「今すぐ強くなるか」「後でもっと強くなるか」のゲーム

「今すぐ強くなるか」「後でもっと強くなるか」のゲーム

「今すぐ強くなるか」「後でもっと強くなるか」というのは初心者に速攻戦術と内政拡張戦術の違いを説明するときに使うような単純な考え方だが、StarcraftIIはこの意思決定の連続である。
たいていのプレイヤーが手癖で行なっているワーカーの連続生産ですら内政の一種であり、「少し後でちょっと強くなる」という選択だ。
ワーカーの連続生産にかかる資源は馬鹿にならないので、適切なタイミングでワーカー生産を停止させれば強力なオールインが可能になる。
もちろんワーカー生産を止めてのラッシュは一発勝負になるので基本はワーカーを連続生産することだが、こういう分岐点を知っているかどうかが手札の差になり、プレイヤーの戦術の幅になる。
「今すぐ強くなるか」「後でもっと強くなるか」というのは初心者にラッシュとブームの違いを説明するときに使うような単純な考え方ではあるが、具体性を持たせて考えるとこのゲームを理解するうえで良い働きをしてくれる。
自分の弱いタイミングになんとなく総力戦をしてしまっていたような人が自分の強いタイミング以外は相手をのらりくらりと躱すようなプレイを身につけることができれば格の違うレベルの強さに成長するだろう。
ゲーム内の行動を逐一「いつ強くなるための行動か」で分類していくと、それまで見えなかったものが見えてくる。
オールインひとつ取っても、ワーカーを止めるタイミングが早すぎても遅すぎても強くなるタイミングとプッシュのタイミングが噛み合わず使えるユニット量が減ってしまう。
1baseオールインオーダーなのにいつまでもワーカーを作り続けていたら強さを引き出すタイミングがまったく噛み合わずにベース数のせいで内政負け必至なだけのどっちつかずオーダーになってしまう。
アップグレードを管理しきれずにいつもいつも研究が終わる前に戦っていては勝てる相手にも勝てなくなる。

こういった考え方を体得することが難しいのは、このゲームの戦術はもっとも強いタイミングだけ前に出るわけではないことが大きく影響しているだろう。
PvTでのStalkerやTvZでのHellionのように相手が見えた瞬間逃げれば逃げられるユニットは、自分が強いタイミング以外でも積極的に前に出てマップコントロールを取る動きが求められる。
そのうえで相手が2raxMMやRoachプッシュだと分かったら今は相手が一番強いタイミングであり相対的に自分が弱いタイミングであるということを自覚して下がるわけだ。
こういう手順を踏むことで前に出る行為と強いタイミングが一対一で対応しなくなるため、相手にとって何をしてくるか読みづらいプレイヤーになる。
自分が強くないタイミングにおいても、ハラスを入れては倒される前に逃げることを繰り返せば、前に出づらくさせたうえにじわじわと削ることができる。
しかしこういったプレイは忙しいので考える余裕を失いがちだ。
必死でドロップを入れているうちにとりあえず攻めなきゃ攻めなきゃということで頭がいっぱいになって自分が本当は弱いタイミングなのに本格的に軍隊を当ててしまう。
あるいは相手のハラス対処に忙しくしているうちに、自分はまだ弱いタイミングだからギリギリまで溜めてから当たるべきなのに惰性で当たって押し負けてしまう。
そうではなく、今当たるべきか待つべきかという大局観を保持し続けているべきなのだ。

「今すぐ強くなる操作」と「後でもっと強くなる操作」

ところでこれは操作についてすら同じことが言える。
今選択しているユニットにスキルを使わせたり引き撃ちをさせたりするのが「今すぐ強くなる」操作だとすると、ユニットのグルーピングを組み替えるのは「後で強くなる」操作だ。
直ちにユニットの挙動に影響するような実効は何もないメタ操作だが、後々のマイクロをより少ない手順で行えるようになる。
だから今すぐユニット操作が求められるような状況でグルーピングを組み直していてマイクロが遅れたらそれは悪手だし、戦闘開始まで時間的猶予があるのにグルーピング整理を怠ったまま戦って操作の質が落ちればそれも悪手になる。
ほかにはたとえば、陣形を整えるような操作はその後数秒を有利に戦うための「少し後でしばらく強くなる」操作だと言えるし、相手が射程内に入っているときに攻撃間隔を無駄にしないように攻撃をAIに任せてしまうのは「今だけ強くなる」操作だといえる。
最終更新:2012年07月27日 00:03
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