は心の優しい発明家から、人間の心を貰った人造人間。
でも・・体は完成したけど、両手がハサミの状態のまま・・発明家が死んでしまう。
傷つけたくなくても、優しい心を持っていても、どんなに人を愛しても・・エドは両手に愛する人の温もりを感じる事はできない・・・
その美しい世界観、音楽、エドのなんでもない優しさ・・そんな幻想的な空間に私はすぐに引き寄せられていった。
私がまだ小さい頃の映画だったから、ちょっと古いイメージが湧いたけれどいい映画というのは、どんなに年月が
たっても色あせない。それを感じた・・・
内藤「お・・これは・・僕もいつか見ようと思ってたお・・」
隣で内藤君がスクリーンに捕らえられたかのように見入っている。
私の手は自然に・・・内藤君のそれに重なっているけど、内藤君ももうそれを拒否しない。
彼の中で・・・私の存在が・・・いい方向に変わってくれたみたい・・どうやら男君達が私たち二人になにか幸せになれる魔法を掛けてくれたみたい・・やだ・・私ったら子供・・
物語が進むにつれて・・・エドは一人の少女「キム」に恋をする。
彼女は・・まあ・・初めはわかりやすい、この手の映画に登場する外国の青春時代真っ盛りの女の子。
初めはエドを気味悪がって、なかなか心を許そうとはしなかった・・でも、物語が進むにつれて・・
二人は自然と・・惹かれあうようになってくる。
そうよね?エドがいくら不気味な様をしていても、心はどんな人間よりも綺麗なんだから・・惹かれ合うのは必然・・
でも・・そこは「人間」の世界。
エドが、どんなに綺麗な心を持っていても、他人から見れば「人造人間」。
両手がハサミの・・哀しい人形。忌み嫌われるのも時間の問題だった・・・
そんな必然的なすれ違いから・・哀しい事件が起こってしまう。エドは人間達から追いやられ・・
また孤独に陥ってしまうの。
しぃ「・・・ぐすっ・・」
内藤「・・・」(しぃさん・・泣いてる?)
うん・・そう。だって哀しいわよね?こんなの・・・でも・・私・・いや、サトリもそうだろうけど・・
どうしても、エドがただ可哀相な主人公には見えない。
どうしても・・人間達から迫害されるエドを、私たちサトリに重ねてしまう。
今までの歴史上、エドのように・・周りの人達から忌み嫌われ・・一人で寂しいまま・・
その生涯を閉じた人は・・サトリにはちょっと嘘を・・ううん・・私も信じてはいないけど・・居ただろう。
今のように、私たちは・・「それ」を隠すことで、自分を含め、周りの人達と上手く共存してきた。でも・・
それは、私たちの先祖が経験してきたからそうなったの・・ということは・・時代を遡っていけば・・・
その人が・・いったいどれだけ辛い思いをしたのかなんて、想像もできない。
愛する人、家族、友人・・・大事な人達から、聞きたくもない、本人達も聞かれたくない
コトが・・勝手に伝わってしまう・・
実は、私たち「サトリ」の力は、どんどん弱まってきているそうだ。
実際、サトリはもう限定する人からの思念しか伝わってこなくなっているし、私もお母さんのそれに比べたら、私の見える範囲はとても小さくなっているらしい。
もしかしたら・・この私たちの世代で・・・「サトリ」は居なくなるかもしれないって・・
田舎のおばあちゃん達は皆口をそろえて言う。
でも・・・それでも・・私とサトリがこのどうしようもない力を持っているのは事実。
本音を言えば・・次なんか知ったことではない。きつい言い方をすれば・・・お母さんの世代で終わっていてほしかった。なんてひどい女って思われてもいい。私は人並みに恋が・・したかった・・
私は、エドのように・・一人で逃げ出す勇気さえなかった。どんなに怯えても、お父さんやサトリから貰っている温もりが愛しかったから、文句ばっかりで・・自分が忘れるのを
ただ待っているだけだった。
映画はいよいよ終盤になっていく。エドは・・・最後まで・・キムと結ばれることはなかった。
ううん・・お互いに愛し合ってはいたけれども・・その愛を育むことはできなっかたの。
二人は永遠に・・・片思いで・・この物語はスタッフロールを迎えた。
内藤「・・お・・うん・・いい映画だったお・・」
しぃ「・・ぐすっ・・」
ぎゅ・・
内藤「・・?・・大丈夫かお?」
しぃ「・・ぐすっ・・うん・・ありがとう・・」
ぎゅ・・
内藤「お・・・」(しぃさんの手・・あったかいお・・)
結局・・私はエドに並外れた感情移入をしてしまい・・しばらく涙が止まらなかった。
その間・・ずっと内藤君が手を握っていてくれた。
エドは結局、一人で孤独に暮らすコトを選んだ。選ばざるをえなかった。それが・・お互いに幸せになれる・・唯一の方法だったから。
でも・・私はいやだ。もうこうなってしまえばしかたない。もう内藤君と離れたくない。
この人に愛されていたい。私の愛を受け取ってほしい。私がサトリであっても・・この人にだけは分かってほしい!
&そうなんだ・・私はサトリに・・幸せにしてくれる人がいるから・・・私たち「サトリ」は生きてこれたと言った・・でも・・・それは間違い・・本当は・・
私たちが・・そう望んだから・・その人が振り向いてくれるんだ・・
先祖から伝わる忌々しい力が教えてくれたのは、哀しくも正反対の・・愛。
おそらく、沢山の人が・・「サトリ」によって呪われた人生を怨みながら死んでいっただろう。
私はそれを信じたくなかった。自分もそれに続きたくなかったから。
エドのように・・一人で永遠の思い出を抱えて、生きていく自身がなかった。
そのくせ・・誰かの温もりが・・ほしかった。「サトリ」の所為にして、自分から心を開くのを怖がって、ずっと逃げていた。先祖から伝わってきた想いを・・願いを・・台無しにする所だった。
私は、内藤君に愛してほしい。私以外を見ないでほしい。
だから
私も、内藤君を・・心から・・愛していきたい。思いは・・絶対に・・伝えなくちゃいけない。
覚悟はできた。もう恐れる必要は・・ない・・・「サトリ」を・・正面から・・受け止めてやる。
しぃ「・・・内藤君?」
内藤「・・・?」
しぃ「私ね?・・内藤君が・・・」
内藤「・・・・・」
しぃ「内藤君が・・・・」
しぃ「好」
サトリ「・・・うわぁーーーん!!」
しぃ「・・・!?」
内藤「お!?・・・サトリちゃん・・・うわっ・・号泣?
しぃ「・・あ・・・え・・・」
凄い泣き声が・・部屋に響きわたり・・・その音源を見ると・・サトリが男君に抱きついて
えんえん泣いていた・・・
サトリ・・・ちょっと・・・もう・・台無しじゃない・・ちぇっ・・
・・・まぁ・・いいか・・もう少し・・このギクシャクした関係を楽しもう・・
おそらく・・・私の思い通り・・ふふっ・・内藤君は答えてくれるから・・
男「ちょっ!サトリ!おちつけって/////」
サトリ「ふぇぇぇぇ!!」
ぎゅうー!!
男「いやっ!・・っていやじゃいけど・・あー・・あのさ?」
サトリ「だってぇぇ・・ぐすん・・・かわいそうだよぉ・・ぐすん・・」
ぎゅうー・・
男「うん・・・いや・・わかるけどさ・・・ほらぁ・・顔グシャグシャ・・」
さすさす・・
サトリ「うぅ・・////・・男君は・・ぐすん・・・ずっと・・ぐしゅん・・ずっと
私のそばに居てね?」
ぎゅうー・・
男「・・もう・・・何回言わせるんだよ・・大丈夫だって・・」
サトリ「・・ぐすん・・・ん・・」
男「・・・・・?」
サトリ「・・・んー!」
男「・・・・・」(・・・・え・・あ・・もしかして・・・)
サトリ「・・・ちゅー・・・・///」
男「・・//////」(・・・うん・・・サトリ?)
サトリ「・・いや?・・」
男「・・・いや・・じゃないけどさ・・・」(後ろ見てみ・・・)
サトリ「・・・・!!!」
そこには・・・しぃと内藤が・・・恥ずかしそうにこっちを見てました・・・
男「・・・忘れてたなお前・・・・二人きりだと・・・思ってただろ・・・」
サトリ「!!・・・・あ・・・あぅ・・・///////」
内藤「・・・・男・・・その・・・外・・・出ようか?」
しぃ「・・・・サトリ・・・ホントに・・変わったわね?」
サトリ「!!///////ち・・ちがうもん・・・」
男「・・・・なにがだよ・・・」
ばたん!
館長「おら!おまえら!嫁がお茶用意してくれたから降りてきな!!」
男「あ・・・はい・・すぐ行く・・・」(サトリ・・・ばか・・・)
サトリ「あぅ・・・だってー・・・・//////」
館長「?なんだ?隣使うか?」
男「ノーセンキュー」
四人は、館長に連れられ・・ロビーにある喫茶店のような所に案内されました。
館長「よっと!で、どうだった?」
館長は、俺達をテーブルに座らすと、俺と内藤の前に座り、愛煙しているウィンストンを銜えた。
館長「・・っと!いい?吸っても?」
内藤「お・・どうぞ・・」
男「・・やっぱり号泣しやがったよ・・・うちのは・・」
館長「ははっ!!わっかりやすいなぁ!お前の嫁は!」
男「・・嫁って・・そんな・・」
館長「何照れてんだ!気持ちわりい!」
バシン!
男「いたっ!て、照れてねーよ!」
館長「はははっ!」
館長は、店の隅においてあるジュークボックスに手を掛けると、小さなこのスペースに
音楽が流れ出した。
エルビスの代表曲「HeartbreakHotel」が静かに聞こえてくる。
館長「・・で、そっちの平成のブラックモアはどうだった?」
内藤「お・・そん・・僕はリッチーなんかじゃ・・」
館長「お前の歳であんだけ弾けたら十分だよ!
ウッドストックが向こうからチケット渡してくるぜ!?
それより、おめぇの嫁さんはどうだったよ?」
内藤「!!い、いや・・しぃさんは・・」
館長「んだよおまえらはぁ!?はずかしがったってなにも得なんてないぞ!?」
内藤「あ・・・うぅ・・」
館長「ったく!二人とも美人の嫁連れてんだからもっと胸張れよ!ほら!」
バシン!
内藤「おぅ!?」
男「・・その誰の背中でも叩くの癖なの?」
館長「おう!だめか!?」
男「よくはないだろ・・・」
館長「いいじゃねーか!俺はお前らみたいな若いのと話すのが好きなんだよ!
おう!どうだリッチー!一本吸うか?」
内藤「お・・いいですお・・体に悪いお・・・」
館長「・・俺の嫁みたいなこと言いやがって・・・おまえらには
ロックンロール&セックス&ドラッグも通じねえだろぅなぁ・・・」
内藤「・・・愛国心は地球に持ては僕の座右の銘だお!」
館長「!!・・へへ・・わかってんじゃねーか!」
男「・・・・」(ついていけない・・・)
館長は昔、ビルボード・チャートに彗星のごとく現れた、和製ブライアン・セッツァーと呼ばれた、伝説のギタリストだったらしい。
日本ではなぜかまったく知られていないらしいが、海外やコアな音楽ファンからは熱烈な支持を得ている・・・って嫁さんが言ってた。内藤がロックにも詳しいのは知っていたけど・・まさか俺がここまで一人にされるとは・・・
館長「俺はよぉ・・オジーと酒飲んだこともあるんだぜ?」
内藤「!!す・・すごいお!もちろんつまみは蝙蝠だお!?」
館長「いや、いがいとピザ食ってた。あいつけっこう飲めねぇんだよな・・」
内藤「・・・・あの・・・もしかして館長って・・「TEMMYE」の・・」
館長「おう!タカヤってのは俺のコトだよ!」
内藤「!!!!ほ・・本当にタカヤさんですお!?ぼ、僕CD持ってますお!!」
館長「・・・お前・・・ホントによくしってんな・・・
俺らこっちじゃCDなんかだしてねぇのに・・」
内藤「ネットオークションで買いました!定価の八倍になってましたお・・」
館長「マジか?・・・すまん・・・こんどメンバーのサインでも貰っといてやるよ!」
内藤「!!本当ですお!?」
ああ・・・まったく・・わからない・・・
内藤がこんなにマニアックなのは漫画だけだと思っていたのに・・俺の知らない趣味がまだあったなんて・・いったいあの家には、どれだけのおもちゃが眠ってるんだ?
男「・・・なぁ?」
館長「ん?」
男「そういえば・・サトリ達はどこ行ったんだ?
嫁さんに連れられてどっか行ったまま帰ってこないけど・・・」
館長「おう!うちじゃあな・・・
ココに来た女にはやってもらうことがあるんだよ・・フフフ・・」
男「!?あ、あんたなんかへんなこと・・」
館長「大丈夫だって!俺はロリコンじゃねーからよ!いいから楽しみにしとけって!」
内藤「?」(なんだお・・・)
サトリ達が居なくなって・・20分ぐらい経ったみたいだ・・いったい館長が何をたくらんでいるのかが・・・まったくわからない・・・ああ・・・また俺を置いてなにか話だしたよこの二人・・・・タスケテー・・・・はぁ・・・
サトリ「・・・・」
しぃ「・・・」
嫁「・・?どぉしたの?」
サトリとしぃは、嫁さんに連れられて・・・ある部屋に連れて行かれました。
そこには・・・
サトリ「・・メイド服?」
しぃ「・・うん・・そうよね?・・」
嫁「ほぉらー!はやくきがえてぇー」
しぃ「!!??な・・」
嫁「うちにぃー、きてくれたおんなのこはぁー・・みんなこれにきがえてもらってるのぉー!」
サトリ「へぇ・・・かわいいなぁ・・」
嫁「でしょぉ?みんなきにいってくれるんだぁー!」
しぃ「い、いやいや・・なん、何でこれに着替えないといけないの?」
嫁「わたしのぉ・・・しゅみぃ?」
サトリ「いいじゃんしぃ!ちょっと着てみようよ!」
ぬぎぬぎ・・
サトリ「・・ってサトリ!何でもう脱いで・・」
嫁「ほぅらぁー!あなたもぉ!」
しぃ「きゃっ!!」
二人は・・いや、しぃは成す術もなく・・ゴスロリ調のメイド服に着替えさせられました。
サトリ「うわぁ!しぃかわいい!」
嫁「ほんとぉ!にあってるねぇ!?」
しぃ「うぅ・・/////なんでこんな・・////」
サトリ「ほら!私のスカート見て!このひらひらがすっごい可愛いの!」
くるくる・・
しぃ「・・うん・・・可愛いのはいいんだけど・・うぅ・・/////」
嫁「それじゃぁー・・みんなのとこにいってみよぉかぁー!」
しぃ「!!!!!!えぇ!?」
サトリ「!!このまま!?」
嫁「うにゅ?いやなのぉ?」
しぃ「い、いやですよ!!」
嫁「?なんでぇ?」
サトリ「だ、だって恥ずかしい・///」
嫁「だいじょうぶだよぉ!かぁいいからぁ!」
嫁は無理やり二人を連れて行こうとしています・・・・
しぃ「!!だ、だめ!」
嫁「だいじょぉぶだって!ふたりともかぁいいからぁーかれしくんもよろこんでくれるよぉ!」
サトリ「だ、だって・・私kotokoさんみたいにスタイルよくないし・・」
嫁「うにゅ?わたしぃ?」
サトリ「?・・はい・・」
嫁「わたしはぁ・・もうことこじゃないよぉ?」
しぃ「え・・って・・まさか・・kotokoって・・えぇ!?」
しぃはやっと、目の前に居るメイドさんの正体に気付きました。
しぃ「ええ・・・あ・・あの・・女優さん!?」
嫁「だからぁーわたしはもぉことこじゃないのぉ!」
サトリ「??」
嫁「・・・わかったよぉ・・」
嫁はなにかを諦めた後、その場で一回転しました。
サトリ「?」
しぃ「え?」
嫁「・・・ふう・・」
kotoko「はい!私がkotokoだ!これで文句ないだろう!?」
サトリ「!!?」
しぃ「えぇ!?」
突然・・・嫁の口調は変わり・・・そこには気の強そうな女の人が立ってました。
kotoko「さあ!いくよ!着いて来なさい!」
サトリ「!?い、いや・・・その・・・」
kotoko「なに?せっかく久しぶりにkotokoに戻ったのに何かおかしい?」
サトリ「その・・・いろいろと・・」
しぃ「・・・・」(なに?・・・別人?)
kotoko「うーん・・・だから・・・私は今、嫁じゃなくて、女優kotokoになってるの。」
サトリ「?」
kotoko「うん。だめか。わけわからんか・・・」
嫁もといkotokoさんは、私達に話をしだした・・・
kotoko「いい?あくまでも今の私は女優であって、嫁じゃないの。
あなたが私だって思っていたのが女優の私で、
本当の私はさっきまでの嫁。ok?」
サトリ「・・・つまり・・いまのkotokoさんは・・・」
kotoko「うん。演技。いいわよべつに・・お金ならいらないわ?」
しぃ「・・・すごい・・・でも・・えぇ?」
kotoko「仕方ないわね・・私は、あなた達の知ってる通り・・
昔は確かに名の知れた女優だったわ。今の旦那に出会うまでは・・」
サトリ「館長さん?」
kotoko「そう。私が「紅の花」をクランクアップして、次の作品の
撮影のためにアメリカに行った時に、あの人に出会ったの。」
しぃ「・・・」(これは・・もしかして・・貴重な話なんじゃ・・)
kotoko「・・・本当に辛かったわ・・私ね?女優なんてやりたくなかったのよ。
でも家庭が家庭だったから・・・ね?」
たしか・・・kotokoさんの両親は、ともに大俳優と大女優で・・えっと・・名前は忘れたけど
とにかく二人とも演技派の役者さんだったはず・・
kotoko「私の両親なんか、すぐに離婚しちゃって・・その癖期待ばっかり
私に集まってきて私がそれに答えてしまった所為で自分を
押し殺してまで演技して・・・あーあ・・ホント辛かった・・」
サトリ「・・・」
kotoko「でね?たまたま皆の目を盗んで一人で出かけた時に・・
旦那にナンパされてさ・・私はまた日本人に見つかったと思ったら・・・
くすくす・・あの人なんていったと思う?」
サトリ「?え・・っと・・?」
kotoko「なんだお前?えらい美人だな。茶おごってやるから付いて来いって。
ばかじゃないの?って思ったわ。
自分から誘っといてなんて偉そうなんだろうって・・」
なんとなくわかる・・・今日始めてあったけれど・・あの人の性格は見た目そのままだと・・思う・・・
kotoko「それでね?それまでずっと私に近づいてくるのは、 皆お金や体目的みたいな
人ばっかりだったから・・断ろうかと思ったんだけど、なんだか断りきれなくって・・
結局一日あの人に付いて行ったの。ああ・・・今思い出しても・・うん・・本当に楽しかった。」
kotoko「気が付いたら・・もう夜になってて、ああ・・・もう帰らないと皆に怒られてしまうって言ったら・・
あの人私の手を握って・・お前なんだか今日ずっと寂しそうだったな?俺と居て楽しくなかったか?って」
しぃ「・・・なんだか・・ほんとに強引ですね・・」
kotoko「ほんとにね。私の手を・・離してくれなかった。ほんとに帰りたいんなら離してやる。でも帰りたくないんなら
このまま俺に付いて来いって・・・むちゃくちゃよね?でも・・口では離してって言ってるのに・・あの人の
手を離すことが出来なかった。そしたら・・あの人ね?」
kotoko「嘘ついて俺から離れるんなら許さねぇ!俺はお前に惚れたんだ!お前が本当に嫌だって言うまで絶対手は離さないぞ!もっと自分を表にだせよ!ほら・・心から笑えって!お前が名の知れた女優だとかそんなのどうでもいいから・・いままでを全部捨てて、俺にお前を見せてみろ!!」
kotoko「・・・ってね?」
すごい・・一瞬・・kotokoさんの姿が館長に見えた・・・・もう引退したとはいえ・・
大女優の名は伊達じゃない・・・そう思った。
同時に・・館長の言葉は・・私の心にも響いた。うん・・昨日までの私と同じ・・・私も内藤君に嘘をついて逃げ出した・・・今はもう、逃げないって誓ったけど・・kotokoさんも女の子だったんだ・・・
kotoko「私も旦那も、あなた達ぐらいの歳だったから・・まだ若かったから、
なにも考えなくて・・私はそのままだんなとエスケープ。凄かったわよ?
新聞もテレビも・・全部私が居なくなったことを騒いでいて・・・
正確には居なくなったのはkotokoで、本当の私はずっと旦那の
そばに居たんだけどね?さっきまでのおっとりした私が・・あれこそが私なの。」
サトリ「じゃあ・・・もう館長の前じゃ・・・kotokoさんは出さなくなったってこと?」
kotoko「うん。ずっと・・旦那も全然違う私を見て、初めはびっくりしてたけど・・・
やっぱりそっちのほうがいい顔じゃねーかって・・
それからずっと旦那のツアーに付き合って・・
旦那のライブがTVで放送されたとき、私も映ってたのに・・
誰一人それがkotokoだって気付かなかったわ。・・いえ・・
それがkotokoだったなんて・・誰もわからなかったはずよ?」
サトリ「あ・・・・そっか・・私も・・男君に言われるまで気付けなかった・・」
しぃ「・・・うん・・・・」
kotoko「くすくす・・・それだけ私は自分を殺していたのよ。
とっても苦しかったわ。でも私は・・旦那のおかげで・・
「私」として生きていけるようになった。旦那に人生を変えられた。
・・・あなた達は?どう?彼氏に出会ってなにも変わらなかった?」
サトリ「私は・・男君に出会って・・・うん・・・変われた!私も・・もう一人で悩まなくなった!」
しぃ「・・・私は・・・」
もちろん・・・・変われた・・内藤君のおかげで・・・こんなに人を愛せるように・・・この間までの、ツンツン
いた味気のないしぃは・・死んだ・・・代わりに・・
しぃ「・・私も・・やっと・・素直に・・なれた!
kotoko「・・ふふっ・・・ね?女っていうのは・・ううん・・・男の人もそう・・
好きな人が居れば、誰だって変われるのよ?誰だって本当の自分が見えてくるの。」
サトリ「うん・・・もうこの間までの私はここにはいない・・男君の・・おかげ・・だね・・」
サトリはとっても嬉しそうに天井を見つめている。
私も・・なんだか・・とっても・・
kotoko「よし!じゃぁ行くよ!」
しぃ「・・・!えぇ!?」
サトリ「うん!私は行くよ!男君にこの可愛くなった私の姿見てもらいたい!」
いつのまにか・・・二対一になってた・・・・サトリはもう・・・この姿のまま三人の居る所に行く気満々だ・・
サトリ「ほら!いくよしぃ!」
しぃ「きゃっ!だ・・だめだって!恥ずかしいものは恥ずかしいの!!」
kotoko「もう・・・大丈夫!いったいなにが恥ずかしいの?
可愛い自分を好きな人に見てもらうんだから・・
彼氏だって喜んでくれるわよ!」
しぃ「う・・・・うぅ///////」
サトリ「はい!決定ね!」
嫁「それじゃぁいこっこかぁー!」
ああ・・・いつのまにか・・・kotokoさんが居なくなってる・・・結局私は・・恥ずかしいけど・・
このまま内藤君のところに行くことにした。・・・内藤君に・・
館長「で?邦楽は聞かねぇのか?」
内藤「お・・あんまり聞いたことないお・・先にディープやレインボー・・
ヴァン・ヘイレンを聞いたから・・邦楽じゃ痺れないお・・・」
館長「なに中二みたいなこと言ってんだよ!
日本にだってラウドやギターウルフ、ブラックキャッツや・・
ほら・・最近まで活動してた・・ミッシェルやROSSOだっているし・・
まだまだ日本だってロックは死んでねぇから若いうちはいろいろ聞いとけ!」
内藤「お・・・ミッシェルは友達が好きだったお・・確かにあれはいい曲だったお・・」
館長「な!?聞けるもんはなんだって聞いといたほうが自分のためだぜ!?」
内藤「・・・確かに・・漫画も・・中を見ないとどんなのかなんてわからないお・・」
館長「?なんだかわからんがそうだろ!?はははっ!!」
男「・・・・・」
もうずっと・・・こんな感じで俺は一人なぜか隅においてあったインベーダーをやっている・・・
あの二人は完全に世界に入ってしまった・・・映画の話ならついていてるけど・・うぅ・・内藤があんなにマニアックだったとは・・・たしかにカラオケ行ったときもドカベン以外わかんない曲ばっかだったしな・・・あーあ・・・早くかえってこいよぉ・・サトリ・・・おりゃぁ・・・名古屋打ち・・
ボシュゥ!
男「あ・・やられた・・・はぁ・・・」
嫁「はぁーい!みんなおまたせぇー!」
館長「おっ!やっと来たか・・どれどれ?」
時間にして30分・・やっと三人が戻ってきた・・・って・・あれ?
男「あれ?嫁さん一人ですか?」
嫁「えっとねぇー・・・そぉだ!ふたりともうしろむいてぇ!」
内藤「?・・・こうですか?」
男「?何?なんなの?」
嫁「わたしがいいってゆーまでぇ、こっちむいちゃだめだからねぇ?」
男「??」
サトリ「・・ほら・・しぃ!早く!」
しぃ「・・・うぅ・・・わかってるって・・・うぅ/////」
赤い絨毯が敷き詰められた床を、聞きなれない足音が歩いてきた。・・あれ?
サトリの履いていた靴の音?なんかちがうような・・・
館長「おお・・・これは・・・」
嫁「はぁい!いいよ!こっちむいて!」
俺と内藤が、疑問を抱いたまま・・・後ろを振り向くと・・・そこには・・・
振り向くと・・・・メイドが三人になっていた・・・
内藤「!!・・・・エ・・エマ・・」
男「!!・・シャ・・シャーリー・・・」
サトリ「/////ふぇ?・・しゃーりー?」
しぃ「うぅ/////絵馬?」
やばい・・・なんだこれは・・・目・・・目の前に・・・・シャーリーが・・・いる・・・
サトリ「えへへ/////どぉ?かわいい?」
男「・・・・・」
サトリ「・・・・・あれ?」
男「・・サトリ・・・」
サトリ「?・・・男君?泣いて」
男「俺・・・・生まれてきてよかったよ・・・ありがとう・・・」
バターン!
サトリ「!!お・・・男君!?大丈夫!?」
ああ・・・本当・・・ココに来てよかった・・サトリ・・・お前・・めちゃくちゃ・・・いいよ・・
サトリ「!!//////もう・・・ありがとう/////」
また男は・・サトリの膝の上で気を失いました・・・・そして・・・
頭には白のキャルティエカチューシャ、ブラックキャルティエメイド服、首には薔薇を模ったフリル
のついたチョーカー、ちゃんとしぃのサイズにあったロングのエプロン、手には真っ白い絹の手袋、内藤からは
見えませんが足にはリボンのついたニーソックス、そしてその小さい顔には度の入っていない白縁のマル眼鏡。
内藤の頭では、目の前の膨大な情報を処理することが出来ませんでした。変わりにその口からでた、本能的な言葉は・・
内藤「・・しぃさん・・・・とっても・・・かわいいお・・・うん・・・」
しぃ「!!////////あ・・・・あぅ・・・・//////」
嫁「ほぉらぁ!ねぇ?いったとぉりでしょぉ?ねぇかれしくん?かわいいよねぇ?」
内藤「うん・・・すっごい・・・似合ってるお・・・」
彼氏と呼ばれたことに反応することもできず、ただ、しぃのその姿に見惚れるしか出来ませんでした。
しぃ「///////・・・ほんとに?似合ってる?」
内藤「ほ、本当だお!!何もかもが・・・完璧・・・あ・・・・」
内藤「・・・ぐふっ・・・」
バターン!
しぃ「!!??な、内藤君!?」
やっぱり・・・内藤も自我を保つことはできませんでした・・・数秒固まったかと思うと・・
勢いよく床に倒れこみました・・・
サトリ「・・あーあ・・ほら!しぃちゃんも!」
サトリが自分の膝に倒れこんでいる男を指差しています。
しぃ「!!え、ええ、ええっ!!?」
嫁「ほらぁ!ひざまくらしてあげなさぁい!かれしさんがたおれてるよぉ?」
しぃ「ええええ?わ・・わた・・・ええ・・/////」
結局・・・男と内藤は・・突然現れたメイド達の膝で・・・30分は目覚めることは出来ませんでした・・・
サトリ「くすくす・・・男君かわいい/////」
しぃ「うぅ/////もう・・・・なんでもいいや・・・うぅ/////」
館長「・・・・なんだ・・・この光景・・・ありえねぇ・・・・」
嫁「あらぁ?あなたもまくらほしぃの?」
館長「・・・そ、それよりカメラカメラ!こんな馬鹿面めったにみれねえぞ!しばらくはこの顔写真
だけで男脅せるぜ・・へへっ・・・ほんと・・・いいなぁ・・・ちくしょう・・・」
嫁「あぁー!もしかしてうわきぃ!?」
ぽこん!ぽこん!
館長「ち、ちがうって!」
結局・・・このときの内藤と男の寝顔は・・・ココの映画館のアルバムの一ページに差し込まれました・・
なんていうか・・・・ほら・・・漫画やアニメ・・・そんな二次元的発想が好きな
人なら一度は・・・思ったことがあるはずお・・・こんな女の子が居たら・・・それが
重度になったら・・・・自分も・・そちら側に行きたいって・・・そう思う人もいる筈お・・
僕も・・・恥ずかしながら・・そう思ったことがあるお・・・しょうがないお・・・
でもそれは・・想像であって・・・絶対不可能なこと・・二次元と三次元はまったく別物なんだから・・
僕の好みである・・少し年上で・・・・眼鏡を掛けていて・・・まさに給仕長って感じの女の人が・・想像にしか存在しなかった絶対的象徴が・・・
突 然 目 の 前 に 現 れ た
そして・・・それが・・・しぃさんだって気付くのに時間はかからなかった・・でも・・・
僕の意識はそれを完璧な作られた映像にしか思わなかった・・だから・・こうやって・・意識を吹き飛ばすことによって・・現実に帰ろうとした・・こんなに綺麗な人がこっちの世界にいるはずがない。
うん。これは夢だ。たぶん僕は館長と話している時に爆発かなにかに巻き込まれたんだ。そのショックであるはずのないものが見えたんだ。うん。違いない。だから・・このあと・・目が覚めたら・・そこはなにもない天国だお・・そう・・・死んだんだ・・・僕は・・・・あぁ・・意識が外に出て行く・・・
しぃ「・・・あ・・内藤君?起きた?」
内藤「・・・・」
しぃ「・・・・/////大丈夫?」
内藤「・・・あれ?・・ここは?」
しぃ「?映画館?」
内藤「・・・じゃあ・・・あなたは?」
しぃ「・・・しぃ。」
内藤「・・・あぁ・・・なんだ・・・現実だったんだ・・・って・・」
しぃ「?」
内藤「・・・・うああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
しぃ「!!?」
内藤は勢いよく、しぃの膝から飛び起き・・顔を覗いていた男に、綺麗にヘッドバットを食らわした。
男「ぎゃぼーっ!?」
内藤「!!!!????お・・男!?ここは・・・・ここは本当に・・・現実なのかお!?」
男「いってぇ・・・・おう・・・俺もお前と同じように疑ったが・・・どうやらそうらしい・・・」
しぃ「///////」
内藤「・・・・じゃあ・・・しぃさんは・・・・本物!!??」
しぃ「うぅ////そうだよぅ・・・」
内藤「あぁ・・・本当なんだ・・・現実なんだ・・・」
館長「・・・・打ち所が・・・まずかったかな?」
男「いや・・・単に・・混乱してるんだよ・・・俺だって信じきれてねぇもん・・
しぃさんが・・・・あんな・・・ねぇ?・・・」
サトリ「あー!男君!わ・た・しは!?」
男「・・・あのな・・・サトリは・・・可愛いけど・・びっくりしたけど・・まだ納得いくんだ・・でもな・・
しぃさんが・・・あんな格好するなんて・・・だれが予想できた?」
サトリ「・・・・うん・・・そうだよね・・・」
しぃ「/////あ・・あああ・・・・うぅ・・・」(私は・・・私は・・なんで・・・こんな・・)
内藤「しぃさん・・・・もう一度・・・膝枕・・」
しぃ「!!!だ・・・だめぇ!」
ダダダダダ・・・・
サトリ「あ・・・逃げた。」
男「あーあ・・・内藤が欲張るから・・」
内藤「え・・・あ・・・そんな・・・・」
館長「・・・いちいち面白いな・・・お前ら・・・・」
嫁「はぁい!みんなぁ!!あつあつのパニーニができたよぉ!」
そのあと・・着替えてきたしぃさんを含めて、俺達四人は嫁さんが作ってくれたパニーニを食べて・・映画館を後にした・・・サトリはさっきの服を気に入ってるみたいだけど、しぃさんは
ずっと恥ずかしがっていた。
to be continued・・・・